第25話 伝えることの難しさ
「信頼」「伝える」はセットだと思っている。
私は、仕事柄、沢山のことを子供たちに伝えなければいけない。
その場合、子供たちの反抗心、「おい? お前も上から目線の大人なのか?」という類のエネルギーを、うまくかわさなければいけない。
子供たちは、「尊重」されるかどうか、常にうかがっていて、それに敏感だ。「なんかこの大人もムカつく」と思われたら最後なのである。
だから私は常に忘れてはならない。
どんなに鼻くそをほじろうが、テストで酷い点数をとってこようが、どんなに宿題を忘れようが、どんなにお下品な言葉で私を罵倒しようが、「あなた」という存在は素晴らしいということを、私は知っている、というオーラと余裕を醸し出すことを……。
特に、鼻くそに関してはよく指示を出す。
子供たちは鼻くそを、よく私の前でほじる。私は、毎回それを見て、びっくりしてしまう。その度に、「鼻くそは、人前では、ほじりません。一人でしてください。そしてテイッシュを使って下さい」と言わなければいけない。
私は子供の緊張を緩めてしまうのか、彼ら自身も、どうしてそんな行動を取るのかイマイチわからない、と、彼ら自身びっくりした顔を、あらゆる行動を取ったあとにする。この、子供の緊張を緩めすぎてしまう化学反応的な不思議な現象を引き起こしている原因の一部が、私にあること承知しているので、注意する際、極力、声のトーンと表情、言葉に気をつける。
つまり、一方的に責めるような口調にならないようにしている。子供たちは、私の言葉と態度1つで、あっと言う間に大人を疑い、嫌う。「ほら、また否定した」と、すぐに思い、自尊心を失う。
この前も、天使のような可愛い小学生女子が、私の前で、果敢にも鼻くそをほじり、念のためなのか、食べた。彼女もまた、私がそれをじーっと見ているのに気づきハッとした。
さて、なんて声かけをしようか。
彼女は優等生タイプ。
しくじったことをたった今、恥じている。
後悔した顔。
私は、咄嗟に「あら、大胆ね」と、冗談めいて言えた。
そこに、本当はしてはいけないことだと分かってるわよね? 今回だけよ、という優しい響きがあった。よし! カクヨムで書いたり読んだりしてる成果だ! と思った。彼女は凹まなかったもの。彼女は、彼女自身に、また、そのやり取りに爆笑した。
しかし、爆笑した後、それを楽しむようになってしまった。現在エスカレート中だ。彼女はあらゆることを試して、私の反応を伺っている。つまり、私は信頼はされていると思う。ただ、全然伝わってない。
今はもう、「だから! ダメだって! ね?」と、どストレートに言っているのに……。
これは、どういうことでしょうか?
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