第16話 超自然科学研究部 3
メグ、秀、星の3人がホワイトボードの前に並んだ。
椅子に座って中居と摩耶が真面目に聞く体制に入った。
「いいわね、あんたたち。どうせ正体バラすんだから元気一杯宣言しましょうね」
「よっしゃ」
「了解なんだナ」
どうやら作戦会議が終わったようである。
「実は私たちは」
そこでメグは一旦言葉を切って
「せーのっ!」
「カタカムナ人なんです」
「カタカムナ人なんやねん」
「カタカムナ人なんだナ」
相変わらず語尾が揃わない3人。
「いやー!やっぱり君たちはしびれるなー!」
「ね、先生、面白いでしょ?この3人は?」
大笑いしながら大拍手をする摩耶と中居先生。
「えー!せっかく勇気を出して白状したのに2人とも信じてくれないんですか?」
メグが嘆く。
「いや、確かにカタカムナの知識があるのは認めるけれども、どう見ても君たちは普通の高校生だろ?それをいきなり『カタカムナ人なんです』って言われてもな」
涙目を抑えながら中居が言った。
「えー、ひどーい!摩耶ちゃんは?」
「いえ、私は最初に言ったようにあなたたちの背後には渦巻が見えるから、その言葉は90%は信じてる。でもね普通本当にそうだったらもっと真剣な顔で暴露するよね。なんか3人とも全然語尾が揃ってないしコミカルで笑っちゃっただけ。ごめんね」
「ほらみてみい、ワレのキャラで疑われてしもうたがな」
「秀のコテコテの大阪弁が問題なんだナ」
「まあまあ、それだけカタカムナ人の役に成りきって、深くカタカムナの研究をしているってことでいいじゃあないか。それはそれで見上げた考え方だ」
「じゃあ、先生どうやったら信じてくれるの?」
「あ、メグ、先生の今まで研究してきたカタカムナの疑問点を全て解決してあげればどう?」
落とし所を見つけたように摩耶が提案する。
「そんなん簡単や」
「楽勝なんだナ」
「先生いかがですか?」
「うーん、それもいいな。途中で止まっていたカタカムナ文字の解読に付き合ってもらえるかな?」
「いいわよお安い御用よ!」
「じゃあ、早速さきほど言っていた意味不明の地名があったよね。それの意味から教えてくれる?」
摩耶もカタカムナ語に興味を持ったようで前向きな質問をしてくる。
「ザクガ原、、ザフクガ原、ヘソボ塚ね」
「そうだ、さっぱり意味がわからんな」
「まずは保久良神社のあるザクガ原はね、まず『サ』は差とか隔たりを現しているの、さらに濁点が付いてるから強調形ね」
「『ク』は引き寄せるという意味なんや」
「『カ』は力、パワーなんだナ。漢字の力(ちから)はここから来てるんだナ。しかもこれも濁点がついているからさらに大きな力なんだナ」
「つまり神社があるあの地域は『引き寄せるパワーの差が他の場所よりも大きい場所』ということになるわね。当然よね、だからそこにパワーがあることを知っていた我々は神社を建てたのだから」
「せや、同じようにザフクガ原っちゅうのはさっきの地名の中に『フ』が入っとるやろ?『フ』は増えるという意味なんや。しゃーからさっきの土地よりもさらに強大なパワーがある土地ちゅうこっちゃ」
「そう!すばらしい土地に保久良神社は建っているのよ!」
「なるほどな。そういう意味があったのか。いや、これは勉強になる」
「次はヘソボ塚ね。これは住吉川の近くにある前方後円墳の跡ね」
「ヘソボは『へ』が外側。『ソ』が外れる、『ボ』は引き離すでさらに濁点だから強調なんだナ。つまり神社の区域から外れた遠い場所に作った墓なんだナ。事実、この古墳は保久良神社からかなり離れたところにあるんだナ」
「いやー、明解だな!素晴らしい!本当に君たちがカタカムナ人に思えてきたよ」
「えー、これでもまだだめー?先生」
「ほんならもう一丁教えたるさかいよー聞いてや!」
「ほう和泉、今度は何を教えてくれるんだ?」
「ほな逆に先生に質問!保久良神社の『保久良』の意味はわかりまっか?」
「保久良神社の『保久良』か・・・これも意味無い言葉だな。定説はないが昔の大切な宝物を収めていたところから『宝蔵』の『ほうくら』が転じて『保久良』になったと聞いているが・・・」
「それは後からの学者はんのこじつけやで、先生」
「じゃあ本当の意味はなんだ?」
「ホンマの意味は『月』や、お・つ・
き・は・ん!先生!カタカムナ語で『ホクラ』は月を意味するねん」
「本当かそれは!そうか・・・ホクラが月か・・・とすると月神社か。今まで誰も思いつかなかったなこれは・・・」
「説明するんだナ。『ホ』の文字には引き離すという意味があるんだナ。次に『ク』は逆に引き寄るという意味、最後の『ラ』は場所という意味なんだナ」
「そう、地球から寄ったり離れたりする場所と言う意味なの、わかった?」
「なんか今日は月の話題が多いわね」
摩耶がノートを取る手を休めて聞いた。
「それはそうよ、なんと言っても月は私たちのふるさとなんだから」
「せや、月に住んでるワイらにとって地球は第2のふるさとなんや」
「これで信じてもらえたかナ、先生?」
「いやはや、目から鱗とはこのことだな。感服したよ。君たちのカタカムナ語の造詣の深さはよくわかった。しかし君たちを100%信じるためには何か決定的な物象か現象が見たいな。ある意味これは日本の歴史学会の要望でもある」
「うーん、決定的な物象と現象ね・・・何がいいのかしら?」
指をあごに当てて考えるメグ。
「じゃあ先生、こうしましょう!明後日に凄いものをお見せします。それまで待ってもらえますか?」
「明後日、いったい何が見れるんだ?」
「ひ・み・つ」
「しかし、君たちも知ってのとおりぼくの父親は有名な超能力者なんだよ。小さいときから彼の超能力を見て超常現象は慣れている。例えば父親は灰皿くらいのものなら見てる前ですーっと右から左へ移動させることができる。それ以上のモノが見れればうれしいけどな」
「えー!それって結構ハードル高くないですか先生?」
摩耶が助け舟を出す。
「よし!了解、先生。それ以上のモノを見せるから期待してて!」
「よし、わかった。これは明後日が楽しみだな」
「あんたたち、わかってる?明日は突貫作業よ!お願い!」
「よっしゃ、やる気出てきたでー」
「びっくりさせてやるんだナ」
さきほどから聞こえていたコーラス部の歌声が聞こえなくなっていた。
校舎の周りも暗くなってきて、クラブが終わった生徒たちの下校する姿が窓から見える。
「よし!いい時間になった。そろそろ今日はお開きにしよう。初日でこんなに勉強できるとは思っていなかったよ。ありがとう!」
腕時計を見た中居の声に全員が帰る身支度をする。
「また明日ね」
「了解なんだナ」
「ほな先生さいなら」
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