バレンタインデー紛争
志田 新平
第1話 2月14日。悲しみの日。
バレンタインデーとは何か。
広辞苑によれば、今まで曖昧模糊だったモテと非モテの明暗をはっきりと分け、非モテに残酷な現実を知らしめるための悪魔の儀式の日である。
また、ブリタニア百科事典によれば、「愛を贈りあう行事」という美名に隠され、贈られなかった者を選別する、資本主義の狗どもが跋扈する日でもある。
登校しながら俺は周りの男子生徒が殺気立っているのを肌で感じていた。
皆、無言。圧倒的無言! だが言いようの無い殺気に満ちあふれている。
それは女子も同じだ。「これ義理チョコだからっていう名目で本命のチョコあげないとね~」って盛り上がっているのがチラリと聞こえた。
その中に一人、殺気立ってない男がいる。俺の隣を歩く
顔はどちらかと言うと美男子な部類に入る。
長く伸びた髪をポニーテールでまとめ、遠くから見れば凛とした古武士のような面持ちだ。剣道もやっているから体格も良い。
が、しかし女子から好意の視線と黄色い声を浴びせられたことは一切無い。普段女子から浴びせられのは侮蔑の視線と黒い声であった。
「凜ノ助はさあ、何でバレンタインなのにそう平然と出来るんだよ?」
俺は凜ノ助に尋ねる。
「逆に言うが真希時、何故チョコごときでそう一喜一憂出来るのだ?」
凛ノ助、多少鬱陶しそうに答えた。こいつ、本当に興味が無いらしい。
「いや、そりゃあ貰えたら嬉しいし、貰えなかったら惨めだし……」
断っておくが、俺だってチョコくらい貰ったことあるわ。どう義理だろって? ちげーよ、本命のだわ。……母ちゃんでもねーよ。母ちゃんのチョコなんてチョコに入んねーんだよ。
幼稚園の年長組の時に、女の子からだよ。
………………笑えよ。
どうしたんだよ、早く笑えよ…………………。中途半端な同情とか一番いらねーんだよ。
閑話休題。
俺の答えを凜ノ助は一笑に付す。
「チョコごときで人の価値が決まるか。貰えるか貰えないかで一喜一憂するのは馬鹿のすることだぞ」
「うぇー?」
そうとまで言い切れる人間もめずらしい。こいつもなかなか偏った人間だった。
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