第152話 総理の瞬間移動

議事堂内控え室

広田と楢崎に連れられて摩耶が戻ってきた。

「ふーちゃん、お疲れ様でした。よく頑張ったね。特に最後は圧巻だったよ」

「はっはっは、案ずるより産むが易しじゃな。ワシらの出番は全くなかったわい」

「そんな・・・広田さんと楢崎さんの援護射撃のおかげです。本当にありがとうございました」

ぴょこんと頭を下げる摩耶。

「あ、ふーちゃん。援護射撃と言えば、中居さんも念力で騒々しい議員たちの声が出ないようにしてくれたんだよ」

「あ、それで私も一瞬声が出なかったのか」

「私も最初出なかったわ。敵味方関係ない無差別攻撃ね」

喉をさする広田と楢崎。

「はっはっは、まあそう言うな。緊急事態だったからな」

禿げ上がった頭を叩いて中居が笑った。



「しかし、今ごろ総理は各国のホットラインの対応で大忙しだろうな」

広田が人事のように言う。

「全くあの人は昔から外交センスゼロなんだから、ガツンと言って欲しいわ」

楢崎もぼやいた。


「コンコン」

と控え室のドアがノックされて総理の秘書が入ってきた。


「総理からの伝言です。各国首脳との電話が終わり次第、みなさんと瞬間移動で神戸に行きたいとの事です。よろしいでしょうか?」


「どうかな?摩耶さん?」

広田が摩耶に問う。

「当然OKです。先ほども10日間で議員全員を移動させる約束をしましたから言ってみればこれが第一陣ね」

「あら、じゃあ私も連れて行ってね」

楢崎が便乗した。


「もちろんです!」


1時間後

「お待たせした。すまないが神戸までよろしくお願いする」

黒服のSPたちに囲まれた中洲根が控え室に入ってきた。

「総理、トランポリン大統領はいかがでした?」

日枝神社に向かう道すがら広田が聞いた。

「幹事長、どうもこうもないよ。あのシステムの独占は許さないとの一点張りだ。他の首脳も同じだ」

「やはりな・・・」

「ロシア・フルチン大統領にいたつては『戦争も辞さない』などと脅しをかけてくる始末だ」

「で、どう答えたんですか?」


「と、とりあえずそのシステムを実際に体験してから話し合うという事で話をまとめた」

「はっはっは、それはまとめた事にはなっとらんな。ただ逃げただげじゃあのう」

「剛三さん、それはあんまり酷い言い方です」

総理が汗を拭った。


「さあ、着きましたよ」

5名のSPに囲まれた一行が鳥居の前に着いた。


どこで情報を嗅ぎつけたのか各国の報道陣たちも多数ゾロゾロとあとをついて来た。



「それでは総理と広田さん、楢崎さんどうぞ」

と摩耶は手慣れた手順でミスマルノタマに誘った。

「念の為にSPも1人入れていかな?」

「1人なら大丈夫です。どうぞ」

総理の要請に応える摩耶。

「それでは肩につかまって下さい。行きますよ、あれ?」

摩耶を包んだミスマルノタマが鳥居を通らないらしい。

「どうした?先に行かないじゃあないか?」

いらつく総理。


「あの、すみません。SPの方・・・もしかして武器をお持ちでは?持ち込み禁止です!」

摩耶の問いに懐からピストルを取り出して居残る同僚に手渡すSP。

コルト・ガバメント45口径、銭形のとっつあんを思い出した。

「ね、武器・弾薬の禁止がこれで理解できましたか?それじゃあらためて!レッツゴー!」


スッと渦巻きが現れて鳥居から4人の姿が消えた。


「あー!総理が消えました!奇跡です。またもや奇跡が起こりました!」

聞き覚えのある声が後方で聞こえた。

麦わらが叫んでいる。









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