第27話 誓いの前夜
いにしえの悪魔龍?なんか強そう…。
レイラさんは慎重な面持ちで語った。
「奴は常に身体中に闇のオーラを纏っていて、まず近づけないわ。しかもそれだけじゃなくて、4枚の翼にびっしり生えているトゲからは猛毒エキスがたっぷり分泌されてるから危険よ。」
猛毒エキス!?無理ゲーか…。
「でも、一つだけ弱点があるのよ!」
「弱点…?」
「そう。奴は翼に大量のトゲが付いてるから重くて飛べないの。」
なるほど…!それなら一応、地上に固定だから狙いを定めることは出来るってことか…。
俺はそのまま聞いてみた。
「じゃあ、まず遠距離武器である弓を使うレイラさんが遠くから奴を攻撃して、怯んだところを近距離武器の俺達が攻めるという作戦ですかね?」
「そうね…。そういう感じでいいと思う。」
しかしクルトさんは首を傾げた。
「う〜ん…でも奴がそう簡単に怯むのかな…。」
「何よアンタあたしの弓さばきに不満あるわけ〜?」
「ち、違うさ!もちろんレイラが弓の技術に長けてることは重々知ってるけど、相手はこの世で3本の指に入る強さを誇るエンシェントデビルドラゴン…。流石のレイラでも…。」
「まあね…。」
「うん…。」
なんとなく空気が沈む。それほど厳しい戦いになるってことだろうな…。
しばらくの沈黙の後、サリアが話し始めた。
「で、でも!私たちあの山賊もやっつけたんですよ!私たちなら、どんな敵だってきっと倒せますよ!私も精一杯頑張りますから!みんなで優勝しましょうよ!」
サリアは場の雰囲気を明るくしようと一生懸命盛り上げている。なのに俺はこのまま黙っているのか?いや、そんなの…
「そうですよみんな!サリアの言う通り、俺もみんなでなら勝てる気がする!!絶対大丈夫ですって!」
俺もなんとかフォローしてみた。実際、この人達となら本気でいけそうな気がするし。
すると俺達の想いが伝わったのか、レイラさんもクルトさんも表情が明るくなった。
「そうよね。やってみなきゃわからないわね!」
「なんか元気出てきた!」
良かった。こうでなくっちゃ、倒せる敵も倒せなくなる。倒せるかどうかは、全力でぶつかってから知ればいいんだ!!
こうして俺達は良いムードのままレストランを後にし、宿舎に戻って一晩ぐっすり寝た。
次の日。
「ヤ〜マ〜モ〜ト〜!起こしに来たわよ!早く朝食食べに行きましょ!!」
「賢治君朝だよ!」
「起きて〜!」
うるさいなぁ…。
「言われなくても起きますってほら!」
俺は掛け布団を思い切りはいだ。
朝食も例のレストラン。ここの店は洋食以外にも和食に中華、郷土料理までいろんな食べ物があるから毎日来たって飽きない。
「美味しい〜!」
「全く無料券様様ね!」
みんなも満足そうだし。
朝食を済ませた後は、すぐに訓練所に向かった。グランプリは明日。時間は待ってくれない。
「はぁっ!!!」
ザシュッ!!!!
訓練所に着くとクルトさんはすぐ自慢のランスで突き攻撃の演習を始めた。
俺も片手剣の使い方に早く慣れないと…。クルトさんは俺を褒めてくれたが、自分自身あまり上達した気がしていなかった。
「こうかな…?」
俺は力一杯に片手剣を振ってみた。すると見ていたレイラさんがアドバイスをくれた。
「もっと腰を低くして、少し屈むくらいのイメージで構えるのよ。それで斜め上から左下に向かって空気を切り裂くように素早く片手剣を振り下ろすの。やってみて。」
「わかりました!」
言われた通りにやってみた。しかし…
「あぁっ!」
ドサッ…
前から派手にコケてしまった…
「も〜なーにやってんのよヤマモト!ほら、大丈夫?」
レイラさんは優しく手を差し伸べてくれた。
「あ、ありがとうございます。自分で立てます…よいしょ。」
俺は自力ですぐ立って膝に付いた砂をはたき落としたが、彼女いない歴=年齢の俺にとって今のは最初で最後の女の子と手を繋ぐチャンスだったのではということに後から気付き、激しく後悔した。ぬあああもったいない!
「賢治君どうしたんだい?悔しそうな顔して。」
もうクルトさんは人の観察力凄すぎ!ww
そんなこんなでその後もギガントボアの戦闘訓練をしたり、湧いてくる雑魚モンスターを倒して経験値稼ぎしたり、思いつくことは全部やった。そして気づけば日が暮れていた。
「ふぅ…疲れたぁ…。」
サリアはいかにも疲れたって表情をしながら座り込んだ。
「後は明日力を出し切るだけだね〜!」
クルトさんも、やれることはやったという満足感からか笑顔。レイラさんも同じだった。
俺も正直、凄く達成感があった。片手剣の使い方も今日1日でだいぶ分かってきた気がする。
するとその時、後ろから声が聞こえてきた。
「お〜いお前さん達!今日は一日中訓練してたなぁ。お疲れ様。よく頑張ったのう。ほれ、ついさっきウェルダネスタウンの商店街で買ってきた手羽先の唐揚げだよ。お食べなさい。」
話しかけてきたのは訓練所の所長だった。
その手には大きめの巾着袋がぶら下がっている。
「ありがとうございます!」
俺達は喜んで手羽先の唐揚げを頂いた。
唐揚げの大きさは30cmぐらいもあって大きい。手羽先だから隅から隅まで全部食べれる訳ではないけど、食べれる部分を全部合わせても現実世界ではまずお目にかかれないデカさだった。
「こんなにボリュームあるから、今日の夕飯はこれだね。」
クルトさんは笑っていた。
肝心の味は…
「美味い!」
「美味しいわ!」
ジューシーな肉汁に香ばしい焼き加減で最高。所長も俺達が美味しそうに唐揚げを食べるのを見て笑顔だった。楽しい。美味い。とても幸せだった。
ふと空を見上げると満天の星空が広がっていた。
「「ごちそうさまでした!」」
俺達は食べ終わると所長に軽く頭を下げてお礼を言って、訓練所併設の宿舎へと向かった。
宿舎に着くと各自明日の荷物の整理に取り掛かった。まあ俺は昨日の段階から整理に手をつけてたから割と早く済んだ。
「ごめん賢治君、ちょっと荷物の整理手伝ってほしいな。」
「うん、いいよ。」
サリアが頼んできたので俺は快く引き受けた。と言っても、サリアの鞄の中には元々あまり物が入っていなかったので5分程で終わった。
やることを済ませると、俺とサリアは各自自分のベッドに飛び込んだ。
「よっと!」
「ふぅ〜気持ちいい〜。」
サリアはそう言ってシーツの上でゴロゴロした後すぐに動かなくなり、そのまま寝てしまった。一日中訓練したし、相当疲れが溜まっているんだろうな。俺はサリアに毛布をかけてあげた。
「俺も寝よっと…。」
自分のベッドに戻り、仰向けに寝そべった。
明日はいよいよドラゴングランプリ当日。絶対優勝して、サリアの父さんが言ってた『絶大な威力を持つ剣』を手に入れる…!!
不安やら希望やらが入れ混じった気持ちで目を瞑ると、俺もいつのまにか眠っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます