第10話 ■「魔法について勉強しよう」

 四歳になった。


 その中で一つ変化があった。

 僕、お兄ちゃんになりました。しかも双子の姉妹のお兄ちゃんです。


 一卵性双生児なので見た目的には、瓜二つ。

 でも、家族だからか?なんとなく見分けがつきます。


 今も僕の前でベビーベットの上ですやすや寝ている。

 赤のベビー服を着ているのが、アリシャ

 青のベビー服を着ているのが、リリィ


 両方とも僕と違って純粋な金髪です。でも顔は母さん似で将来、美人になりそうです。


 ……なんとなくお兄ちゃんとしては悪い虫が寄ってこないか今から心配です。

 指を手の平に置くと原始反射で握りしめてくる。なにこの可愛い生物はっ!


 元々、一人っ子だった僕ではあったが、不思議なもので兄としての自覚がふつふつと湧いてくる。

 この妹たちのためにも絶対に滅亡回避をしないと!


「本当にエルお兄ちゃんは妹たちが大好きなのね」


 と母さんが微笑む。

 ああ、もちろん、これ程の素晴らしい宝物、この世に無いんじゃないのかね。

 死んだときの年齢より年下の女性を母親として認識するのは当初は違和感はあったものの、妹達が生まれたからなのか普通に母親として受け入れることが出来ている。やはり母親は偉大だ。


「うん、妹達のために僕も頑張らないと」

「そう、頑張れお兄ちゃん」

 と僕の言葉を聞いてさらに母さんは優しく微笑み、僕の頭を撫でる。


 さて、妹パワーを吸収して気合も入ったところで今日からは魔法について勉強と鍛錬をしていこうと思っている。


 まだ、四歳なので高負荷な肉体鍛錬は早すぎるだろうから、現状は柔軟体操程度に抑えている。


 ここ最近は、僕が書庫の本を読んでいることに両親も慣れたようで、メイドが一人(ファンナ・メルという名前の美人さんだ)、お目付け兼、高いところにある本を取る役についてくれている。


「ファンナさん、魔法の基礎がわかるような本はありませんか?」

「そうですね……ではエル様、この『魔法の基礎』はいかがでしょうか?」

「うん、それじゃそれをお願いします」


 とファンナが本棚から本を取り出して僕に渡すと、少し離れたところにある椅子に腰かける。


 そこがファンナの指定席だ。そこで自分も読書したり、何らかの手作業を行ったりしている。

 程よい距離感にいてくれるファンナに感謝しながら本を読み始める。


 ふむふむ、まずは魔法は大きく分けて四つあるようだ。


 ・攻撃魔法:対象への攻撃を行う。

 ・治癒魔法:対象への治癒処理を行う。

 ・召喚魔法:何かを呼び出す。

 ・一般魔法:生活で使用可能な小規模な魔法


 上の三つはRPGゲームをやっていた僕にとっては理解しやすいが、一般魔法ってのはなんなんだろうか?


 一例に書いてあるのは「銀ナイフに刃を付ける」「対象物から水を湧かす」「わらに火種を付ける」


 なるほど、上の三つはどちらかと言うと戦いの中から生まれたものとすれば、一般魔法は、威力を抑えて生活を楽にすることを目的とした魔法のようだ。


 魔法を使用するために必要となるのは魔力。逆に言えば魔力があれば誰でも魔法が使用可能になるのか。

 そして魔力の使用方法は「自身の体内にある魔力」「魔石や聖遺物せいいぶつなどの魔力を蓄積できる物」が必要。

 魔石や聖遺物は高額な値段で取引がされているらしいので、現実的には自身の魔力がメインになるようだ。


 そこで理解する。魔法が発展しているのであれば、魔法の灯りがあってもいいのにと思っていたけど、自身の魔力が必要であるから技術として確立していないのだと。


 うーん、でも大概のアニメやゲームだと魔法がある世界っていうのは大気中にマナみたいなのがあふれているもんだけどなぁ、今後の研究内容としておこう。


 魔法を発動するための条件は、「詠唱」もしくは「魔法陣」と、ここら辺はよく知ったファンタジーと同じだな。

 高度な魔法になればなるほど、詠唱・魔法陣共に複雑化していくようだ。


「ファンナさん」

「はい、なんでしょうか? エル様」

「ファンナさんたちが料理をする際には、銀ナイフを使用していますよね?

 この一般魔法の『銀ナイフに刃を付ける』を使っていると思うんですけど魔法の詠唱をしていましたっけ?」


 そう、この世界では何故か包丁としては銀を使用している。

 そもそも魔法を阻害するから鉄を使用した道具がほぼ存在しない。


 僕の覚えている知識だと鉄に比べて銀はかなり硬度が低かったはずだ。

 包丁として機能するんだろうか?とずっと思っていた。

 でも、なるほどこの魔法を使用して魔法の刃を作成していたという事か。


「いえ、銀ナイフには最初から柄の部分に魔法陣が刻印されているので、私たちは魔力を少し注ぎこんでいるだけなのです」

「へー、銀ナイフ以外にも魔法陣が刻印されているものってあるの?」

「そうですね。火打石や水瓶みずがめなどにも刻印されていますね。

 ただお値段が高いので一般の家庭にはそこまで流通はしていませんが」


 なるほど、生活を楽にするための一般魔法はその対象のものに魔法陣を刻印されているのが普通なのか。

 包丁に比べると火打石や水瓶は必須ではないから流通はしていないと。


「ありがとう。ファンナさん。

 今度、銀ナイフの魔法陣が確認したいので見せてもらえますか?」

「わかりましたエル様。明日にでもお持ちします」

「お願いします」


 銀ナイフの魔法陣であれば、この本にも記載されているだろうけれどやっぱり本物を確認してみたいから明日を楽しみにしておこう。


 さて、次は実践かな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る