第190話 自社株評価 6
俺は大塚社長に電話して、S工業に行ってきて社長に面会した事と、必要書類を受け取って本社株式評価部に郵送したことを伝えた。
そのついでに希望売却価格をさりげなく聞いた。
俺
「社長、S工業株ですが大体いくらだったら売却してもいいと思ってるんですか?」
大塚
「そうだな・・・元から無かったものだから、欲を掻いてはいけないが、1000万円以上で売れたら嬉しいな」
俺
「そうですね。お父様が投資した20社のうちの唯一生き残った一社ですからね。何とかそれ以上で売れるように話がつけるようにします」
大塚
「わかりました、是非ともよろしくお願いします。もちろん買い取っていただいたお金は全部太田さんのところに預けますのでまた良い株を教えてください」
1週間後
S工業の経理部長から電話があった。
部長
「太田さん、大塚社長の配当金の計算ができました」
俺
「いくらになりましたか?」
部長
「我が社は30年間、10円配当を続けてきましたので10円× 10,000株× 30年= 300万円になります」
俺
「わかりました。ありがとうございます、大塚社長に伝えます」
まずは300万円の配当が出たので、大塚社長の売却希望金額1000万円には残り700万円である。
2週間後
本社から待ちに待った自社株評価の金額が出てきた。
前回も言った通り、「慎重案」と「将来重視案」2通りのやり方で株式の評価をしている。
「頼むからいい金額でありますように」
と俺は願いながら茶色い封筒をゆっくりと開いた。
自分のことではないが、何か受験後の合格発表通知を見るような気持ちであった。
結果発表
1枚目の株式評価額は1株、15000円と書かれてあった。
大塚社長の持ち株数は1万株だから単純計算で1億5000万円になる!
しかも表の下には「慎重案」と書かれていた。
2枚目の株式評価は2万2000円と書かれてあった!
この価格だと当然2億2000万円になる。
大塚社長、大ラッキー!
確変モードだ。
※
俺はこの金額をS工業の社長に電話で伝えた。
社長
「いやあ、我が社の株価は凄い金額になるんですね」
俺
「そうですね。やはり業績が良いと言うこととかなり広大な土地をお持ちと言う事の評価になると思います。もし上場した場合はこの中間の値段が最初の発値になるかと思います」
社長
「わかりました。じゃあこの値段を参考にして先方には話しをしてほしいのですが、にわかに1億円以上の買取による出費はわが社のキャッシュフローとしてはちょっとしんどいところがあるのでできるだけ安く交渉していただければありがたいです」
俺
「わかりました。どのあたりが出せる金額の上限でしょうか?」
社長
「そうだな、できたら7000万円位で話を何とかまとめてくれたらありがたいんだが」
俺
「分りました、大丈夫です。任せてください!」
社長
「無理を言いますが何とかお願いします」
大塚社長が、1000万円以上で売れれば「御の字」と言うこと知っている俺は電話を置いた。
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