第3話 国際結婚
Cさんは、まだ40歳になったばかりの若者。
一人でやってきて、ツカツカと店の奥へと入って来た。
「いいですか?」
どこかで見たことがある?
「お久しぶりですね。」
「覚えてます?」
自信があるわけではなかったが、
そのイントネーションに
「福岡の人?」
「そうです。4年くらい前に来たことあるんです。」
記憶を辿る。
ビールで乾杯して、日本酒を飲みながら
「妹さんが、国際結婚して裁判になってる人よね。」
安心した笑顔で
「そう。覚えてますか!」
Cさんの妹は、黒人と結婚して子供が2人。
しかし、その黒人の旦那さんは、不法滞在で入管法違反で強制送還されるかもという話だったのだ。
なぜ不法滞在がバレたかというと、
市役所で暴れて暴力を振るって、警察に逮捕されたためだった。
結婚と言っても、正式な婚姻届けが出されているわけではない。
妹さんは、シングルマザー扱い。
二人の子供は、見た目も黒人で福岡の田舎では、なかなか目立つ存在。
いじめの心配もありながら、既に小学生になっている。
Cさんの両親は、中南米出身のその男性との結婚には、大反対で
孫としても認めていない。
親子関係は、断絶していて、それでも心配なので兄であるCさんだけは、
連絡を取っているというのだ。
黒人の子供らしいクリンクリンの髪の毛の女の子の写真を見せてくれた。
生活保護を受けているのだが、
父親として日本在住を認めて欲しいとして、
裁判を起こしている。
それが4年前。
しかし、1審は敗訴。
2審も敗訴で、今、最高裁へ上告する準備をしているという。
その裁判費用や弁護士費用はどうしてるのと聞くと、
「どうなんかな。あんまり深いこと聞いたら、ね。」
子供たちの父親を奪われたくない気持ちは分かる。
しかし、この戦いに勝ち目はあるのだろうか。
そして、兄だからと言ってCさんが、どこまで協力出来るのか。
とても難しい話。
「強制送還されたら、もう日本には戻れんよね。」
「多分ね。」
裁判のことに全神経を注いでしまっている妹さん。
子供たちがかわいそうだとCさん。
周りの忠告や心配を無視して、勝手に結婚した妹に責任はあるが、
子供たちには罪がない。
でも、親代わりになるとか、生活を支えるとか自分には出来ない。
兄としての苦悩もあるようだ。
「仕事で当分ここにおるんよ。また、来るね。」
そう言って、Cさんは帰って行った。
その後も来店してくれて、自慢の歌を歌って日本酒飲んで帰って行く。
妹さんの話は、あえてしない。
Cさんは、独身。
彼にも幸せ掴んで欲しい。
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