エピローグ「たった二人だけの星」
第50話
☆☆☆
僕たちは手をつないで空を見上げている。
僕は今、幸せの中に在った。
ただもうあの小さなナリアには会えないことが少しだけ寂しかった。それでも僕がどうしてもと望むのであれば、時間こそかかるが、小さなナリアを消えたときの状態のまま再構築することは可能らしい。
しかしそれを望む必要はなかった。
だって今僕の隣にいるナリアは僕の初めての友達のナリアと小さなナリアが一緒になったナリアだった。
だからこのままでいい。
「ねぇ、これからどうしようか?」
ナリアにそう問われて、考える。どうしよう……
選択肢はいっぱいある。
例えどんな選択肢を選んだとしても、これからはずっと二人いっしょだ。
とても楽しくて、幸せに違いない。
だって僕たち二人は絶望を知っている。一人ぼっちの辛さを知っている。
そう、僕たちは知っているんだ。
希望こそが絶望を生み出した。
希望こそが絶望の
だけど……
この絶望、悲しみこそがまた、幸せの
誰かにとって、それはごく普通のありふれた日常かもしれない。
でも絶望を体験したからこそ、僕たちにとってのそれは輝ける日々となる。
普通の人はただ空を見上げても感動はできないだろう。普通の人が感動するほどの景色を見るためには、高い山に登ったりと特別な過程が必要になる。
しかし空を知らない者は、ただ天を仰ぎ初めての空を見上れば、それだけで感動することができるんだ。
僕は出来損ないだった。世界一不幸な人間だったのかもしれない。
でもだからこそ、僕は誰よりも幸せになれる。
すごく簡単に幸せになれるんだ。
……僕は答える。
「ずっと……ずっと、二人いっしょにいよう」
「うん」
ナリアが笑顔で頷いてくれた。
だから僕はこの世界で一番……いや、少なくても二番目には幸せだった。
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