第41話.結果

宿屋に入るとおばちゃんが机を拭いていた。



「おばちゃん!ただいま。」



「あら、昨日は帰ってこなかったけど、どうし……その子供はなんだい?」



おばちゃんが俺の後ろにいたクレアとシャルに気づいた。



「私シャル!」



「クレアなの!」



シャルとクレアが元気よく自己紹介をする。



「フフフ、よろしくね。それで、どうしたんだい?」



「ちょっといろいろあって、引き取ることになりました。」



「あんた、大丈夫なのかい?子供を育てるのは簡単な事じゃないよ。」



「はい。それは分かっています。」



「そうかい……それなら良いんだけどね。」



「はい。それで、相談なんですけど、ここじゃこの子達と寝るには狭いと思うんですよ。だから、おばちゃんには悪いけど違う宿屋に行こうと思ってます。どこか良いところ知りませんか?」



「しかたいね。ここは一人部屋しかないし、この子達もまだ一人で寝るのは心細いだろうしね。そうだね……ここの近くにもう一軒宿屋があるけどそこにしたらどうだい?そこならみんなで寝られると思うよ。」



おばちゃんにとっては俺がいなくなるから、利益が減ることになってしまう。



だけど、快く新しい宿屋を紹介してくれた。



せっかく仲良くなってきたところだったから、今宿屋を変えるのは嫌だけど、クレアとシャルのために変えるしかなかった。



だから、せめてご飯はここで食べようと思った。



そうすれば、毎日顔を会わせるし、今後も仲良くやっていけるしな。



「ありがとうございます。」



「はいよ。またいつでも顔を出しに来ておくれ。待ってるからね。」



「はい!」



『バイバイ!』



宿屋を出て、おばちゃんに教えてもらった宿屋を探す。 



そして200m先に宿屋を見つけた。



多分ここがおばちゃんが言っていた宿屋だろう。



見た目ボロくもなく、豪華でもない、普通の宿屋だ。



中に入り手続きを済ませる。



値段は1泊銅貨15枚だった。



部屋にはベットが3つあったが、広さはそれほどなく、ウィルが床に寝るとあまりスペースは無くなってしまった。



「スゥースゥー」



ベットから可愛らしい寝息が聞こえてくる。



クレアとシャルは疲れたのか寝てしまった。



昨日も度々目が覚めてたから寝不足だったというのもあるだろう。



斯く言う俺もかなり眠いのだが……



でも、オーガとの戦闘で剣が折れたから、新しい剣も早く買っておきたい所だしな。



「俺も寝るか。」



二人が寝ている間に買うこともできただろうが、もし二人が起きたときに俺がいなかったら心配するだろうから止めておくことにした。





◇   ◇   ◇   ◇   ◇





それから2週間は何事もなく、平和な日々だった。



クレアとシャルに、街を案内したり遊んだりしていた。



そして、2週間経つ頃には夜泣くことも無くなり、元気を取り戻していった。



俺もクエストを受けたりしたが、どれも簡単なクエストで特に危険はなかった。



クエストの最中はクレアとシャルを連れていくことは出来ないので、おばちゃんに預けていた。



そこで、宿屋のお手伝いをしたようで、クレアとシャルはそれが楽しかったようだ。



カヤ村にいたときは、畑仕事や家事をしていたクレア達だったが、こっちに来てからは特にすることも無くなっていたので、昼間はおばちゃんのところでお手伝いをさせることにした。



二人にとっても何かしていた方が気もまぎれるだろうし、おばちゃんも助かるわと言っていたのでWinWinの関係だ。



それに、二人が手伝い始めてから、お客の数が増大したようだ。



二人の可愛さに癒されると大反響らしい。



二人がお皿を落としたり、転んでしまったりしても、お客は怒ることなく逆に笑顔になるそうだ。



夕方ごろに俺はクレアとシャルを迎えに行って、そこでご飯を食べる。



そのあと宿屋に帰り寝るというのが習慣であった。



ちなみに、この前解体所に持って行ったオーガは革や牙などが金貨1枚で売れた。



1体で金貨1枚とは、さすがAランクの魔物だなと思った。



そうして2週間も過ごした頃、宿屋にアルベルト家から使いの者がやって来た。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る