第37話 ■「王都への旅路4」
「ふふ、やっと出来た……」
馬車に揺られながら僕はニヤリと微笑む。
それに対して突っ込む者は……誰もいない。
というのも僕は今、乗客用ではなく僕用の荷物が載った荷馬車にいたからだ。
魔法の勉強をする場合には、どうしても乗客用の馬車だとスペースが狭い(魔法陣を広げるのも難しい)
なので、魔法の勉強をする際には荷馬車の上でやっていた。
僕用の荷馬車は、大きさの割に荷物をコンパクトにしているからスペースが余っている。
そのスペースにみんなの荷物も分散させて載せれば?とも思ったんだけど主用の馬車に家臣の荷物を載せるのはあまり体裁が良くないらしい。
なので旅行中の僕の魔法実験の場所として活用している。
前回の賊討伐を受けて改めて感じたのが、攻撃魔法の殺傷能力の高さだ。
それまでも検討はしていたけれど改めて開発を急いでいた。
検討していたのはバインド系、相手を何らかの形で束縛することにより行動制限をかける魔法だ。
そして、僕が検討していたのが「とりもち」「鎖」「スタンガン」の三つの方式だ。
その中で「とりもち」「鎖」について、試作第一号が出来たところである。
「とりもち」については、当初から考えていたウォーターボールの粘度を高める方向性で間違ってなかった。
ただ、問題だったのがウォーターボール単体だと相手に届くまでの速度が遅すぎる事だった。
粘度を上げたことで空気抵抗をもろに受けてしまい、従来のウォーターボールの八割くらいのスピードになってしまった。
これでは実用性の面で使えたもんじゃない。
それじゃウォーターアローの形式に…で作ったものは散々だった。
粘度を上げたことで当たった時の衝撃で対象物を粉砕してしまった……うん、頭なら粉々だね。
ウォーターボールは打ち出し時に推進力を加えて以降は何もしない。
つまりは、一度打ち出すとどんどんスピードが減衰してしまう。
ウォーターアローの原理は推進力を数十倍に高め、鏃の形にすることで空気抵抗を減らして減衰を抑えることだった。
けどその推進力だと人体であれば軽々と貫通してしまう。
そこで考え方を変えてみた。
ある程度の推進力を継続すればいいんじゃないか? と……
風系低級魔法のエアウィンドを内包させて一部から放出することで推進剤代わりとした。
また、対象物にあたった際にエアウィンドを発散させることで分布範囲を広げるようにした。
これらの自動制御は一番苦労したけれど、プログラムの分岐処理の要領で解決できた。
名前は……うん、『ウォーターバインド』にしよう。
「鎖」については、まずは「
かといって銀だと硬度の部分で力不足……と早々と鋼材は諦めざる得なかった。
そこで「魔法の刃」が参考になった。
「魔法の刃」は魔法を刃の形状に維持させる事でできている。
ならば、魔法を鎖の形で維持させることが出来れば……と思ったけれど予想以上にうまくいった。
ただ魔力消費の問題で維持できて十分程と、長時間の拘束には向いていない。
だけど戦闘中の行動制限用と割り切れば十分だろう。
名前は、『チェーンバインド』かな?
問題は「スタンガン」だ。
方向性はもうできている。「鎖」に帯電させれば十分使える。
名前も『ライトニングバインド』にもう決めてある。
ただその帯電させる威力の調整が難しい。
中級魔法のサンダーボルトだと、威力が強すぎて真っ黒焦げの炭が出来上がってしまう。
かといって、静電気レベルだとピリッと一瞬するだけで拘束力は低い。
一般的にスタンガンは五万~百万ボルトらしいけれど、
この世界には電圧計は無いから結局手探り状態になってしまう。
かといって動物に使用するのは、母さんとの約束で禁止になっている。
……ただ、「非攻撃的な動物に対しては」だから、攻撃されれば……
なんだか「科学の発展に犠牲は付き物でーす」と言う科学者みたいな発想になっているけど……
あー、僕たちを攻撃してくるような動物とかいればいいんだけどなぁ……
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