第165話 決戦翌日

戦いは終わった。


翌日俺は、病院へ行き初めてゆっくり次男の顔を眺めることができた。


しかし俺は奴らの「報復」が心配になって清田さんに電話して聞いた。


「もし中本が頭にきたら俺たちに逆恨みで襲ってくるんじゃないのか?」


する清田さんはこういった。

「ヤクザの世界は考え方が全く逆ででんねん」


「逆と言いますと?」


「この世界では、一旦話がついたらもうそこで終わりや」


「本当に終わりて考えていいんですか?」


「例えば、仮に関係のない酔っ払いが街中で太田さんを殴ったとする。しかしそれも『報復』だと疑われるのを奴らは恐れるので、むしろ太田さんを見守るようになります」


そんなものなのか?

信じていいんだろうなぁ。


まぁいずれにしても、その後円満解決した俺たちに中本達が接近することはなかった。


田主社長に聞くと、料亭への嫌がらせもピタッと止まったらしい。


めでたし、めでたし。


さらに俺は、電話で清田さんがいくら奴らから回収したかを聞いた。


「あいつらには1億円払わせましたわ」

との返事。


「たった5分間の労働?で1億円なら自給にして12億円のバイトか・・・俺たち証券マンよりいい商売だな」

と俺は思った。



俺はその日を境に、田主社長とは仕事以外では距離を置くように極力務めた。


まぁ付き合ってもろくなことがないし、いらない火の粉が降りかかってくるだけだと判断したのだ。


この騒動の後、俺は辞表を書き外資系証券会社を辞めた。


結局俺は、1986年に四大証券に入社して、1993年に外資系証券会社を退社した。


つまりちょうどバブルが始まる年に入社してバブルが終わり退社した格好になったのである。


そして手元にあったお金を資本金にして、俺は事業を立ち上げた。


大阪の兎我野町にある有名なジャズバーの社長のはからいで同じビル内に事務所を安く(電気代だけ)借りさせていただいたのだ。



ここまで長らく聞いていただいた俺の証券マン生活は終わるが、まだ正直言って書き足りないことがある。


続きはいろいろ思い出した四大証券時代の「変わった人」や「奇行」を続きで語ることにする。


乞う、ご期待!

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