第26話 国王とフェーペ

日本から来たエリートたちがヒぺリオン王国に来てから約1ヶ月が経った。

王宮の会議室内


「どうだフェーペ、その後の日本のエリートたちの働きは?だいぶんわが国に馴染んできておるか?」


「は、陛下。ご安心下さいませ。彼らに付けている秘書からの報告によると今のところ9名全員が改心したようで、それぞれの研究所や部署でかなりの働きをしております」


「ほう・・・それは朗報だな」


「はい、しかしなぜあのクラスの優秀な人材を放っておいたのか、日本政府や各学会の判断を疑うほどです」


「ほう・・・彼らはそれほどのレベルなのか?」


「はい具体的に申し上げますと。おそらく、原子力においては3年後には世界中からわが国に技術供与の申し出があるはずですし、橋梁関係の建設技術に関しては世界的水準に達するのにそう時間はかかりません」


「そうか、原子力はこれからのエネルギーだから。わが国もいつまでも海底油田と天然ガスに頼るのは危険だから非常に意味のあることだ。その他はどうだ?」


「はい地質学、特に地震に関しては北川という青年がこの国に入った瞬間にすでに世界一でしょう」


「なんと・・凄いものだな」


「物理学においては例えて言えばアインシュタインがわが国やってきたと考えてよいでしょう。富士という男の物理理論は卓抜しているとヒペリオン国立大学のダイモス博士は常々言っております」


「あのダイモスがそこまで言うとは本物だな。しかしその和製アインシュタイン博士はなぜ日本の学会を去ったのだ?」


「彼の愛弟子が例のインコ原理教団の教祖になってしまい『東京・大阪地下鉄サリン事件』の首謀者だったそうです。あの事件後彼は相当ショックだったそうです。非常にまじめな部下だったそうですが『宗教というものはそこまで人間を変えるものか・・・』と嘆いておりました」


「1600名もの被害者を出したあの事件か・・・悲惨な事件であったのう。それはそうと一人元気のいいのがいたな、名前を何といったか?」


「テリー本間の事でしょう?彼は使えますよ、『日本のランボー』といえば国王もご存じの事と思いますが。アフガンではわずか彼一人に1個中隊100名の兵がひっかき回されたのですから。しかししょせんは元傭兵です、つまり金によってどの軍にも所属してきた奴なので多分ポリシーは持ち合わせていないでしょう」


「そうか・・・現在は何をしている?」


「はい、毎日陸軍訓練所で特殊部隊の戦闘教育をしております。兵士の多くも彼を慕って従順に学んでいるそうです」


「その他のモノたちはどうか?」


「はい、ドクター森が来たことによってわが国の医療水準はアジアでトップクラスです。また東野博士のコンピュータOS理論はサイクロン・ソフト社に全てを盗まれましたが『ドアーズ95以上のOSを作る』と言っていますので楽しみです。元大蔵事務次官のミスター谷は私と同じ官僚なのでいつもご一緒させていただいております。彼を通じて今後も日本との財政面のパイプがより深くなります」


「そうか・・・しかしいずれにしても不遇な連中たちばかりだ、彼らの能力の高さは分かったが肝心なわが国に対しての忠誠心のほうはどうだ?」


「わたしもそれが一番心配だったんですが、ご安心下さい、日を重ねるに従って従順になってきてるようですから。まあ彼らも人間ですので非常識な報酬と待遇を与えてる限りは時間の問題でしょう」


「よしわかった、とにかく時間と金はいくらかかってもよいから彼らをうまく使って強い国家に仕立て上げてくれるよう、よろしく頼む」


「心得ております。」

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