第46話 SNSの力
翌朝5時に目が覚めた摩耶はまずTwitterとFacebookのサイト開けて驚いた。
たった1日の間に20,000人以上のフォローがついていたのである。
「メグちゃんの言った通りだわ。これは思ってたより早く多くの人に知れ渡るわね」
1階から父親の隆の声がする。「おーい!富士子起きているか?今朝は例の瞬間移送とやらを見せてくれるんだろ?」
「はーい、わかった今行くわ」
身支度を整えて朝食を取るためにテーブルに座った2人。
「まあ、貴方・・・瞬間移送なんて。本当にこの子の言うことを信じてるんですか?」
妻の幸子が2人に配膳する。
「当たり前だ!我が子の言うことだ。親が信じなくてどうする」
「はいはい仕方ないわね。好きなようにしてください」
「もうお母さんは本当にロマンの欠片もないんだから」
朝食が終わり幸子は笑顔で 2人を送り出した。
「「いってきまーす」」
スーツ姿の隆と女子高生の制服姿の摩耶が連れだって山腹にある神社の階段を上っていく。
早朝登山であろうか、赤と黄色のパーカーを着た2人組の初老の夫婦があまりにも場違いな服装で山の中の神社に向かう2人に好奇の目を送った。
「なあ、富士子。どう見ても俺たちってやっぱ場違いだよな」
「そりゃそうよね。スーツ姿の中年とかわいい女子高生が早朝から山に向かって歩いてるもんね。普通に考えて心中か何かとしか思えないわね」
と摩耶は笑った。
階段を上り詰め住吉神社の鳥居の下に来て水晶を取り出した摩耶は父親に向かって言った。
「さぁお父さん、今から影松高校の下の通称お化けトンネルまで行きます。私の肩につかまってね」
2人の目の前には朝日を浴びてキラキラと光る茅渟の海が綺麗であった。
「ちょっと待ってね、お父さん。その前に着地地点の状況をまず確認するわ」
と言って摩耶はスマホを出してお化けトンネル内に現在誰もいないことを確認した。
「このサイトによって行き先に誰もいないことを確認するのよ」
「そうか、かなりシステムが出来上がってるようだな。これは本当に期待ができそうだな」
「何言ってんのお父さん、まだ疑ってるの?本当に本当よ!はい、肩に手を置く!」
隆は娘の肩に手をおいた。
「じゃあ行くよ。そのまま私に続いてゆっくりと歩いてね」
小さな水晶を手にした摩耶は隆とともに一歩前進した。
あっという間に渦が現れて2人は暗いトンネルの中に出現していた。
すぐ真上の国道に車が通るたびに「ゴウンゴウン」と重い音がトンネル内に響く。
「こ、これは・・・こんなことが実際にあるのか・・・お前の言ったことは全て本当だったんだな」
「そうよ。だから言ったじゃない。お母さんだけよ信じてくれないのは・・・」
「この移送の原理はなんだ?エネルギーはどこから取るんだ?誰でも可能なのか?移送の距離はどうなんだ? 」
興奮した隆は職業柄胸ポケットから手帳を出して娘の摩耶に質問を投げかけた。
「もう、お父さんたら!一度にそんなにたくさん聞かないでよ」
「もう一度戻る事は可能なのか?」
「もちろんよ。戻ってみる?」
「ああ・・・」
「じゃあ先とおんなじ、もう一回肩に手を触れてね」
先ほどと同じ動作をするともう一度渦が現れて鳥居の下に出てきた。
階段の下には、先ほどすれ違った黄色と赤のパーカーの初老夫婦の背中が見える。
「お、お前はなぜこんなことができるんだ? 」
「昨日も言ったでしょう?同級生のメグっていうカタカムナ人に教わったのよ」
「凄い技術だな・・・世の中のシステムが根底から変わる」
「そうなの、彼女が言うには世の中の考え方自体が変わるそうよ。さあもう一度トンネルに戻るわよ」
もう一度同じ動作をすると暗いトンネル内に2人は立っていた。
「凄いな・・・しかしこの瞬間移送が本当だったんだから、そのカタカムナ人の言う事は全て本当と考えていいんだな」
「間違いないわ。彼女たちは本当にカタカムナ人で我々現代の人類に対して高度な科学を教えにやってきたのよ」
お化けトンネルの中央で会話をする2人。
「富士子、この話は人に話してもいいのか?」
「ええ、メグが言うには出来るだけたくさんの人に知らせてほしいとの事よ」
その富士子の答えを聞いてた隆はスマホを取り出して慌ただしく会社に電話した。
