第1話 天晴れイタリア姉ちゃん 1
これまた心配なのが、正直これを書くとこのサウナに人が殺到することを俺は恐れている。
しかしあえて実名で載せるぜ。
ベトナム・ホーチミン市のバックパッカーが集まる「デタム地区」というゾーンがある。
バックパッカーが集まる場所と言っても治安的にそんなにビビる場所ではない。
犯罪も皆無なハッピーな地域だ。
そこにチェーンホテルで「リバティー4」という一泊5000円くらいのホテルがある。
ベトナムに詳しい人は「ああ、あそこか」と簡単に思い当たるような場所である。
おれは毎週土曜日の午後に、ここの2階にある男性専用のサウナに入るのが通例だ。
一週間の激務とストレスをここで落とすことに決めている。
ある土曜日の4時くらいであった。
おれがサウナに付随しているジャグジー風呂に入っていい気持ちになっていたときのことだ。
たまたまそのサウナにはおれしか利用者はいなかった。
あろうことか目の前に別嬪で素っ裸の「峰不二子」級の超ボイン(古い表現かな)の10代後半の白人女性が突然入ってきた。
人間というのは咄嗟に起こったことに反応できないと言うことを改めて再認識した。
「ここは男性専用サウナ」「若くて別嬪」「白人超ボイン」「素っ裸」「ピンクの乳首」「桃のような白いケツ」・・・いろいろな単語が頭の中をよぎるが、正直反応できない自分がここにいた。
そろそろ「どっきりテレビ」の看板を持ったやつが現れるのかとも思えるレベルであった。
いやー、西洋の若い姉ちゃんは局部を隠そうともせず堂々と湯船に入っているおれの前でシャワーを浴び始めた。
当然おれの存在には気づいているにもかかわらず!だ。
「あー 若い女の子はこんな風に体を洗うのか」と眺めているうちに少し落ち着いてきた。
落ち着いて頭の中でもう一度、今起きたことの整頓をはじめる。
1 俺は何も悪くない
2 ここはそもそも「男性専用サウナ」だ。
3 向こうから勝手に来た
4 俺も全裸だ
5 他に誰もいない
ここまで思考するのに10秒もかからなかった。
そんな至福のときにベトナム人の係員のタンが入ってきた。
常連のおれは奴を良く知っている。
なにせ3年来の付き合いだ。
彼はすまなさそうに頭をかきながら「すいません、イタリア人の女の子が急に入って来て『カンボジアからのバス旅行で汗まみれになっているからシャワーだけを使わせてくれと』頼み込んできたのです。『男性一人が入っているからだめだ』と答えたら『それでもいい』と脱ぎ始めたので止められませんでした」と平身低頭で謝ってきた。
おれは内心タン、「グッド・ジョブ」と親指を立て「いいよ、おれもバスでカンボジアに行ったことがある。彼女の気持ちはよくわかる!」と答えると安心した係員はドアの向こうに下がっていった。
シャワーを浴びたイタリア人峰不二子はあろうことか湯船を見つけておれの入っている目の前になにも隠そうともせずに仁王立ちしたのである。
「u4yvo6utq1o」おそらくイタリア語で「入っていいですか」という意味のことを言ったであろう。
おれは最高の笑みを浮かべて「どうぞ!」と気合を入れて言った。
おれの生涯であのときの「どうぞ」以上に気合を入れて言った記憶はない。
笑顔で俺の正面わずか50cmの前にしずしずと入ってくる若いイタリア娘のトウモロコシの毛のような陰毛を見て「おれはイタリアで生まれるべきだった」と本当に思った。
心から思った。
英語で「どこから来たん?」と聞くとベトナム人の言ったとおり「イタリア・ジェノバ」と綺麗な声で答えてくれた。
10分前から先に湯船に漬かっていたおれが次に考えたのが「今からどうやって湯船から上がるか」であった。
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