第71話 中居剛三との会議


しばらくすると

「コンコン」

と校長室のドアを叩く音がした。


「失礼、中居剛三です」


「あ、来ましたね。どうぞお父さん、入ってください」


ドアが開いて和服姿の中居剛三がゆっくりと入って来た。

さすがに貫禄がある。


「お父さん、さあこちらに座ってください」

中居がメグたちの正面のソファーを勧め、剛三がゆっくり座った。


「はじめまして。中居先生のお父さん。私が卯原恵です」


「ワイが和泉秀でんねん」


「僕が保倉星なんだナ」


「私が摩耶富士子です」


「これはこれは卯原様、お初にお目にかかります。わたくしがこの愚息の父親、剛三です」

愚息と呼ばれた中居先生が父親の慇懃な態度に驚いた。

自分にとって絶対的な存在である父親が、自分の教え子の高校生に対してまるで家臣のような態度で接しているからだ。


「始めまして、と言うよりはずっと心でつながっていたから、正直初対面って言う気がしないわね。気を楽にしてください」

メグが剛三に笑いかける。


「はっはっは、そう言われると恐縮です。私のほうも常に、心でつながっていたというのはよくわかります」


「剛三さん、長い間私たちカタカムナ人の末裔として系譜を存続していただきまして本当にお疲れ様でした」


「そこまで言われると恐縮です。お疲れ様と言われるほど疲れるような事は全くしておりませんです。しかしお三方がまたこの世に来られたという事はいよいよ物質文明が変わる時期と理解してよろしいのですね」


「そうなの。さすがによくわかっているわね。6500年の節目だからね」


「そのような大切な節目に出会う事が出来るとは光栄です」


「でも今日、我々が合うと言う事は、当然何か大事な用があるんですよね」


「はい、われわれは偶然出会ったのではなく今日の会議は必然と言う事はご承知の通りです」


「それはつまりは・・・日本政府でんな」


「その通りです。和泉様のお察しの通りです」


「日本国政府が我々に接触を求めているんだナ」


「はい保倉様」


「それはそうね、今日みたいに摩耶ちゃんが、あれだけ派手にデビューして何も反応ないって言うことないよね」


「卯原様、その通りです。先ほど、内閣の広田官房長官から電話で連絡がありまして、摩耶さんに是非国会に出ていただきたいと言う要請がありました」


「いいじゃない!ちょうどいい機会だわ。物質世界の終わりが来たって言うことを摩耶ちゃん、国会で高らかに宣言してあげてね」


「わかりました。何か今日のインタビューで自信ついちゃった」

摩耶が少しキャラが変わった感じで答えた。

しかし風貌はメーテルのままだ。


「しゃーけど剛三はん、日本政府はワイらの味方になりよるかどうかわかりまっか?いつの時代もワイらの障害はその時の政権なんや」


「ここは、得意の超能力の出番なんだナ」


「はい、和泉様。その質問にお答えしますのでしばしお待ち下さい」

そう言うと剛三が深い息をして、目を閉じて瞑想に入った。


五分後


「出ました。全国会議員の心の中に入りましたが99%の議員が摩耶さんの今日のインタビューを見て危機感を持っています」


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