第12話 終戦宣言及び演説
*
放送の合図のチャイムが響く。
「みんな、聞いてくれ。生徒会副会長、銀林修斗だ。今回の暴動の首謀者である陣内凛ノ助、日向真希時は執行部の手によって捕らえられた。この『茶番』は皆もう楽しめただろうし、解散だ!!」
――学校各所から響く、歓声と拍手。
「みんなご苦労さん。今回働いてくれた皆には、お金持ちの会長が焼き肉を奢ってくれるそうだ。人の金で好きなだけ食える焼き肉だぞ!!」
――フォォォォオオという生徒会執行部と風紀委員の歓喜の声。
「さて、諸君らはどうやってこのバレンタインデーをお過ごしだろうか? 共栄党に折角のチョコを荒らされて大迷惑な男子・女子の皆が大多数かな」
――共栄党、マジふぁっく、そんな声がどことなく漏れる。
「それにしても共栄党に参加した非モテが多数いたことを俺、個人としては非常に驚いている。生徒会としてもこれ以上のモテ・非モテの分断は好ましいことではない。
この学校からトレンチコート・マフィアを生み出すわけにはいかない」
銀林は続ける。
「正直に言おう。俺としてはリア充とは、モテることは才能の一つだと考える。
人間的魅力というものには格差がある。
当面は共栄党の幹部に共栄党員に対して賠償をさせるつもりだ。彼らには事件を起こしたケジメはきっちりつっけてもらう。それで共栄党員は一時的には溜飲を下げてもらいたい。
また、新たな校則を作ろうと思う。『生徒会の許可無くしての学校内での私設サークル・集団の作成することの禁止』もう一つ『学校内外を問わず「共栄党」を賛意・称揚した者は厳罰に処す。および「共栄党」を賛意・称揚した者を見かけた場合は風紀委員に必ず報告すること。報告しなかった者も処罰される』。
次の全校集会で多数決を取ろうと思う。
君たちへの賠償だが、これはお金持ちの会長が後日に学校でチョコレート・パーティーを開くことを企画している。今、絶賛、校長先生と掛け合っているところだ」
再度、歓声。
「以上、終戦!」
放送のマイクを切ってから、銀林は舌打ちを一つした。
銀林としては忸怩たる思いがあった。確かに共栄党との抗争には勝利した。が、演説で言ったように、「非モテの叛乱」に対して何ら根本的な解決がない。
共栄党を解散させたところで非モテの不満は晴れるばかりか、むしろ濃くなるだろう。
監視の目を強くしたところで、RPGのラスボスのように第二、第三の共栄党が産まれるだけだろう。
非モテの終わらない怨嗟を閉じ込めるのはどこまで可能だろうか。
銀林は、バレンタインデー紛争が長きに渡る叛乱の序章になる可能性を容易に想像し、ため息をついたのだった。
*
こうして、日向真希時が企画し、陣内凛ノ助の演説によって始まったチョコレート共栄党は、生徒会の銀林修斗の終戦演説によって幕を閉じた。
*
「銀林君、ちょっといいかね?」
銀林が放送室を出ようと、一人の老年の教師に呼び止められた。
「はい、なんすか?」
「君も職員室来たまえ」
「え? ――ああ、共栄党員に対する懲罰の打ち合わせですか?」
「いいや」
教師は首を横にふる。じゃあ、何だろうと銀林は首をかしげる。
「君に対する懲罰の打ち合わせだ」
「んん? ちょっと今、聞きそびれてしまいまして……今、なんと?」
「チョコレートを燃やすという危険な行為を指示したんだってね。詳しくは職員室でたっぷり聞くよ」
「え」
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