第34話 本間主催のパーティー
それぞれが別々の部署で仕事をするようになって約4ヵ月後、本間の提案で9名全員が一堂に集まる野外パーティーを本間宅で企画した。
各人の秘書には有給休暇を与えて自宅に帰らせて久しぶりの「水入らず」の日本人同窓会である。
場所はそもそもが隣同士なので今までにも距離的に集まるのは難しいことはなかったが全員の仕事と部署が別なので時間が合わなかっただけである。
本間の屋敷の広々とした中庭に9人全員が揃ったのは夕方6時くらいであった。
空には綺麗な満月が登っている。
芝生の上には大きなテーブルに豪勢な料理と酒が並んでおり、傍らではコックが大きな音を立てながら今日の日のためにわざわざ日本から取り寄せた最高級和牛肉を焼いている。
鉄板の上では「ジュージュー」と言う音が聞こえている。
傍では大きいスピーカーが備え付けてあり日本のポップミュージックが流れていた。
全員の鼻には高級な肉が焼ける香ばしい、いい匂いが漂ってきた。
集まった9人は例外なく全員が南国の国の太陽に焼かれてのであろう日焼けしていた。
「まいど、ひさしぶり!」
「おう、元気か?」
「ぼちぼちでんなあ」
「坊主、ちょっと肥えたんとちゃうか?」
「そういえば森のオヤジ、年甲斐もなく毎日秘書とやりまくってるそうやなあ。」
「誰や!そないな品のない噂流しとるんは?まあ事実やけどな」
「「あははは」」
久しぶりに一堂に会した9名はガーデンパーテーの中、赤ワインと和牛料理に舌鼓を打ちながらくだけた話がはずんだ。
「そっちはどないや、仕事は?」
「いや、とにかくどこもかしこもすごい設備ですねえ、日本顔負けだ」
「こちらの研究施設も世界的水準だぞ」
「病院の設備もピカイチやで」
それぞれの会話がはずむ中で本間が全員に聞こえるような大声で話し出した。
「ところでみんな、今の生活をどない思う?今日は秘書もおらんから遠慮なく忌憚のない意見をいってくれ。たぶんみんなも分かっていると思うが今日のパーティーの目的は俺たちの今後の意思の確認や」
ホスト役の本間が仕切る。
「そうやな4カ月間働いたがまず、やっこさんたちの真意を知る事が先決やろな」
谷が答える。
「その前に全員が今この国でやってる仕事内容を各自発表しようじゃないか」
桐生が提案した。
「そうだな。みんなの仕事が何をやってるかっていうのが一切わからないままだったら作戦の立てようもないからな」
富士が促す。
「では俺から言うぞ。俺は現在で陸軍士官訓練学校で夜間における対人戦闘のやり方を教えている。約4カ月間仕込んだが俺の作戦に従事できる位の腕前にはなった」
本間から語り出した。
その後それぞれ8人が自分の今やってる仕事と4カ月間の達成したことなどを仲間に公開した。
桐生
「原子力発電所建設と国立大学での講義」
相原
「建築大学での講義とエンケラドス大橋の建設設計担当」
北川
「新しい海底油田探索とこの国の地質学調査、エンケラドス大橋の岩盤調査」
森
「陸軍の無反動銃の研究開発と今は内緒だがどえらい開発(戦艦武蔵の事)」
前島
「国立大学医学部での講義と国立薬品研究所内においてエイズの特効薬の研究開発」
東野
「国立電算室内においての次世代の新しいOSの開発と国家電気通信大学での講義」
富士
「国立大学物理学部での講義とダイモス博士との共同研究による永久機関の開発」
谷
「大蔵省との共同でのオフショア金融センターの設立準備、日本の銀行に低利融資を実行する逆ODA」
「へー、皆さんすごいことやってるんですね。改めて皆さんを見直しました」
1番歳の若い北川が感心したように言った。
「そういう坊主もたいしたもんやな、油田探索とは」
「私は長年の夢のエイズの特効薬の開発を無制限の予算でやっていいと言われたから非常にやりがいがあると思ってる」
