第74話 翌朝 摩耶の自宅
摩耶はいつもの時間に、起きて朝食をとるためにテーブルについた。
「いただきまーす!」
すでにテーブルの上には、焼きたてのトーストとコーヒーが並んでいていい香りを立てていた。
父親の隆は、かたわらで新聞を読んでいる。彼の職業柄、毎朝五社の新聞を読む習慣であった。
「しかし、どの新聞もお前の顔が1面に出ているな。いい表情してるじゃあないか」
「ありがとう!お父さん。精一杯よ」
「世界的な株の暴落よりも瞬間移動装置の記事が紙面を全部占めている。たいした破壊力だな」
「そりゃそうよ。富士子が昨日、あれだけのインタビューをやったんだからね。一躍、超有名人じゃない。是非、お母さんも伊勢や出雲に連れて行ってね」
「もー!何言ってんのお母さん、昨日までは私のことを全然信じてなかったくせに!」
「ごめんね。あなたがまさか、こんな凄い技術を身に付けていたとは知らなかったから」
「だから、『本当だから信じて!』って何度も言ったじゃあないの」
「まあまあ、富士子。母さんを許してやってくれ」
「わかったわ!お母さんに、貸しにしとくね」
「あ、ありがとうね」
朝から母親が娘に絞られている。
「しかし、富士子。あれだけのマスコミ相手の質問攻めには疲れただろう?」
「本当に疲れたわ。でも昨日のインタビューの中で、ジョージおじさんの質問が一番、私の胸に響いたわ」
「ほう、うちの吉原がいったいどんな質問したんだ」
「あなたは、こんなすごい技術を使って本当は一体何をしたいんですか?と言う質問だったの」
「なるほど、吉原らしい本質をついた質問だな。で、どう答えたんだ?」
「世界中の貧困をなくして、恵まれない子供たちに医療や教育の面で使いたいと答えたわ」
「ほう、いい答えだな」
「私自身も全然用意してなかった回答なんだけれども、自然に心の底から出たのよ。本当に思ってることなのでスラスラ答えられたと思うの」
「なるほど、ところでお前が前回提案した『今日も元気よ!カタカムナ』だったかな?わが社での電子書籍計画はどうする?」
「もちろん、ぜひやりたいわ。精神文明の到来を、効率よく世の中に宣伝したいから」
「じゃあ今日にでも吉原と会議をするか?」
「今日はダメなの。メグちゃんとカタカムナウタヒ教室をスタートするので生徒募集をするから」
「そうか・・・例のミスマルノタマの纏い方を一般人に伝授する教室だったな」
「そうなの。か弱き乙女なのに仕事がたくさん!」
「そうだ、その教室にに吉原を参加させてインタビューをしたいが大丈夫か?」
「大丈夫よ、今日から開くので放課後の4:30ごろに来るように言ってね」
「了解した。よろしく頼むな」
「ご馳走さまでした!」
摩耶が食事を終えた。
「お粗末さま」
母親の静子は低姿勢だ。
「「行ってきまーす」」
その言葉の後、2人は一緒に住吉神社の鳥居へ続く階段上り仲良く出勤&登校をした。
鳥居の下に15-6名の女子高生が、摩耶を待っていた。さまざな制服から察するにいろいろな高校生が集まっている。
その中には地味であるが『小動物』坂本の姿もあった。
「あ、来たわよ」
「本当だ、摩耶ちゃんだ」
摩耶の出現にみんなが手を振る。
「摩耶ちゃーん、私たちも御影まで送ってくれる?」
「あ、やっちゃん、知子、美智子じゃないの」
「昨日のテレビ見て、瞬間移動のおこぼれをもらいに来ました!迷惑だった?」
「いいよいいよ。みんな幼なじみだから。何回か往復するだけだから」
「「「よかったー」」」
「じゃあ順番に私の肩をつかまって歩いてね。さあ、行くわよ。あ、お父さんはみんなを送ってからね」
「わかった、わかった」
「おじさん、お先にすいません!では摩耶ちゃん、出発進行ー!」
いつもは静寂に包まれた神社の境内が、『にわか同窓会』のおかげで騒がしくなった。
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