海軍大尉 松永市郎から若い人へ。
胡志明(ホーチミン)
第1話 はじめに
この本は1998年から2004年にかけて筆者が当時海軍大尉であった松永市郎氏本人から聞いた話を収録したビデオテープから書き起こしたものです。
戦争末期フィリピンからパラオへの軍需物資輸送中にアメリカの潜水艦かの雷撃を受けて、搭乗していた巡洋艦「名取」は沈没。
その後生き残った180名に残されたのは木製のカッター3隻のみ。
通信機器や位置を特定する機器はおろか、水と食料も不十分な中で全員が今までに得た知識や能力を最大限に発揮して600キロ離れたフィリピンの町に自力でカッターを昼夜漕いで到着するまでの実話です。
世界の海難史上でも長大な距離に対して大人数が生き残った非常に稀有な例として評価されています。
非常時における指揮官の行動の模範として現在の防衛大学でも講義されている内容です。
戦争というものはどんなに繕っても悪いことでありますが、その中にもこのような美談があったことを「戦争を知らない」若い世代に知っていただければ幸いです。
読者の対象年齢は小学校高学年から中学生と考えて書きました。
文中の軍事用語や専門用語は著者の判断で現代風にわかりやすく書き改めていますので実際当時使用された言葉と違う箇所がありますがご了承ください。
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