前島が忌憚のない意見を言う。
「俺も同意見だな。日本では馬鹿にされ続けてきた永久機関の開発を国家予算でできるなんて日本では到底考えられないことだ」
富士が同意した。
「しかし、連中は口ではうまい事言っとるが、本当にわれわれに施設や研究を任すつもりがあるんやろか?」
「単なる成金趣味じゃあないのか?たしかにオイルマネーで潤うヒペリオンの国力とわれわれの頭脳があれば第2の日本がつくれるが・・・」
和牛の後に次々に運ばれてくるシーフード料理を頬張りながら全員は各々の意見を交換した。
「まあここは一回だまされたと思って一肌脱ぐか、あくまで徹底坑戦するかやな。」
約2時間ほどの 9人の意見交換の中で2つの意見に大体分かれたようだ。
1 自分が得意とする、またはしたいと思っていた研究を無尽蔵の予算でやらせてもらってるから何も否定しなくてもいいんじゃないかと言う意見。
2 そもそもが誘拐のようにして連れてこられた中で仕事や研究開発をさせられているので心から信頼できないという意見。
「話が変わるが、われわれの扱いはともかくウラノス・ホテルに泊まっているあとの200名が心配やわ」
「いやいや、あの連中も結構ええ暮らしを満喫しているらしいで。なんせ超一流ホテルに滞在やから、仕事は無いわ三食昼寝付きだわで、中には一生ここにいたい奴もでてきたらしいわ」
「それもまぁ無理のない話だな」
「しかし我々が謀叛を起こしたら奴らの担保価値がなくなることになり全員が帰国させられるな」
「まぁそれは間違いないだろうな」
「彼らの処遇のことを考えても僕は今の夢のような生活に満足している」
メンバーの中で1番年が若く秘書テティスを連れて毎晩のように遊びまわっている北川が酒が回ってきたのか正直な意見を言った。
「それはまあ、西成時代の食うや食わずの生活を考えたら夢のようである事は確かやな。おれも橋の建設を無制限の予算でやってもいいと言われて夢のような気持ちであるのは同じだ」
相原が同意する。
全員の意見をずっと腕を組んだまま黙って聞いていた本間は庭のBGMのボリュームをいきなり大きくしたあと。
「これで盗聴器があっても聞こえへんやろ。バカヤロウ、いい加減に目さまさんかえ!オレはとにかく戦うで!」とアルコールの匂いをさせながら叫んだ。
「どうだ?ほかのみんなは・・・」と桐生
「「・・・」」
「反対はないんだな、という事はこれからは徹底交戦でいくぞ、いいな?」
本間がまとめるように宣言した。
北川が一瞬目をふせたのに気が付いた者はいなかった。
「よっしゃ話は決まりだ。作戦は俺が立案する。今からモールスの暗号表を配るから各人目をとおしてや、なあに皆さん方の脳味噌なら大丈夫や。これからは秘密の通信事項はこの暗号で行なうようにな。行動をおこすまで基本的に徹底してヒツジの皮をかぶっとく事や。以上!」
本間はみんなの意志を確認したのち、モールスの覚え方を書いた紙を配り上機嫌で言った。
簡易モールス表
A ・- アホー
B -・・・ ビートルズ
C -・-・ シーブリーズ
D -・・ どーとく(道徳)
E ・ え(絵)
F ・・-・ フルオート
G --・ ゴーカート
H ・・・・ ハンカチ
I ・・ アイ
J ・--- じえーほーほー(自衛方法)
K -・- けーしちょー(警視庁)
L ・-・・ レディー好き
M -- メーター
N -・ ノート
O --- おーよーほー(応用法)
P ・--・ プレーボール
Q --・- きゅーきゅーしきゅー(救急至急)
R ・-・ りすーか(理数科)
S ・・・ スミレ
T - ティー
U ・・- うるせー
V ・・・- ビクトリー
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