第2話:学術クラステスト(改稿版)
学術クラスのテストを受けるために第3教室に向かいました。
特別な教室を除くと、普段のクラスで使う教室は、1学年5教室あり、全9学年分で45教室あります。
ちなみに、1クラスは40名くらいなので、アカデミー全体では1800名の学生がいることになります。
そう考えると結構大きいアカデミーなんじゃないかと思います。
教室はクラス固定で使われる訳ではなく、授業担当の先生によって変わったりして、ローテーションで使われています。
今日のテストはそのうちの第3教室で行われるようです。
教室に行くと、先生が、恐らく学術クラス担当の先生だと思いますが、テスト用紙を配っていたので、それを受け取って教室に入っていきます。
教壇には監視ふくろうがいて、テストで不正が行われないように、まばたき一つせず見張っています。
学術クラス担当の先生のふくろうかもしれませんね。
席は特に決まってないので、近くに空いてた席に座ってテスト用紙を机に置きました。
テスト用紙を置くと、問題と残り時間がテスト用紙に浮かんできて、残り時間がカウントダウンされていきます。
ちなみに使っているペンは個々人の魔力のパターンが記録されているインクが入ったペンで偽造不可能なものになっています。
無駄に高度な魔法が使われてる気もしますが、不正防止の一環らしいです。
『席に着いた途端に始まるって、余裕なさすぎじゃない?』
とか思いますが・・・
文句も言ってられないのでさっさと始めたいと思います。
一応僕も商店の息子なので、算術は小さい頃からやらされていて、脳筋なルクス兄さんとは違ってそこそこできます。
学年の中では、トップ10に入れるかどうかくらいの成績なので、自慢できるようなできないようなという感じです。
『本当は、学年トップの成績だよとか言いたいとこなんですけどね・・・』
算術テスト自体はそれほど難しい問題もなかったので、さくさくと問題を解いていき、時間を半分残して見直しまで終了しました。
周りを見ると、何人か終わったのか立ち上がって教室を出ていく人がいます。
僕も次に行きたいので、終わることにします。
席を立つと、テスト用紙がすっと消えていきます。
これも不正防止の一環らしく、席を立つと自動でテスト用紙が回収されるようになっています。
いやはやどれだけ学生を信用してないんだよ、と言いたいとこですが、魔法があるこの世界では、様々な手段で不正を働く人がいたらしく、年々不正防止対策が厳しくなっているという話です。
『それって多分、無茶苦茶やりすぎた先輩達のせいだよね・・・』
噂で聞いた話だと、変身魔法使って替え玉したとか、トイレに行くと言って念写した問題文を外部に送って、回答を送ってもらったとか、目と手を同期させる魔法を使って、読み取った問題を同期させた手で遠隔回答するとか、なんでそこまでするんだとか思うような話がいっぱいあります。
学生は高度な魔法を使える訳ではないので、親が高額な費用と引き換えに裏の筋の魔法使いに頼むようですが。
確かに、学術クラスから進学して、商業アカデミーを無事に卒業できれば、自動的に商業ライセンスが貰えるというメリットはあります。
ライセンスは商店自体にではなく個人への発行なので、代々商店をやってると言っても、後継ぎがライセンスを取れなければ廃業になってしまうのです。
そういう意味では、廃業の危機に立たされて不正を働きたくなるという気持ちもわからなくはないです。
ただ、不正を働いて発覚した場合、二度とテストを受けることができないので、そこは諸刃の剣というやつです。
実際、去年も数人の学生が不正を働いて退学措置となっているので、様々な事情で禁忌に手を出してしまう人がいるのは否めません。
今年はどうなんでしょうね?
退学になる友達とか居なければいいですけど、僕の友達の中ではそこまで切羽詰まった人はいなかったと思います。
とりあえず算術テストは大丈夫だと思うので、最悪剣術と魔術のテストがダメだったとしても、学術クラスには進むことができると思います。
クラスに入れる基準は、テストの結果順なので、自分より成績上位の人がいた場合、その人が優先になります。
ですので、40位前後の人はかなりドキドキ感を味わうことになります。
僕の場合、算術は学年でトップ10前後なので、余程の番狂わせが数十人発生しない限り、恐らく問題ないとは思います。
ちょっとずるい感じもしますけど、安全パイは確保しとかないとと思います。
教室の前の黒板には、テスト結果は夕方5つ半の刻にさっき集まった講堂に張り出されると書いてあります。
他のテスト結果も恐らく同じように発表されると思いますので、とりあえず他のテストに行きたいと思います。
「リートも終わったの?」
と声をかけてくれたのは女の子の同級生シュアでした。
「うん、そんなに難しくなかったし、他も受けないといけないからね」
「リートの家、商店だもんね。算術は得意だよね~」
「まぁ、ルクス兄さん以外は算術は問題ないんじゃないかな?」
「ルクスお兄さんは剣術に秀でてるからいいんじゃない?後、ハンサムだし」
ちょっと頬を染めながらのシュア。
シュアはルクス兄さんのことが気になってるみたいで、よく聞かれるんだよね。
人の恋路を邪魔する気はないけど、完全脳筋なルクス兄さんのどこがいいんだろうね。
まぁ、ハンサムというのが罪ってことか・・・ひがんでないよ、ひがんでない。
「じゃあ、僕は次の剣術テスト行くよ」
「え?リートって剣術できたんだっけ?」
直球でディスってくるシュアさん。。。
「ルクス兄さんほどじゃないけど、ほどほどにはできるよ。木刀での素振りは一応毎日やってるし」
「あれ?でも今日のテストって、鉄の実剣じゃなかったけ?」
「え?そうだっけ?鉄の剣なんて一度も振ったことないけど、大丈夫かな・・・」
ちょっと心配になってきました。
「まぁ、同級生としては無事を祈ってるよ」
無事を祈るって・・・ケガすること前提なんでしょうか?
「シュアは次は魔術?」
「うん、一応うちの家は魔法薬作ってるから、魔術アカデミー行きたいとこだよね」
「お互いがんばろう」
「リートもがんばってね。後、ルクスお兄さんにもよろしく言っておいてね」
そこ今必要なんでしょうか?
シュアとのたわいもない会話を切り上げて、次のテストを受けるために武道場に向かいました。
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