第159話 ヤクザの家
その日から2日間、俺は十三のラブホテルで過ごすことになる。
その間清田さんは作戦を考え、手を打っていたことと思う。
飯を食べる時は清田さんから指示された店に行き、飲みに行く時は行きつけのバーに行った。
支払いはどこでも「話は聞いてますから、お代は結構です」と言われた。
ナイス気配り!
そして3日目の夕方、約束通り清田さんから電話が入った。
「太田はん、手筈は整いましたさかい即死作戦を説明するから今から家に来てほしい。若い奴をそっちに行かせるから」と電話は切れた。
しばらく待っていると、ラブホテルの部屋に若い兄ちゃんが入ってきて
「お疲れ様です。兄貴の家まで案内します」
と言うことで俺は彼について行った。
俺はヤクザの家に入るのは生まれて初めてだった。
まず最初に家のドアや窓に分厚いシャッターがついているのが目に入った。
「このシャッターはなんですか?」
俺が聞くと
「ああ、これか?敵が来たときのために装備や。籠城戦の時にの備えやな」
「なるほどヤクザともなれば籠城まで考えて家を建てるのか」と妙に関した。
「太田はん、今から作戦を説明する」
「よろしくお願いします」
「まず、決行は明日の夜や。6時に大阪のロイヤルホテルにあいつらを呼びつけてくれ。田主はんいう人も呼んでおいてや」
「明日の夜6時に、大阪ロイヤルホテルですね」
「せや、ほんで相手が『ワー』と来るから、こっちは『ガー』と行くさかい、ほんなもん一瞬で即死や」
長く時間がかかると思っていた作戦会議であったが30秒で説明が終わった。
やたら擬音が多い説明だが本当に大丈夫か?
「わかりました。田主社長に伝えますから少し電話を借ります」
「よっしゃ」
「田主社長ですか?明日の6時に大阪ロイヤルホテルに中本たちを『契約書の件で』と言って呼びつけてください」
「呼びつけて中本たちをどない納得させまんねん。あいつらめちゃくちゃ怒ってまっせ」
(お前が撒いた種だろうが!)
「とにかくパワーにはパワーで行きます。一瞬で即死させます」
(あ、俺も「即死」を使い始めた)
「ほんまでっか?」
(俺が、聞きたい)
「本当です。信じてください」
(本当かな?)
「わかりました。ほな明日の夜、6時と言うことで」
俺は電話を切った。
「よっしゃ、作戦会議も終わったさかい酒や酒!」
その後は若い衆も入って夕食兼飲み会となった。
鯛の御頭付きが出てきた。
なんでも「明日即死させることができるからめでタイ」と言うことらしい。
本当にこんなノリでいいのか?
しかし悲しいかな、今の俺はこれにかけるしかなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます