前のエピソード――道経２９　世界に働きかける

道に則って君主を補佐するものは

富国強兵になぞ邁進せぬ。

軍備は全て解散されるべくを望む。

軍隊が通る所には茨が生い茂る。

大軍が地を踏み荒らせば、

その地には凶作がもたらされよう。

故に原則を知る者は、

有事が済めば、

軍備は解散するべき。

軍功についても

誇示し、ほこり、驕ることは

あってはならぬ。

不可避の事情に迫られることなしに、

敢えて軍備を強化しよう、とは思わぬ。

何故ならば、強くあろうとすれば、

衰え行くものだからである。

これは道に沿った行いではない。

道に沿わねば、

亡びは否応なしに迫ってこよう。

○道経30

以道佐人主者　不以兵強天下

其事好還

　道を以て人主を佐くる者

　兵を以て天下を強めず

　其の事還るを好む

師之所處　荊棘生焉

大軍之後　必有凶年

　師の處る所　荊棘生ず

　大軍の後　必ずや凶年有り

善者果而已　不敢以取強

果而勿矜　果而勿伐　果而勿驕

果而不得已　果而勿強

　善き者は果さば已む

　敢えて以て強なるを取らず

　果して矜りたる勿れ

　果して伐したる勿れ

　果して驕りたる勿れ

　果して已むを得ずんば

　果して強かる勿れ

物壯則老、是謂不道。

不道早已。

　物壯ざば則ち老ゆ

　是を不道と謂う

　不道は早きに已む。

○蜂屋邦夫釈　概要

よく君主を助けるものは、武力をあくまで目的達成の手段とする。ことさらに誇示することはない。いたずらに強化、誇示を求めれば、やがて衰えを免れることはできぬ。それは道に沿ったふるまいではない。道に沿っておらねば、衰退もまた、早い。

○0516 おぼえがき

これについてはもう、どうしようもなく軍備の話ですねー。まぁ敢えて言えば自分の筋力その他に話を持って行くこともできるか。ただ自分の身体に対して話を持って行こうとすると、どうしても２８章の話みたいなことにはならざるを得ない。最初にある程度の強さを手にしないで、本当の強さを得ることなどできない、みたいなね。

この辺の話は、バキの郭海皇が使いこなした「消力（シャオリー）」とか、愚地克己のマッハ突きとかセルフ鞭化（あれ確か名前存在してなかったよね？）みたいなもんを想起せざるを得ない。

だいたい自然に回帰するってことは食物連鎖のただ中に身を置くってことだしねー。なんか老子って「その辺の強さはそもそも持ってることが前提ですよ、その先の話をしましょうね」みたいなこと言ってる気はしてきた。