第121話 光子 テスト飛行

 中居先生とメグ達がウィングバーガーで会議をやっている同時刻。


 伊勢の内宮では50人の観光客が鳥居の下に集まっていた。


「さあ皆さん、お待ちかね。今から出雲大社に向かいますので、昨日と同じように5人単位でグループを作って並んでください。報告では出雲地方の天気は快晴、旅行日和です」

 青い旗を持った石崎が笑顔で説明する。


 その言葉に従って5人組ができて列をなした。


「さあ、摩耶さん。今日もよろしくお願いします」


「あの・・・石崎さん。昨日もお話ししましたように堀先輩のお母さんに、テスト飛行させていただけますでしょうか?」


「あ、そうでしたね。昨日ミスマルノタマが纏えた事をすっかり忘れていました。じゃぁ光子さん、よろしくお願いします」


「え?お母さん、あなたもミスマルノタマが使えるんですか?」

 先日の初老の紳士が尋ねてきた。


「はい、昨日この子たちに手伝ってもらって、できたばっかりなんです」


「そうなんですか!」

「すごいですね!」

「羨ましいな」

 光子を取り巻く観光客から、にわかに歓声が上がった。


「あのー、もう1回俺にテストをやらしてもらっていいかな?昨日もウタヒを唱えたんだけど、なんとなくミスマルノタマが見えたような気がするんだ」

 突然、貧乏神が現れた。


「いいですよ、播磨先輩どうぞ」

 摩耶は伊勢神宮から出雲大社行きの水晶を播磨に渡した。


「ようし!今度こそ!」

 水晶を持った播磨が、腕まくりしてウタヒをブツブツ唱えながら鳥居をくぐった。


 しかしやはり何も起こらない。

 またもや普通に鳥居を歩いて通過しただけだ。しばらくして目を開いてあたりをキョロキョロしている播磨。

 まるで貧乏神がさまよっているかの風景に観光客から「ドッ」と笑い声が起こった。


「カー!俺って才能ないのかなー!」

 才能と言うよりも、そもそも参加資格がないという事に気づかず、ガックリと肩を落とす播磨。

 やはり貧相だ。


「坊ちゃん、まだまだ道のりは遠いようですね、頑張ってください。さあ、最初の5名様こちらへ来てください」

 笑いながら石崎が播磨をなぐさめる。


 ゾロゾロと5人が鳥居の下に来た。


「さあ、光子さん。よろしくお願いします」

 と水晶を播磨から取り上げて光子に手渡す石崎。


「本当に大丈夫かしら?なんか怖いわ」

 水晶を受け取った光子がつぶやく。


「大丈夫よお母さん。さあウタヒを唱えてゆっくり歩いて」


 ラスカルに促されてウタヒを唱える光子。


 すると摩耶とラスカルには金色のタマが現れるのが見えた。

「うん、これなら大丈夫だわ。さあおばさん、自信を持ってこのまま皆さんと鳥居をくぐってください」

 摩耶が念を押した。


「わかったわ。では行ってきます」


 最初の5人グループと一緒に鳥居をくぐる光子。

 すると昨日のラスカルの時と同じように、渦巻が現れて一行は鳥居から姿を消した。



 しばらくすると、またもや白い渦とともに光子が姿を見せた。


「ただいまー!ちゃんとみんな送ってきたわ!」

初めてのテストが成功したので興奮している。


「やったわね、お母さん!すごいわね」


「初めてなんでドキドキしました。5人の皆さんは鳥居の下に待たせています」

 小さな手で胸を押さえる光子。


「光子さん、合格です。お約束通り来週から毎回、我が社のツアーのお手伝いをお願いいたします」

笑顔の石崎が拍手しながら正式採用を光子に伝えた。


「じゃあ次は私たちが送っていくわ。次のお客様こちらへどうぞ」

 事務的に観光客を誘導する摩耶はスマホを取り出してメグにメールをした。


「堀先輩のお母さんもミスマルノタマ装着完了。テスト飛行も無事終了」

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