第22話 強力 新入部員
「ちょっと、そこ止めて下さい」
摩耶がパソコンで写真をチェックするためにスライドさせる先輩に言った。
「ん?これか?」
二つに割れた岩が映っている写真に食い入るように凝視する摩耶。
「あー、ここは牛女伝説のある寺からの帰り道にある夫婦岩やな。二つに割れて女性器に似てるから通称は『オ○コ岩』と言われている」
「もー!渡辺部長、品位のないこと言わないで下さい!新入部員が辞めていきますよ!」女性部員の堀が渡辺の背中を叩きながら苦言を呈する。
「ここ見て。この割れた岩の間」渡辺部長の卑猥な言葉など聞いていないかのように摩耶が指を指した。
「何もないが」
「何かあるの?」
「ただの木にしか見えないわ」
他の部員がパソコンを食い入るように覗き込む。岩の割れた場所は木が生えてるだけで特に幽霊や人の顔らしいものは確認できない。
「磁場の歪みね」後ろで腕を組んで見ていたメグが言った。
「ほえー!よーゆがんでまんなー」
「これはいろんなモノが見えるんだナ」
「貴方たちさすがね、ここには強い霊気を感じるわ」摩耶が3人を振り返り言った。
「君たちにはこの岩に我々に見えない何かが見えるのか?」中居が真顔で質問する。
「見えるちゆもんやおまへんで、先生」
「幽霊の目撃談が多いのも納得なんだナ」
「じゃあ私が説明するわね!先輩たちもよーく聞いてね」
メグがペンを持ってホワイトボードの前に立った。
中居を含む部員全員が椅子に座ってメグの方を向く。
「キュッキュッ」
と三角形を書いた。
「分かりやすく言うと光学機のプリズムをイメージしてね」
三角形に左から直線を書いてプリズムの中で角度をつけた直線を右に引っ張る。
「自然界ではプリズムを通してモノを見ると真正面のモノが見えずに角度が違うモノが見える。ここまでいいわね」
「うんうん」と首を振る部員一同。
「あの岩の周りに大きなプリズムがあるとイメージして」
「巨大なプリズムを通して本来見えないモノが見える・・・か」渡辺が言う。
「でもプリズム理論はわかるけど、なんであの場所にプリズムが発生するんだ?」先輩から質問の声があがる。
「あの場所の地中の磁場が強いからよ。本来はあの場所は神社にすべき場所なの。そこに無理やり道路を作ったものだから摩耶ちゃんのような見える人には車を運転していて見えてしまうの」
「とうことは逆に神社がある場所は磁場が強い場所なのか?」
「そう、古来から日本人は磁場の強い場所と弱い場所がわかる民族だったの。そして強い場所には神社や祠を作ったのよ」
「だから神社はパワースポットって呼ばれるわけね」堀が感心したようにつぶやく。
「じゃあこの辺りでは保久良神社、住吉神社、弓弦羽神社だな」
「そうね。あと、貴方たちが『お化けトンネル』って呼んでいるそこの地下トンネルも磁場が強いのよ」窓の外を指さすメグ。
「あ、だからあのトンネルには幽霊を見たって話があるのか」
「あー!トンネルと言えばあんたたち、例の作業は?」
「あ、ホンマや!」
「忘れてたんだナ」
「早く行って来て!すいません皆さん、2人は今から急用で帰らせます」
「ほなお先に」
「さよならなんだナ」
メグの命令で大慌てで部室を出ていく秀と星であった。
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