私とまち

   月光 2 

 私が住むこのまちは超セレブとか貧しいとかはないような、中流階級?っていうのかな。そんな感じの人たちが住んでいる。だから特に事件があるとか、そういうこともない。まあ、たまに空き巣があったなんて話も聞いたりはしたけどね。でも、その地元の小学校とか中学とか、みんなめっちゃ困ってるみたいな人はいないように見えた。見えてないだけかもね。でも、みんな結構仲良くて、平和ってこういうことかなあなんて思っちゃうぐらいには恵まれた環境、だったと思う。

 家のすぐ近くに高校があって、私はそこに進学した。まあ、県のトップの一つ下ぐらいの頭の良さらしいよ。高校には人のヴァリエーションがあった。私と同じ、小中おなじでこの高校に来ている人、この高校をめざして県の北とか南とか東西からきている人、引っ越して途中から来た人。地元の外の人って、こんな感じなのか。でも、まあ――たいしてショックもないな。って感じだった。気が合わなかったら、同じ小中の友達と絡めば全然苦労はなかったし。もちろん、新しく仲良くなった人もいるよ。ちょっと、「んー」ってなったのは、メイクする子が多かったってこと。まあ、興味がないわけじゃなかったけど。でも、そんな本気でやらなくてもいいかなって思った。だから、母さんに「あんた、化粧薄くない?」なんて言われたりさ。

 先生が来たのは二年生になってから。社会の……何かをやってる。でも、この高校に来たのが四月ってだけで、この辺の学校にちょっと前からきてたみたい。そっちで何やってたのって聞いたけど教えてくれなかった。先生は、学校の先生たちじゃかなり若い方だから、あちこちに使い走りされてる感じ。大変そうだな、時間速いなって思った。生きてる時間が速そうって意味で。ちょっとうらやましいのかな。わかんないけど。

 彼氏とかは、よくわかんなかった。恋してる人はエネルギーがすごいよね。瞳がキラキラしてる。少女漫画みたいなアレ。いわゆる恋バナとかよく聞くけど、話してる子、楽しそうだなーとか、あーあ、こんなに泣いちゃって、そんぐらいに思ってた。恋するってどんな感じかな。ある子が言ってた。「●●君のこと考えるともう夜も寝られない!でもライン送るとかも嫌われちゃうかも…。絶対夜中じゅうしちゃうもん」って。こわ。それならしなくてもいいかな。

 「これからどうなるか」?。私が聞きたい、それ。私は何になるんだろうね。私って何になりそう?何になっていくんだろう。自分から色を付けていくのか、色を付けられていくのか。自分の色を「それは青だ!」とか言ってくる人が現れたり、「何になってもいい」とか言って絵具もカンバスも書き方も教えてくれなかったり。

……………………色、なのかな。

 毎日が、100%満足ってわけじゃないけど、これは悪くない日々なんだろうな。何も起きない。何も悪いことはない。格別うれしい事とかないし、格別悲しい事とかない。そんな感じ。

 コインランドリーは、ウチから徒歩3分ぐらいのとこ。雨ばっかだったし、ほかに人、いないといいな。あそこの空気、結構好きなんだ。だから、ひとりで味わいたい気分。

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