フィクションの夜


 夜空の色は何色? とカラフルなあの子に聞かれて、僕は少し黙った。夜空の色は夜の空の色じゃないの? と答えて、とんちみたいに返さないで、と笑われた。


 真面目な顔をした僕は黒色だと答えた。だって、夜は闇で、暗いし、きっと黒なのだろうと考えたから。

 カラフルなあの子は、つまんないね、と言った。言葉を発する薄紅色の唇が微かに動くたび、僕はどうしようもなく、あの子のことが好きだと思った。


 あの子は、空の色は青だと言った。すごく綺麗だから。そう答えるその子の髪は、CMに出てくるようなさらさらとした黒く、長く艶のある髪だった。

 僕は、青だと昼間の空と同じだと言った。すると、人差し指を鼻の頭に置いて、じゃあ、藍色かな、と返してきた。鼻筋の通った顔立ち。鼻を抑える爪に色はとても健康的なピンクだった。


 別の日。

 君が好きな色は何? と聞かれて、すぐさま出てきた色は赤色だった。子供みたいね、といった彼女の目は明るい茶色だった。猫のような目で僕の顔色をじっと見つめた。



 次の日。彼女の髪の色はとても激しい赤色になっていた。

 僕は聞いた。カラフルなあの子に失礼なことば。うすうす気づいてても聞かなかったこと。

 君は色がよく見えないんじゃないの?

 彼女はきゅっと口を結び僕の首に手を回し、耳元でささやいた。赤はわかるよ、あなたの好きな色だから。彼女の頬はとても綺麗な色に染まっていた。

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