第88話 対顧客用学習
証券マンはとにかく毎日のようにいろんな人に会うのが仕事であるであるから初めて会った人にも話題を切らさないようにあらかじめ下記のような知識を仕込んでいた。
これは今でも大いに役立っている。
まずは相手の出身地を聞く。
その際に全く出身地のことを知らないと話にもならないので47都道府県の県庁所在地はもちろんそれ以外の大きな都市をそれぞれ3つ覚える。
実際に過去に行ったことがあればさらにいい、「○○の飯がうまかったです」などとやれば話が盛り上がる。
次にその都道府県出身の有名人やスポーツ選手、芸能人、特産品、歴史その地の有名な話題などを 3つに分けて記憶する
3つと言うのは性別と年齢で分ける。
まず大まかに男性と女性で話題を区別して覚える。
何故かと言うと同じ有名人であっても女性と男性では興味の論点が違うからである。
次に男性の方をさらに2つに分ける戦中派と戦後生まれである。
この微妙な違いによって興味のある論点が全く変わってくる。
例えば相手の出身が島根県と聞くと
松江市 出雲市 浜田市
竹下登首相 若槻礼次郎 小泉八雲 大国主 出雲阿国 竹内まりあ
隠岐島 宍道湖 竹島問題 国引き神話 石見銀山 出雲大社 足立美術館
しじみ カニ 温泉 神有月 オロチ退治 一畑電鉄 メガネの三城
これくらいがすらすら出てくれば満点である。
さらにこれを相手の性別、年齢に分けて小出しするわけである。
戦前の人に竹内まりあと言っても通用しないし女性に若槻礼次郎と言っても無理。
この話題を出すと相手は「自分の郷里をよく知ってい褒めてくれる」となって会話がスムーズに行く。
しかも47覚えるだけでいいから簡単な作業である。
4000以上ある四季報に載っている企業を覚えることを思えばなんてことはない。
このように証券マンは47都道府県の知識を3つのカテゴリーに分けて記憶しているのでどこ出身の人間にであってもとっさに話題に困る事は無いように努めていた。
これは相手に対しての最低の礼儀である。
次にカラオケである。
接待でカラオケに行った場合はその接待する人間の年齢、性別によって歌う曲を変えなければいけない。
当然当時我々は若かったのでサザンオールスターズやユーミンなどの歌を好んで歌っていたがこれはあくまでもプライベートで歌うためのものである。
常に客と歌うことを想定して「軍歌からアニメまで」すべての曲に通じていなければならなかった。
そして「おい、お前歌え!」となった場合にはその顧客の一番好きそうな選曲をするのであった。
演歌や民謡なんでもござれ状態をキープするために毎日のようにカラオケに行っては鍛錬したものである。
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