ツチノコ・コンテンツ

なつみかん

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「あいたたたた……」

オレは、さっき打ってしまったらしい腕をかばいながらそう言う。

床は石でできていて、とてもじゃないが打ちつけてしまったら痛いだろう。というか現在進行系で痛い。

さっきからどこだろうと歩き回ってみたが、歩けば歩くほど曲がりくねるだけの道に突き当たってしまい、もはやどこから入ってきたのかもわからない。

_____いや、むしろなぜ自分はここにいるのだろうか。

それ以前の記憶は思い出せない。起きたところはすでにこの曲がりくねるばかりの所で、ひたすらにそっから歩いた……ということはわかるのだが。

仕方がないのでここらで一休みにする。さっきから歩き回ってばっかりで結局ここがどこなのか手がかりすらつかめていない。

すると、奥の方からカタン、カタン、と音が聞こえてくる。

なんの音なのか、オレにはさっぱり想像がつかなかった。推測では、木が何かにぶつかった音だろうか。それも、岩壁で反響しているために定かではないが。

「……なんか、このあたりにいるんだよな。声も聞こえたような気がしたからな」

誰か来る。けれどもちろん逃げることも隠れることもできない。

後ろは木のフェンスでしっかりと道が塞がれているためだ。これはどうするべきか……?

少しして、さらに音は近づいてくる。オレは、おそるおそる突き当たりまで戻ってみた。

「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!!!!!」

「うわあああああああああ!!!!!!!!!!」

二人の絶叫が石壁で反響し、暫くの間鳴り響く。

オレはその間に少し後ろに下がり相手の様子をうかがう。

相手はというと、曲がり角のあたりまで下がって壁から半身だけだしてこちらを覗いている。

「あなたは……?」

「見ればわかるだろ!!ツチノコだよ!!!!!」

ツチノコか。あのUMAと呼ばれる蛇みたいな形をした。

「オマエこそ、なんなんだ?」

「え、オレ……?」

「オレっていうのか?」

「いや、オレはオレじゃないっていうか……、いや、オレはオレだし、オレがオレならオレなのか?ん?やばい全然分からんくなってきた」

「まあいい、オレなんてフレンズ聞いたことないが、図書館で聞けばなんとかなるだろ」

そう言ってツチノコはそのまま角を曲がっていこうとしたので、すかさず

「まってくれ!」

と言ってしまった。

「ああ?なんか用でもあるのか?」

ツチノコは少し荒い口調でオレに言う。

「いや、どうやったらここから脱出できるんすか?」

「自分で探せばいいだろ」

「さっきから歩き回ってばっかりでそんな元気ないんすよ……」

「仕方ないな、オレについてこい」

ツチノコはそう言うと早足で歩き始めたのでオレもそれに遅れないように歩くしかなかった。


「ここ、どういったところなんですか?」

「昔作られた遺跡だ。おそらく、ここでフレンズなんかが走り回る予定だったんだろう」

フレンズ……。さっきからなんとなしに聞いていたが、そういえばどういうことなのだろうか。

とはいえ、名詞に違いはないだろう。オレっていうのもそんな感じだったし。

「それにしても、変なフレンズもいるもんだな。まだまだ知らないこともたくさんあるものだな」

「ツチノコさんは、どんな事知ってるんすか?」

「まあ、ジャパリコインだったりとか、溶岩だったりサンドスターだったりと色々な。今は、この遺跡がどういうものなのかを研究しているところだ」

「……ジャパリコイン?」

「ジャパリコインというのはだな、昔使われていたジャパリまんみたいなものでな、当時のヒトはつうかっていう呼び方をしていたらしいんだ」

「へぇ」

「これがまたキラキラでな、すごく集めたくなるんだよな」

そう言うとツチノコはポケットの中からいくつかのジャパリコインを見せてくれた。

「すごいっすね」

「だろ?けど、周りのフレンズたちは全然興味も示さないんだよなぁ……」

さっきの勢いとは裏腹に、今度は少し悲しそうに言ったのでオレはツチノコにこう言った。

「そんなことないっすよ!オレだって、ジャパリコイン見たらキラキラできれいだなって思いますし、そうやって言ってるツチノコさんも輝いて見えたっすよ!」

「な……」

やっちまった。もしかしたらツチノコの言いたかったことはそうじゃなかったかもしれない。ツチノコはうつむいてしまっている。オレはどうすればいいんだ?

「………………だな」

「はい?」

「お、オマエ、イイやつだなって言いたかっただけだよ!」

ツチノコの顔は真っ赤になってしまっていて、照れているということは一瞬でわかった。

ふふふっとオレが笑うと、ツチノコは

「なにか面白いかー!キッキクシャー!」

と言ったが、その顔は笑顔だった。


少しのことでもこんなに楽しくなれる。

ツチノココンテンツは、そういうものなんです。

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ツチノコ・コンテンツ なつみかん @natumikan72

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