第22話 隠れ通路
基本ベトナムで仕事に来る人間たちはどんな聖人君子に見えるおっさんでも99%「ベトナム姉ちゃんを口説く」ことが目的である。
10年以上の経験があるが、残りの1%に当たった試しがない。
食事のあとは決まって「持って帰れる姉ちゃんのいるカラオケを教えて欲しい」とこう来る。
俺はシェルパなのであえて安全なカラオケまで連れて行って姉ちゃんを選んでもらう。
ずらっと30人ほどのアオザイ姉ちゃんが選ばれるのを待つ並ぶ姿は圧巻である。
そして「この子がいい」と指差してお持ち帰りするのである。
しかしだいたい日本から出張で来るおっさんは生意気にも五つ星ホテルに宿泊する。
会社の経費なので一番高いホテルを所望する。
しかしホーチミンの五つ星ホテルは基本姉ちゃんの持ち込み禁止である。
フロントの前で腕を組んで姉ちゃんと一緒に通過するだけで「ストップ」がかかる。
これはベトナムの法律であるからホテル側もしかたない対応である。
ではどうやってこのジレンマを回避してるかと言うとカラオケで姉ちゃんを口説いた後はその姉ちゃんが指定する安いホテルにバイクに乗っけられて連れていかれることになる。
宿泊費は金額的には2000円から3000円の安ホテルであるが何よりも「そもそもどこに連れて行かれるのか?」「思い通り楽しいことができるのか?」「ほんとに生きて帰れるのかどうか」と言う基本的なことを疑わなければならない。
もっと言えば自分はすでに五つ星のホテルに泊まっているのであるから「なるべく自分の宿泊するホテルを使いたい」と思うのが安全でもあり人情であろう。
しかし「蛇の道は蛇」とはよく言ったものでどの5つ星ホテルにもそのようなスケベ親父の下半身の欲求を満たしてくれる隠し通路が用意されている。
しかも姉ちゃんたちは一度五つ星ホテルに泊まってみたいという願望があるから決して嫌がらない。
俺はホーチミン市内のすべての五つ星のホテルの隠し通路を知っているつもりだ。
客が聞けば丁寧に教えている。
例えばカラベルホテルなどの場合は一旦、2階のカジノに行ってからそこの隣のエレベーターから姉ちゃんと一緒に上にあがる。
シェラトンホテルの場合は裏の駐車場から入って2階まで階段であがりエレベーターホールに到着する。
レックス・ホテルはちょっと遠回りになるが地下の駐車場まで歩いていきそこから直通のエレベーターに乗る。
これだと正面玄関から入り受付を通らなくてすむ。
このようにいろんな五つ星ホテルはちゃんと逃げ道を用意しているのである。
さすがは五つ星ホテルである!
ホスピタリティに感謝!
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