SIS-II
@maitaketomo
プロローグ
その日、荒れ地は消えた。
そこは都会。
しかし、今やその場所は、広大に広がる荒れ地となり、そこに建ち並んでいたビル等は、まるで荒れ地に生えている枯れ木のように廃れていた。
その荒れ地の中央で、茶髪と白髪の、2人の青年が向かい合っている。
「もう、戻れないのかな」
ポツリ、と、茶髪の青年は呟く。
彼はどこか遠い目をしている。
目の前の──彼にとっての親友と過ごしてきた数々の思い出。
救えなかった親友。
変わり果てた親友。
──そして今、目の前にいる親友。
彼は、様々な感情がこみ上げてくるのか、涙を流し、全身を震わせる。
「帰って来てくれよ……! サイハ!」
そんな彼の姿を見ても、顔色1つ変えない白髪の青年。
「あの時には戻れねェ。ましてや、何1つ守れやしなかった、惨めな自分には……」
白髪の青年は、音も立てずに空中に浮遊した。
「全てはこれからなんだ。だから、邪魔をするなシュウ」
白髪の青年は、空中で両手を広げる。
すると、荒れ地に残っていたかつてのビルや建物等も、空中に全て浮遊し、白髪の青年の元に集まる。
「もう、終わりなんだよ」
「──終わりじゃないっ!」
茶髪の青年の全身を、黒色の甲冑のようなものが包む。
そして茶髪の青年は、地面を蹴る。
およそ、ビル1つ分の高さの跳躍をしてみせると、すかさず空中を蹴る。
白髪の青年をかなり下に捉えた茶髪の青年は、そのまま白髪の青年に向かい降下する。
途中、茶髪の青年は、両手からジェット気流のようなものを生み出し、更に降下のスピードを上げる。
「うおおおぉ!」
茶髪の青年は、今度は両手を前につきだす。
茶髪の青年の2倍はあろうかという黒い物体を、高速で5つ程、白髪の青年に向けて射出する。
白髪の青年に近付いてくる黒い物体は、既に音速の域だ。
だが、白髪の青年は動かない。
黒い物体は、5つ共、白髪の青年に殺到した。
瞬間、ゴーンと、鐘の音が鳴り響くかのような音がしたあとに、黒い物体が弾かれる。
その光景は、まるで磁石の同じ極同士を近付けた時のようであった。
茶髪の青年は、攻撃が弾かれる事は想定内だったのか、そのまま高速で白髪の青年に肉薄する。
白髪の青年は軽く舌打ちをすると、今度は自身の元にあったビルや建物等を、茶髪の青年に向かい射出した。
ビルや建物が、まるで打ち出されるかのような光景だが、茶髪の青年は怯むことなく、立ち向かう。
「サイハぁ!」
「終わりだァ! シュウ!」
彼らの戦いは、後に人類史上前にも後にも見ない、最悪の伝説となった。
この戦いの意味を語るには、彼らが決めてきた数々の決断を、まずは語らなければならない。
巡りゆく時の中で、彼らが選んだ道が、この戦いを生み出したというなら、どこで道を踏み外したのだろう。
かつての友に向けた視線が、今や命を奪う者に向ける視線となって、それが交差する。
──その日、荒れ地は消えた。
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