第38話

☆☆☆


 ……失敗だった。

 やっぱり迷惑だったんだろう。

 僕らはただの友達だった。

 それなのに……僕には今まで人間の友達なんていなかったから友情と、愛情の違いすらわからなかったんだ。

 よく考えてみれば当然のことだ。

 こんな欠陥品の僕を誰が愛してくれるのだろう。

 ナリアの優しさに舞い上がってそんなことも忘れていた。

 だから……僕は決めた。

 人間になると。

 幸い僕には優秀な頭脳が与えられている。

 他の誰かにはできなくても僕にならできるかもしれない。

 それに僕が人間になれたのなら、ナリアもまた救うことができる。

 そうなれば今度こそ僕のことを好きになってくれるかもしれない。

 どんな物語でも、悲劇のヒロインはそこから救い出してくれたヒーローに恋をするのがお約束だ。

 悲しみにくれて、うつむいているだけじゃ何も変わらない。

 ナナを失ったときとは違う。あのときはどうしようもなかった。

 でも今回は……確かに僕は友達を失った。それでもナリアを失ったわけじゃない。

 僕は幸せを失った。それでもナリアの幸せを失ったわけじゃない。

 だから大丈夫。

 今回は取り戻すことができるかもしれないんだ。

 僕は前を向く。

 もう僕は悲しまない。いちいち傷ついたりなんかしない。そんな暇はない。

 僕は進むんだ。真っ直ぐ前に進むんだ。

 もう一度、ナリアと笑い合うことのできる明日のために。

 僕の望む幸せな未来のために。

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