昨日のこと(4)

 とりあえず、申しわけなさやどうしようもないことのどうしようもなさも手伝って、私が向こうの頭を撫でてみたのですが。

 言うことならば決まっていました。ただ、どう切り出そうか、頭を撫でながらぼんやり虚空を見て、考えていたとき――。

 夫が、言いました。



「ご迷惑を、おかけしまして」



 びっくりしました。

 それは、私がいままさに言おうとしていたことでした。



『ご迷惑を、おかけしますね』



 って。言おうとしてたんです。だから――さっき泣いたばかりの顔でふふっと思わず、笑ってしまいました。



「……おんなじこと言おうとしてた。ちょうど。びっくりした」



 って。

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