第7話:始原の魔術書

 夕食も終わり自分の部屋に戻った僕は、引き続きリステアと話しています。


「リステアはご先祖様の契約精霊だったってことだよね?」

「まぁ、そんな感じよ」


 リステアは少し思案した後に若干曖昧な答えをしました。


「なんか曖昧な感じだね」

「そうね・・・なんと言ったらいいのか、それについてはそのうち話せると思うわ」

「今は話せないってこと?」

「そんな感じ」


 なんか、色々とありそうな感じだけど、答えてくれないならしょうがないですね。


「じゃあ、リステアって、どういった精霊なの?

 四元素のどこに属する精霊?」


 精霊はすべて四元素に属しており、水・地・火・風の何れかの属性を持っていると言われています。。

 魔法も精霊のサポートを得るものなので、基本的にはそれに従って4つの属性に倣うものが多いとされています。

 契約精霊が火の元素に属する場合、その魔術師の得意な魔法は、火の系統になります。

 反対に、水の系統の魔法は不得手になるとも言われます。


「私?そうね・・・特に属性はないわ。

 四元素とは別系統の属性だと思っておいて」

「え?そんなことあるの?

 精霊ってすべてが四元素に属してるんだと思ってたけど」

「ほとんどの精霊は、そうだと言われてるわね。

 私の知ってる限りで言えば、四元素から外れている精霊もある程度いるということね」

「そんな話聞いたこともないけど、精霊界では常識的な話なの?」

「そうね、常識と言えば常識だけど、それを教えてくれる精霊はほとんどいないでしょうね」

「え?どういうこと?」

「四元素の精霊達は話すことを許されてないのよ。

 それぞれの大精霊によって禁じられてる、って思ってくれればいいわ」

「禁じられてるってどういうこと?」

「それについては話すことはできないわ。

 精霊界においても、そういう契約になっているとしか言えないの」

「精霊界の中でも契約とかあるんだ・・・」

「あるわよ。

 結構様々な契約がなされているわ。

 内容について話せるわけではないけれど・・・」

「そっか・・・まぁ、そこはしょうがないか・・・」


 何かよくわからないですが、四元素とは別枠の精霊がいるらしいです。

 そんな別枠の精霊と契約させられてしまった僕は、いったいどういう魔法が使えるんでしょうかね。


「じゃあ、リステアと契約した僕はどういった魔法が使いやすくなるのかな?」

「そうね、特に得手・不得手はないと思っていいわよ」

「え?得意な属性とかないの?」

「四元素の魔法に限って言えば、特に制約はないわよ」

「あ、もしかして、全部均等に並み以下ってことか・・・」


 四元素の精霊と契約する魔術師は、属する元素の魔法は得意ですが、その他の魔法については並み以下と言われています。

 やはり、属する元素の魔法が突出していて、その他についてはそこまでぱっとしない感じになります。


「そこは、あなた次第ね。

 努力次第でどうにでもなると思うわよ」

「努力でどうにかなるものなの?」

「だから、あなた次第。

 疑問ならとりあえず魔法を使ってみればいいんじゃないかしら?」

「僕は簡単な魔法しか使えないよ?」

「そうね・・・じゃあ、とりあえず魔術書の転写でもしましょうか」

「え?魔術書の?

 魔法陣の転写じゃなくて?」

「やってみればわかるわ」


 なんか、リステアって、とりあえずやってみよう派に見えます。

 リステアが腕を振ると、一冊の魔術書が浮かんで出てきました。


「グリモワール?とは何か違う感じの魔術書だね」

「グリモワールは人の編纂した魔術書と言われてるわね。

 これは・・・始原の魔術書と言われているもので、神々が編纂した魔術書と言われてるわ」

「何それ・・・人が使っていいものなの?」

「レディアスは使ってたわよ」

「あ、ご先祖様も使ってたんだ。

 じゃあ、大丈夫か・・・」


 なんか誰かが使ってたというと、その安心感で大丈夫って感じしますよね。

 特にご先祖様が使ってたなんていうと、安心感倍増な気がします。

 それが本当は大丈夫とはとても言えない話であったとしてもです。


「それじゃ転写するわよ」


 リステアが魔術書に手をかざすと、魔術書は淡い光をまとい始めました。

 光が色濃くなっていった後に、魔術書が光の粒子となり、一瞬広がったような感じがした後、僕の方に凄まじいスピードで飛び込んできました。

 いや、飛び込んできましたというか、光の粒子に包まれて、その瞬間頭に凄まじい量の情報が流れ込んできました。

 そして、気を失いました。


『またかよ!』


 最近、魔法に関わると気を失うことが多いような気がします。


「目を覚ましなさい!」


 なんか、また往復ビンタをされてる気がします。


「リステア痛いよ・・・」

「あ、起きた。

 とりあえず今ので魔術書の転写は終了したはずよ」


 ほっぺたも痛いのですが、頭が無茶苦茶ズキズキします。


「なんか、頭が激しく痛いんだけど・・・」

「あー入れ過ぎた?」

「入れ過ぎ?」

「面倒だから、全部叩き込んだのよ」

「え?面倒って・・・」

「普通は1個ずつ転写するんだけどね。

 いちいちやるのも面倒だから、全部やっといたの。

 多分、頭が情報処理しきれなくて、限界寸前なんだわ」

「何それ、こわい。

 というか、痛すぎ・・・」


 もうズキズキというか、ギリギリと締め付けられてる感じです。


「しょうがないわね、今日はもう寝ましょう。

 私の魔法で眠らせてあげるから、明日の朝にはすっきりよ」

「その魔法大丈夫なやつ?」

「死人は出たことないわよ」

「死人は・・・って」


 と言ってる間に、魔法陣が展開され、僕はまた気を失いました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る