第6話 盗っ人植物

雲一つない快晴の空の下、俺とサリアは山を目指して歩いている。日差しが強いのでサリアは麦わら帽子を被りながら。

「うぁ〜!!素敵!」

サリアはそう言ってゆっくりしゃがみこみ、近くに咲いていた花々を見た。俺に花の知識は全然無いけど、凄く綺麗だとは思った。

すると突然、地面が激しく揺れ始めた。

「え、ちょっ!何で揺れてんだ!?」

俺はサリアに慌てて声をかけたが、サリアも俺と同じように慌てている。

そして地面に大きな亀裂が走り、その間から巨大な食虫植物のバケモノみたいなのが出てきた。

「きゃああああ!!!」

サリアは悲鳴をあげた。俺もこんなの初めて見た。よく見るとバケモノの頭のてっぺんからさっきの花が生えていた。なるほど…あの綺麗な花で獲物をおびき寄せるってか!!

さらにその化け物は草と草が擦れるような音を発しながら胴体から生えているツルをクネクネ動かし、サリアを掴み上げてしまった。

「賢治君助けて〜!!!!」

「今助けるぞ!!!」

そうは言ったものの、どうしたらいいのかわからない…。

「とりあえず…これでもくらえ!!」

俺は足元に転がっていた石をバケモノに向かって2、3個投げつけてみた。しかしバケモノはサリアを高く掴み上げたまま全く動じない。

「クソ!どうすれば…ゲームなんだからアイテムとか無いのか?」

俺がそう呟くと、目の前に何かが映った。

アイテム欄だった。イメージ的にはスマホの液晶画面だけが浮いてる感じ。

「なんだアイテム使えんじゃんリサシテーションルームの人先に言ってくれればいいのに!」

俺は急いでアイテム欄に触り、何か使える物がないか探した。回復薬やら解毒剤やら色々あったが、今使えそうな物は見当たらない…。

しかしよく見ると『武器』と書かれた欄があった。俺は直ぐにそれをタッチしてみた。でもそこにあったのは『短剣』という文字だけ。

「短剣か…使ったことねえけどもうこれでいいや!!」

『短剣』という文字をタッチすると30センチくらいの短剣が実物になって出てきた。今はこの武器で何とかするしかない!

俺は短剣を手に取り、食虫植物のバケモノの胴体にジャンプで飛び付いてグサグサグサグサと刺しまくってみた。

「おおおおおりゃああああああああ!!!」

するとバケモノは少し弱ったのか、サリアをツルから手放した。俺はすかさずサリアを抱きかかえた。

「良かった!サリア大丈夫か!?」

俺が聞くとサリアは、

「うん!助けてくれてありがとう!」

奇跡的に俺もサリアも怪我はしていないようだ。バケモノは静かに地中に帰っていった。

「いったい何だったんだろうなあのバケモノ…。」

「私も初めて見たわ…。」

ほっとしたのもつかの間、俺は手元からピッケルが消えているのに気づいた。

「あれ?ピッケルが無い!」

「私の麦わら帽子も無くなってる!バケモノに盗まれたのかな?」

如何にもこうにも、一度街に戻るしか無さそうだ。


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