第69話 映画「アベンジャーズ エンドゲーム」(2019)ネタバレあり

SPOILER ALERT:この記事には「エンドゲーム」の核心部に触れる部分があります。






















 スーパーヒーローたちが己の運命と対峙する物語だったと思う。


 それはどちらが犠牲になるのかという譲り合いだったり、身近な親の死であったりする。

 ソーは母を救いたいという感情のせめぎ合いに溺れそうになる。

 ホークアイとブラックウィドウはお互いの背後を守りあった相手の事を思い相手を生かして返そうとした。

 スタークはある事に拘った。それ自体が彼の大きな変化だった。そして未来に歩み始めている時をそのままに失われた人達を取り返そうと乾坤一擲、一発勝負の作戦に身を投じた。愛娘を守る事は彼が最優先した願いであり、その事が最後の局面、ドクター・ストレンジの示唆してきたごくわずかな勝利の可能性の選択を為させ、そして彼自身の運命を決する事になった。


 正直、途中の展開は意外感が強く大変面白いとまでは感じていなかった。それが変わっていくのは作戦の綻びを突かれてサモス側が総力を投じた反撃を開始した所から。

 地球側もドクター・ストレンジたちの魔法で各地のスーパーヒーローと仲間たちを戦線に導き壮絶な潰し合いとなっていく。その中で今後のMCU世界を支えて行くであろうキャプテン・マーベル達女性スーパーヒーローも殴り込みを仕掛けて勝利の天秤を地球側に傾けた。


 戦いを分かりやすく見せているあたりはルッソ兄弟監督の腕。乱戦の中に物語があってそれをしっかりみせてくる。


 私は自己中心的なあの人物が嫌いだった。そんな彼のために涙する日が来るとは思いもしなかった。あの自己中心的な性格の仮面の下には妻や愛娘、ピーターを思う心が隠れていた。


 再び大きな戦いに生き残った最後のリーダーがいた。彼がこの時代を生きて来たのは前向きな事をいろいろ言ってるにせよ悔いがある。彼女と共に生きられなかった事はこれまでも折に触れて出て来ていた描写だった。そんな彼だからあの選択を祝福できる。

(彼は旅立つ時ソーのハンマーを持って行った。そしてシールドが戻って来た。ハンマーからシールドを新しく作ったのだろうか。気になる描写ではある)


 エンドロールが終わる直前響く金床を叩く音6回響く。最後だけ音が甲高く響くが、これは「アイアンマン」でトニーが最初のアイアンマンMk.Iを作った際にアーマーの金属を打っていた。きっとこの音に違いない。物語はこの物語の最初、「アイアンマン」に回帰して終わったのだと思った。

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