第74話 新人が覚えなければならない手話

証券マンが次に覚えなければならないのは手話である。


手話と言うが耳の聞こえない方の手話ではない。


魚のセリや株式取引所でよくやっている大きく手を振って銘柄や売り買いを相手に伝えるあれである。


なぜわざわざ手で伝えるかと言うと証券取引所と言うところは普段から大声で怒鳴りあっているので言葉でやりとりしていたら到底聞こえないからである。


余談ではあるがここで働く人たちは「場立ち」と呼ばれていて体育会系のアメフトや柔道、ラグビーなどの経験者が採用されていた。


これは何故かと言うと商いが殺到した場合に人を押しのけていち早く「買い」や「売り」の伝票を持っていく必要があるからである。


すなわち人気銘柄を誰よりも早く買う場合には突進できるガタイのでかい人間の方が有利だと言う理由である。


さて手話の説明に戻る


まず数字であるが


1は同じ、人差し指だけ。

2は同じ 、人差し指と中指。

3は特別、中指と薬指と小指。

4は同じ、親指以外立てる。

5は同じ、グーチョキパーのパーである。

6は特別、親指だけ立てる。

7は特別、親指と人差し指。

8は特別、7に中指を加える

9は特別、親指を立てて先端に人差し指の先を当てる

10は特別、オーケーサインをする。


次は売りと買い。


手のひらを前に向けると「売り」の意味。

逆に手のひらを顔のほうに向けると「買い」の意味。


次に株数のゼスチャー


例えば1本指を立てて手首だけ振れば1000株の意味。


もう少し顔の面積の幅で振れば 10000株の意味。


さらに大きく腕の長さで振れば100,000株


さらに大きく腕の左腕の端から右腕の端までぐらいに振れば1,000,000株の意味。


滅多にないが10000000株の時は腕を振りながら走り回る。


これらのゼスチャーを遠いところからでも察知して売り買いの判断を瞬時にするのである。


次に銘柄の意味を説明する。


NTT株の場合は人差し指でくるくるっとNTTのマークを書く。


日本郵船は船でオールを漕ぐ真似をする。


日立は4本指を立てて頭の後ろから上にあげる。4が立つから。(江戸つ子は「したち」と発音する)


明治乳業はアカンベーをして両手でオッパイを持ち上げる。


雪印乳業は人差し指でそらを指差して両手でオッパイを持ち上げる。


このように証券会社の裏にはいろんなルールがあって今書いていても非常に懐かしい。

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