第20話 物理学博士 富士静也2
秘書のアルファの誘導で富士はダイモス博士と用意された会議室に入って行った。
会議室の正面には国王ヤペトウス2世の肖像画が大きく掲げてあった。
その下には 若かりし日のダイモス博士があのアインシュタインと写ってる写真があった。
大きな会議室内には白衣を着た学者と思わしき人物が先に座っていた。
「さあ、ミスター富士どうぞこちらへ。紹介します、ここにいるのが私の愛弟子に当たるフォボスです。彼も優秀な物理学者です」
「初めましてフォボスです」
「フォボス君か、富士です。よろしくお願いします」
手を差し出す富士にフォボスは子供のサッカー選手が憧れのスーパースターの選手に会ったような羨望の眼差しで握手をした。
「ははは、フォボスはミスター富士のことを心から崇拝している」
「はい、もちろんあなたの書籍は全部読みましたしあなたのやってきたこと、考え方はみんな熟知しているつもりです。こんなに近くでご本人にお会いできるなんて夢のようです!」
「それは光栄です」
「おいフォボスや、そろそろ説明を始めてくれ」
正面を見ると先ほどの体育館の中のにあったような大きな永久機関の装置の模型が机の上にあった。
その後ろにホワイトボードがあり説明のためにフォボスが立っている。
「いや、なんか釈迦に説法みたいで本当に緊張してしまいます」
フォボスが頭を掻きながら壇上にたった。
「愛弟子か・・・いいものだな」
隣に座ったアルファが富士は思わずつぶやいたその言葉を聞き逃さなかった。
「ははは、それもまたよい勉強じゃ」
快活にダイモス博士が笑い飛ばす。
「はいわかりました。ではミスター富士、僭越ながら私の方から永久機関の説明をさせていただきます」
「よろしく頼むよ」
「当然のことながら永久機関は二つに分けられます。第一種永久機関と第二種永久機関です」
とホワイトボードにフォボスは書いた。
「外部からのエネルギーを一切もらわないのが第一種永久機関。そして磁力などのなんらかの外部からのエネルギーを受けるのが第二種永久機関です」
「これはどちらのタイプかな?」
と富士は模型を指して尋ねた。
「我々のこのプロトタイプは電磁力を用いての第二種永久機関と考えております。ここからは簡単に図に書いて説明します」
フォボスがホワイトボードに円を描いた。
「あのドーナツのようなチューブの中を50 K gの球体が現在永久に回り続けております」
「そのようだな」
富士が頷く。
「当然エネルギー保存の法則に従って時計の針で言うと12時の方向からスタートした玉はそのままぐるっと回って6時のあたり一番速度が増します。そしてそのまま上がっていきますが12時のところまでは決して戻ってきません。これは世界一般常識の話です」
「そうだな、だいたいは時計の針で言えば11時のところでその玉は上昇を止めて逆に落ちてくるはずだ」
と富士は冷静に答えた。
「そうです12時からスタートした球が元の位置に帰ってこないわけには空気抵抗、摩擦による熱変化、それと音変化です。この3つにエネルギーが変わってしまうので12時のところまで戻ってくることはまずありません」
「しかし実際はあのように回っている。原理を教えてほしい」
ゴウゴウと音のする方向を指差す富士。
「はい、そこで我々が考えたのは11時から 12時まで引き上げるには何が必要かということでした」
「それが先ほど言った電磁石か?」
「そうです。もちろんあのチューブの中は真空にしてありますので空気抵抗はゼロです。それで12時から降りていった球は摩擦を伴いながら6時の方向まで一旦下がります。そこまでで我々は電気に変えること思いついたのです」
「何、あえてベアリングとかを使わず抵抗値を増やしたと言うのか?」
「そうです。あえてそこで抵抗をかけて電気を発電することを優先させたのです」
「なるほど逆転の発想だな」
「そしてそのエネルギーで得た電気でもって正確には9時の方向から12時まで球を持っていくための電磁石を作動させています」
「リニアモーターカーが前に進む原理と同じだな」
「そうです。球体を上に引き上げるために磁力を発生するための装置を上に設けました。最終的には12時近くに永久磁石が近づいてきて球を元の位置まで引き上げます。」
「永久磁石も使うのか?」
「はい、球が12時に戻ると仕事を終えた永久磁石は離れるようになっています」
「なるほどな。簡単に言うがここまでの調整はなかなか難しかっただろう」
「はい、たったこれだけのことをクリアするのに3年半かかりました」
「だろうな。俺も永久機関にはトライしたことがあるからその苦労はよく分かっている。しかしよくぞエネルギーは出せないにしても重たい球を12時まで持っていけたと感心している」
「そう褒めていただければこれまでの3年半の苦労は報われます」
「おそらくここからエネルギーを取り出すために我々はさらなる試練が立ちはだかると思います」
「そうだな自分自身が独立して動いたとしてもただそれだけの話だ」
「はい、見世物小屋には展示できますがそれまでのことです」
「課題はそこから新たにエネルギーを取り出せるかだが、おそらく3年以上の努力が必要になってくると俺は思っている」
「そこでミスター富士、あなたの反重力理論を我々の永久機関に融合したいのです」
フォボスの説明が終わったようだ。
「なるほど・・・」
「あなたの反重力理論の学説が日本物理学会でどういう扱いを受けたかというのは我々同じ物理学者としてよく知っています。またそれを気の毒に思います。しかしなんとか永久機関の完成のために手を貸してはくれまいか」
ダイモス博士が立ち上がり改めて富士に懇願した。
「反重力装置・・・」
富士は俯いた。
そして彼はかつての忌まわしい事件を思い出していた。
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