第8話 宮殿内 来賓室
衛兵の案内でゆっくりと赤い絨毯で敷き詰められた部屋に入らされて真ん中の大きな丸テーブルに9名全員が強制的に座らされた。
巨大な部屋の正面の壁にはヒペリオン王国の南十字星を象ったマリンブルーの国旗と日本の国旗、日の丸が全員の目に飛び込んできた。
「なんか、異国で日の丸を見るとほっとするな・・・」相原がつぶやいた。
「ほんまやな、いつもは嫌っていた日本国旗が今日は一段と頼もしく見えるな」
部屋の中の配置は壇上に宝石が散りばめられた玉座があり、一段下がったところに9人が座る大理石でできた大きな丸いテーブルと椅子があった。
それにしても見れば見るほど豪勢な造りの部屋である。
吊り下げられたシャンデリアひとつとっても何千万もするようなものであった。
しばらくすると黒い正装をした執事が全員の前に湯気のたったコーヒーを礼儀正しく置いていく。
しかしおのおのの背後にはアーマライト16の銃をかまえた兵士が一人ずつ付いていた。
まだ100%信用されていない証である。
全員「今から一体何が始まるのか?」と憮然とした表情でこれから行われることを静かに待った。
「みなさま長らくお待たせいたしました。国王陛下さまが、たった今お越しになられました」ドアを開ける衛兵が大きな声で伝えた。
「みなさんは国賓ですからリラックスして座っていて下さい。わたしの方からみなさんをご紹介します。」ドアから入ってきたフェーペがそう言った。
その直後ゆっくり、国王ヤペトウス2世が入ってきて壇上の玉座に腰を下ろした。
そして両手を差し出しながら大きな声で挨拶をした。
「皆さんようこそわがヒペリオン王国へ!わたしが、国王ヤペトウス2世です。日本政府には先の戦争以来大変感謝しております。心から皆さんを歓迎いたします。しかし報告によると船の上ではだいぶん準備運動をされてきたようですな。結構結構、その有り余る元気をぜひわが国の発展のために今後はお使いください。おい、フェーペ大臣みなさんを紹介してくれ」
「はい、それでは私の方からご紹介させていただきます。申し訳ございませんがお名前を読み上げたらご起立をお願いいたします。むかって一番右から・・・・」
桐生 亮 45才 東京大卒 元原子力開発委員長
前島 茂 43才 慶応医学部卒 日本で三指にはいる脳外科医
相原 秀樹 39才 ハーバード大卒 世界建築大賞 5回受賞
本間 照彦 40才 防衛大卒 元傭兵 「日本のランボー」と呼ばれ湾岸戦争で活躍
東野 進 40才 九州大卒 コンピューター工学の第一人者
谷 省吾 50才 東京大卒 元大蔵事務次官
森 四郎 52才 東工大卒 元三葉重工兵器部長
北川 龍 38才 京大卒 元地震研究所所長 地学博士
富士 静也 41才 スタンフォード大卒 物理学博士 相対性理論を理解
リストの紙を読み上げながら順番にフェーペが9人のヒストリーを紹介していく。
従順に呼ばれると起立するエリートたち。
約10分ほどのあいだに9名全員の紹介が終わった。
「すばらしい!実にすばらしい経歴をお持ちの方たちだ!今後のみなさんのご協力を心から感謝いたします。今は到着したばかりなのでお疲れでしょうからまずは一度家に帰って旅装を解いてください。今夜はみなさんの歓迎パーティをご用意してありますのでぜひご参加ください」
そう言って玉座から立ち上がった国王はゆっくりと退席していった。
衛兵が開けるドアから出ていく国王。
「家に帰って?」
「旅装を解く?」
「歓迎パーティ?」
国王の姿が見えなくなって、ざわざわと会話を始めたエリートたちにフェーペが説明する。
「今日からみなさんには最恵国待遇としてヒペリオンのビバリーヒルズとも呼ばれる豪邸に住んでいただきます。もちろんそれぞれに美人秘書もおつけしますので、こころおきなくこれからの仕事に励んで下さい。それではまた今晩お会いしましょう」
フェーペの退席したあと背後の衛兵に案内されて来賓室を退室した9人はまるで狐につままれたような顔をして廊下を歩いている。
「なんや、あのひげじじい。勝手にワシらを仲間みたいなこと言いおってから」
「おい、殺されるどころか最恵国待遇やで。カン狂うなあ」
「美人秘書やて」
「まあとにかく命は助かったんやし身分も保障された、ゆっくり作戦でも練ろうや」本間が言う。
コソコソと宮殿の長い廊下を歩きながらの会話であった。
「チチチチ」と宮殿の庭を原色の派手な鳥が飛び去った。
一行はさきほど下車した正面玄関でもう一度待機していた黒塗りのリムジンに乗せられる。
一行を乗せたリムジンは丘の上にある宮殿の門を出て港とは反対側の高台に向かって走った。
宮殿から約10分ほど走った所に白亜の豪邸が立ち並ぶ区域が見えてきた。
あきらかに今迄車から見えていた住宅街とは道幅や衛生状況が格段に違う区域である。
フェーペがさきほど説明したヒペリオンのビバリーヒルズに到着したようである。
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