第84話 医者攻略作戦3
「先生、今月もまた株で1000万円ほど利益出ましたね。よかったですね」
「ああ、いつまで株は上がり続けるのかな?一回利益確定しておくか?」
「じゃあ利益分はいつものように無記名のワリサイにしておきます」
「そうだな、ワリサイにして出庫して自宅に持ってきてくれ」
「わかりました。ありがとうございます」
お医者さんは相続に関する敏感であることは既に述べた。
ここでは彼らなニーズを叶えてくれる「無記名債券」を紹介する。
信じられないことであるが当時は政府系銀行が発行する債券はすべて無記名であった。
例えば
日本興業銀行が発行する
「ワリコー」
日本長期信用銀行が発行する
「ワリチヨー」
日本債券銀行が発行する
「ワリサイ」
など全て無記名で購入することができた。
「無記名債券」とは何を意味するかと言うと額面が100万円で誰の名義でもなく購入できる債券のことである。
これを当時の政府や政治家たちは普通のことのように黙認していたのである。
というか、賄賂や裏金作りにその政治家自身が一番利用していたと思う。
「無記名債券」はわかりやすく言えばまさに「現金」である。
普段我々が使う「現金」は当然無記名であるから名義がないために誰のものかはわからない。
すなわち現在その現金を手にしている人間のものである。
これと同じことで要は額面100万円札と考えればいい。
現在はマネーロンダリングや出所の分からない金の追求に政府当局は躍起になっているのでこんな夢のような代物は存在しないものが当時は普通に存在していた。
であるから株式売買の収益を無記名の債券に変えて出庫して自宅に保管するということがよく行なわれていた。
目的は子供たちへの財産贈与である。
名義に関してもっと言えば銀行の口座を開設する際にあたっても当時はユルユルであった。
別に実在しない名前で口座を開くことは普通にできたし郵便局なんて本当に犬の名前でも書けば口座が開けるような状態であった。
今から考えると日本中が夢のような節税天国であった。
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