第2話 クラスの自己紹介
入学式のあとは、各々がそれぞれのクラスに分かれて教室内では自己紹介が始まった。
卯原の所属する1年3組は旧校舎の2階に位置する。
「私は卯原恵 う・は・ら・め・ぐ・み。今からは 『メグ』って呼び捨てで結構でーす!自宅はこの学校のすぐ近くの処女塚(おとめづか)でーす!1700年間みなさん処女塚を大事にしてくれてありがとうね!心からお礼を言います!今回はみなさんに磁場工学について教えに来ました !」
ロングヘヤーに、まるでアニメから出てきたような可愛いらしい顔立ちで、しかもスタイル抜群のメグが屈託のない表情で明るく宣言した。
何を食べればこんなに大きくなるのかというほどの胸の上には小さな緑色の勾玉の首飾りがぶら下がっている。
教室内の全員が卯原の言った内容に理解できずにポカンとしている。
おもわず担任の大野先生がメグに聞いた。
大野は見た感じはおとなしそうなタイプであるが、相当な「空手の達人」だそうで、先輩たちの言い伝えによると激怒したのちに手刀で教卓を叩き割ったというたいそうな武勇伝があるが、一見して小柄な彼の姿からは真偽のほどはわからない。
「何だ、卯原。その磁場工学ってのは?それよりそもそも学校とは学ぶところであって、決しておまえが教えるところではないぞ。それと『1700年間ありがとう!』も意味がわからんなー、お前大丈夫かここ?」頭を指差す。
「どっ」
とクラス中に笑い声が起こった。
「まあ、いいからいいから!とにかくみんなよろしくね!」
両手でみんなを制した後、メグが着席した。
胸にきらきら輝く勾玉がクラス全員の印象に残った。
次にメグの後ろの席の和泉秀が立った。
「ワイは和泉秀(いずみ しゅう)いいまんねん、名前は普通の泉やなくて上に和をつけてや。あんじょうよろしゅうな!ほな」
メグとは対照的にあっさりとした挨拶で席に着いた。
神戸ではまずお目にかかれないこてこての大阪弁にクスクス笑う生徒もいた。
「なによ秀、いやにあっさりね」
「ワレこそしゃべりすぎや!初日にどこまで正体をばらすつもりなんや?黙って聞いとったらホンマひやひやしたがな」
「いいのいいの、全部本当のことだから!それにいずれわかることだし」
「聞いてるこっちはたいがい寿命が縮んだわ、ホンマ」
「縮むって5000年ぐらい?」
「アホ、おまはん『かぐや姫』のときも言い過ぎた挙句に正体バラしてワヤなことになったん忘れたんか?」
「完全に忘れたわ!だってもう平安時代の話じゃない。あ、次は星の番ね」
「ぼくは保倉星(ほくら せい)なんだナ、星と書いて『せい』と読むんだナ。ぼくは先ほどの恵(メグ)の御守係を長いことやってきましたナ。まあ要するに彼女とは古いつきあいなんだナ。趣味は電子・物理工学なんだナ」
星は和泉秀のほうを見てにっこりと笑って腰を下ろした。
「あ、あのアホ抜け駆けしやがって、ぎょうさんしゃべりおってからに!おれも同じメグの御守係やぞ!遠慮して損したがな!」
「あはは!あんたたち相変わらずね。でもこうして3人揃っての任務って久しぶりね。まあ今回は21世紀の高校生っていう設定だけどなんとなく楽しめそうね」
「あんさんなあ、ちょっとはあんさんを補佐するこっちの身にもなってみい」
「まあまあ、怒らない怒らない。細かいこと言う男は嫌われるよ」
「こらあ、そこ!いったい何をゴジャゴジャ話しをしてるんや?」
大野の叱責が飛んだ。
「ごめんごめん、久しぶりの再会だったんでつい・・」
「『久しぶりの再会?』同じ中学出身かなんか知らんが、他の生徒の自己紹介も黙ってまじめに聞け!」
さっと構えた大野の手刀がメグの頭にコツンと当たった。
「いてー!先生暴力反対!」
「当ててない、寸止めだ」
「じゃあ寸止めも反対―!!」
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