「もしもし俺だ。編集長を出してくれ。あー編集長、来月号の日本酒特集は延期にしてくれ。とんでもないすごいスクープが手に入ったんだ。詳しくは会社で話す」
登校時間が迫ってきたのだろうかトンネルの南側の入口からは影松高校の制服を着た生徒たちがバラバラと歩いてきた。
しかもいつもより多いような数である。
「こんな早い時間になんでうちの生徒がたくさん集まってくるのかな」
と摩耶は首をかしげた。
「お父さん、生徒が集まってきたわ。立ち話もなんだからそこのウィングと言うハンバーガーの店があるのでコーヒーでも飲まない?」
「ああいいよ。もしできたら今日そのメグさんとやらにインタビューをしたいのがどうだろうか」
「大丈夫よ、ひょっとしたらもうそろそろここを通るかもしれないから声をかけてみるわ」
2人は通学する生徒の流れと逆行して南側の出口の階段を上ってウィングのドアを開けた。
「おはよう!マイさん」
「あら、おはよう摩耶ちゃん。その人は?」
「別に怪しい人じゃないわ。私のお父さん。『神戸ライフスタイル』と言う出版社を経営してるの」
「あら、そう。有名なタウン誌ね。ダンディーなお父さんでうらやましいわ!はじめまして私が店長のマイです。いつも摩耶ちゃんにはお世話なってます!」
「はじめまして。摩耶の父親の隆といいます。朝早くから頑張ってますね。また一度お店の取材に伺ってもいいですか」
「はい、よろこんで!でも摩耶ちゃん今朝はいつもよりおかしいのよ」
店の目の前を通る多くの生徒を見ながらマイは言った。
「私も気づいたわ。たくさんの生徒が早朝にもかかわらずこんなに集まってきてるよね」
「そうなの。毎朝ここの風景は見なれているけれども影松高校の皆んなは気味悪がってこのトンネルを通らず向こうの横断歩道使って登校する子が多いのに、今日に限っては異様に人が多いわね」
そこで妹のアミが駆け込んできた。
「ちょっとお姉ちゃん。大変よ!たくさんの生徒たちがお化けトンネルの真ん中に集まって自撮り棒でスマホで写真を撮ってるわ」
「ほんとそれ。なんでかな?何かあったのかな?」
「それと学生だけじゃないの。明らかに一般人と見える人がユーチューバーみたいに『ここが例のお化けトンネルです』なんて中継をやってるんだよ」
「やっぱり!」
先輩たちの拡散の結果だと摩耶は直感して叫んだ。
「「何?摩耶ちゃん何か知ってるの?」」
全く同じ顔の双子のマイとアミはステレオのように同じ質問を摩耶に聞いた。
「実はね、あのお化けトンネルには私の家がある渦森山と繋がっている瞬間移送措置があるのよ」
「またまた、朝からそんな冗談言って。摩耶ちゃんのお父さんは信じますか?」
「いやー、昨日の夜までは娘からその話を聞いて半信半疑だったのだが実際に今彼女と渦森山からそこのお化けトンネルに移送してきたから私も疑う余地はないんだ」
「えー!そんなことが現実にあるんだ。誰がそんな装置を作ったの?」
「メグちゃんとあとの2人よ」
「やっぱり・・・あの3人はなんか普通とは違うと思ってたのよね」
「そうなの、なんでもカタカムナ人と言う人種なのよ。彼らは日本各地の神社に瞬間移送はできると言っていたわよ」
「待って、と言う事は私の家は三宮の生田神社の近くなんだけれども、あなたのように瞬時にここまで来れることができるの?」
「できるわよ実際にやってる私が言うんだから間違いないわ」
「「どうやったらできるの?」」
とマイとアミが興味深く聞いてきたので摩耶はこれまでのいきさつを父親を含む3人に詳しく話しだした。
「ちょっとまて、富士子。大事な話だから今から編集長の吉原を呼ぶ。今日午前中に会社で話すつもりだったがお前から直接話しを聞いて取材したほうがいいと思う」
「いいわよ」
隆は会社にもう一度電話して編集長の吉原をウイングに来るように命じた。
隆の会社からウイングまでは歩いても10分ほどの距離である。
店の前は相変わらずトンネルに入ろうとする生徒たちで大賑わいで、順番待ちでトンネルに入れない何人もの生徒たちがウイングに入ってきた。
「カランカラン」
と何度も来客を知らせる鐘が鳴る。
「でもお化けトンネルのおかげでこれからはお店が繁盛しそうね」
マイが笑った。
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