第4話 少女の願い
「で、お願いって何?」
俺の問いに彼女はこう答えた。
「私ね。父が家で武器屋をしてて、私に家業を継いでほしいって言ってくるの。それも毎日。もううんざりしちゃって…。私武器のこと全然知らないし、本当は将来独立してお花屋さんを開きたいって思ってるのよ。だからあなたが私の代わりに父に説得してほしいなって…これがお願い。」
果たして街への案内と彼女のお願いとの力量が釣り合うのかはいささか疑問だったが、俺はYESの返答をした。
「良いぜ。俺がお前の父さんに説得してやるよ!」
俺の言葉に彼女はまたまた嬉しそう。
「やった!ありがとう!じゃあよろしくね!」
彼女の笑顔が眩しい。なんだただの天使か。
「そういえばお前のことをいちいち『お前』って呼ぶのもなんか変だし、名前教えてくれね?」
「いいわよ。私の名前はサリア。あなたは?」
「俺は山本賢治。改めてよろしく!」
「こちらこそ!」
こうして互いに軽い自己紹介が終わった頃、前方に街らしきものが見えてきた。
「あれがビギニングヴイレッジよ。」
サリアは始め小さい街って言ってたけど、全然そんなことなかった。
「へぇ〜!結構素敵な雰囲気の街じゃん」
「ありがとう!そう言ってくれるとなんか嬉しいわ。」
そして2人で街の中へと入り、サリアの家の前まで来た。
「じゃあ、約束通り父を説得してね?私はその間、街の奥の市場で買い物してるから。」
「わかった!なんか緊張する…」
サリアと一旦別れ、俺は恐る恐るドアをノックした。すると家の中から少ししわがれた低い男性の声が聞こえてきた。
「今出るからちょっと待っててくれ!」
しばらくして筋肉質な大男が出てきた。頭はスキンヘッドで、眉とヒゲは灰色。目つきは鋭く、肌は茶色に日焼けしている。
「あんた誰だ?客か?今日は定休日ってそこに書いておいたんだが。」
俺は男の迫力に焦った。サリアの父さん怖すぎだろ…
「いやぁ実は俺さっきあなたの娘さんと知り合いになりまして…」
「そうなのか?んで用件はなんだ」
「ええと…娘さんどうやら独立して花屋を開きたいそうで、あなたの武器屋は継ぎたくないそうなんですよ。だから…」
俺の言葉を聞いてサリア父の態度は急変した。
「お前にサリアの何がわかるってんだ!!そもそもいきなり現れて他人家の事情に首突っ込むってどういうつもりだ!!」
やばいやばい。俺殺されそう!
そこにサリアが駆け戻って来た。
「ちょっとお父さん!落ち着いて!この人は悪い人じゃないから!多分…」
多分て…w
「サリア!こいつはどういうことだ!?」
サリア父の大きな声。街の人達も数人様子を見に来た。
こういう時はとりあえずサリア父に自己紹介をするのが良いのか?
「お、俺!名前は山本賢治って言います!日本生まれの日本育ち!18歳!」
俺の精一杯の自己紹介を聞いたサリア父はこう言った。
「ヤマモトケンジ?ニホン?聞いたことねえ響きの言葉だなぁ…ますます怪しい…」
サリア父の俺に対する信用はもはや絶望的。
こりゃどうしたもんか…
するとサリアが俺に謝ってきた。
「賢治くん…ごめんなさい。私があなたに無茶お願いしちゃったから…」
「いやいや、謝らなくていいって!俺がこんな見窄らしい初期装備着てサリアの父さんに会ったのも悪いし!」
俺のサリアへの態度を見たサリア父は、俺への見方を少し改めたのか、
「さっきは取り乱してすまなかった。お前、悪人ではなさそうだな。ただ純粋に俺たち家庭の問題の解決に協力したいって感じか?」
サリア父、最初見た時は考え方も堅そ〜な人だと思ってたけど、案外話をわかってくれるのかも。俺はすぐ返事をした。
「はい!さっき道に迷ってた時に娘さんが街まで案内してくれたので、そのお返しにと思って…」
それを聞いてサリア父は
「そういうことか。わかった。立ち話もナンだから、家上がりな。」
「ありがとうございます。」
一時はどうなることかと思ったけど、ひとまず大丈夫そうだ。
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