第3話 勾玉
「メグ、その首飾りきれいねー」
「そうそう私もあなたの自己紹介のときに思ったの」
「ちょっとさわってもいい?」
メグは多くの女生徒に囲まれていた。明るく屈託のないメグが入学初日から早速クラスの人気の的になっていた。
「あ、これね。これは私の種族のシンボルなのよ」
「種族って何よー!まるで未開の原住民族みたいね」
「それよりあななたち、この首飾りってどんな形に見える?」
「え、おたまじゃくしの形」
「胎児がお母さんの中で丸まっている感じ」
「人魂の形かな」
「私は真円に見えるわ」と一人のおとなしそうな女生徒が言った。
「そうそのとおり、ピンポーン!ってあなた凄いわね。名前は何ていうの?」
「摩耶よ摩耶富士子」
「摩耶さんは何でそう見えたの」
「緑の玉と同じ形のものがぼうっと反対側に並んで真円を形成しているように見えたの」
「説明の必要なしね、パーフェクトだわ!」
「へー私にはひとつの玉にしか見えないけど・・・」
一人の女生徒が勾玉を手にとってシゲシゲと観察している。
「私たちの種族の基本的なモノの考え方は『物事は常に一対』なの。例えばね光と影、生と死、男と女、善と悪などね。この考え方は奈良時代に陰陽というかたちですでに伝えたはずだけど・・・」
「伝えたってあなたが?」
「またー!面白い冗談ね」
「でも陰陽師っていうのは聞いたことがあるわ。安陪清明だったっけ平安時代の人よねたしか」
「ということはこの玉もそういう意味があるの?」摩耶が尋ねる。
「そうこの玉はね、顕在世界と潜在世界の一対を現しているのよ。分かりやすくいうなら『見える世界と見えない世界』ね。この緑の玉は見える世界、そして同じ形をしたもうひとつの見えない玉と一対をなしているの」
「ということはその玉をひとつ買ったらもれなく見えない玉も自動的についてくるのね。なんかお得感満載!」
「でもメグたちみたいに見えなきゃ意味ないよね」
「摩耶さん、もうひとつの玉が見えるの?」
「凄いわねー」
女生徒たちは一斉に摩耶のほうを振り向く。
「でも見えると言っても完全な姿ではないわ。片側にぼーっと薄い光のように見えるだけ」
「それで十分よ!さあみんなも理解できたら真円に見えるように今日から鍛錬鍛錬!!」
「えー!!鍛錬ってどうやるの?」
「教えて!」
「私にも!」
「まあまあそうあせらずに」
明るく豪快にメグは笑った。
「じゃあ、手始めにひとつだけ教えるわ」
「難しいことはイヤよ」
「長続きすること?」
「簡単よ、毎朝起きたときに大きな声で『ありがとう』を10回唱えて。恥ずかしがらずにちゃんと声を出してね。最初はこれで十分」
「何?それ?そんな簡単なことでいいの?」
「みんなは知らないでしょうけど『ありがとう』の言葉には実は凄いパワーが込められているの。だから悪い運気を避けていい運気を呼び込むのよ」
「本当それ?」
「本当も何も私なんか毎日100回くらい言ってるわよ。だから見て!私のナイスバディとこの明るさを!」いきなりメグが立ち上がって腰に手を当てて自慢の胸を張る。
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