スペース☆ハローワークへようこそ
七瀬夏扉@ななせなつひ
EP1 特別案件及び特殊宇宙人課
第1話 スペース☆ハローワーク
「アルファ・ケンタウリ星系からですか?」
「げろ」
「ずいぶん遠くからやってこられたんですね?」
「げろ」
「今はお仕事に就かれてないようですが、以前は何をやられていたんですか?」
「あの、その、開発系のエンジニアです」
「なるほど。転職歴がずいぶんありますが、何か理由でも?」
「あの、その、私、なかなか職場に馴染めない性質でして。それにコミュニケーションを取るのも苦手で。それで最初に勤めていた会社では、イジメのようなことを受けてしまいまして。出社したら、私の制服だけが無かったり、私のデスクの上に宇宙ミドリムシのクソが塗りたくられていたり、飲み会に私だけ誘われなかったりと、いろいろありまして――」
「それは、さぞお辛かったでしょうね?」
「ええ。でも、学生時代から似たようなことは受けてきたので慣れっこというか、これでも私、精神的にはなかなかタフな方だと思っているので――」
窓口にやって来たカエル頭の宇宙人は、覇気のない湿っぽい声でそうこぼした。
僕は、遥々アルファ・ケンタウリから地球圏までやって来た宇宙人のナイーブ過ぎる表情と、
見た目には二足歩行のカエルにしか見えない宇宙人――ぬめり気のある緑色の肌に、大きく突き出した野球ボールのように円らな瞳のフロッシュ星人は、僕と目が合うなり水かきのついた手で恥ずかしそうに頭を撫でた。とてもチャーミングだった。
「それで、ゲロロさんはどのような職業をご希望ですか?」
「あの、その、できれば人類圏の軍需企業で開発エンジニアの職につかせていただければと思いまして」
「軍需産業のエンジニアですか?」
彼の希望した職種を聞いた僕は、表情を崩さず目の前の宇宙人を見つめ直した。
万能翻訳機が訳した彼の正式名称は――ゲロロ・ゲロリーロ・ゲオルギウス。
そんな冗談のような名前の彼も、所在無さ気に僕を眺める。しばらくお互いに無言でいると、フロッシュ星人のゲロロ・ゲロリーロ・ゲオルギウス氏は、頬を風船ガムのように膨らませて「ゲロゲロ」と発した。万能翻訳機が反応しなかったところを見ると、どうやらそれはただの鳴き声であり、意味のあり言葉ではなかったようだ。
「分りました。それではゲロロさんの求職活動のお役に立てるよう尽力させていただきたいと思います」
そう言って両手を広げた僕は、ようやく本日の業務を開始した。
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