第9話 ■「内政について勉強しよう」

 二歳になった。


 相も変わらず、眠気が来たら十分に睡眠をとり、起きれば書庫に入り浸る日々を送っている。


 その中で最近は主にバルクス領の農業や商業と言った部分を勉強している。


 この世界の主食はパンだ。

 正確には「フルクス」と呼ばれているけど見た目はフランスパンだから、たまにパンと言いそうになってしまう。


 大概のものが日本にいたころの言葉で通じるのだが何故かパンは違う。

 和製外来語だからかもしれないがなぜだろうか?

 まぁ、パンについては置いておこう。


 バルクス領は、農業としては小麦の生産が6割を超えている。

 それ以外は、野菜が占めている。


 このようにはっきり言ってしまえば対外(この場合は別貴族の封領だけど)的に輸出する魅力的な農作物は皆無だ。


 基本的に地産地消が基礎経済となるので問題ない(問題と思っていないという方が正解か?)という認識なのだ。

 だけど正直、食事については取れる物が限定されているから味気ない。


 伯爵家だから、他領からの輸入品によって一般的な家庭に比べるとまともではあるけれどね。


 そして、魅力的な商品が無いので、商人たちの往来も少ない。

 商人が来なければ、情報や文化も入ってこない。

 若干閉鎖的なところになっている。


 危険地帯の最前線だからと言ってもこれだけ少ないと、閉塞感が出てしまう。


 この世界には、お米は無い。

 これは日本人だった僕にとっては非常に大問題だ。


 いつか神様にお願いして地球にあった農産物をこちらでも作れるようにしないと……

 存在しないという事は、対外的な輸出品としての魅力が発生する。


 前の世界でも大航海時代、香辛料は一粒が金に相当すると言われるほどの魅力的な商品だった。

 その理論はこの世界でも通じるはずだ、要は需要と供給のバランスをうまくとれば、それは内政の充実を助けることになる。


 畜産についても、前の世界と同じく鶏、豚、牛、羊、馬などがメインで一部には軍馬代わりにモンスターの『ミルス』と呼ばれる、毎回最後の冒険をするゲームの中に出てくる黄色や黒といった色とりどりの ダチョウもどきを飼育していたりもする。


 とはいえ、飼料技術が低いようで冬を迎える前に殆どが屠殺とさつされて保存食とされるため、絶対数が増えずに人口に対してギリギリに近い出荷量しかない。


 鉱物は、銀の算出は他領平均に比べると一.四倍と比較的産出量は多い。


 ……でもそれだけだ。


 金や宝石についてもそれなりに取れる……でもそれだけだ。


 逆に鉄については、他領平均に比べると二十五倍の貯蔵量を誇っているけれど、この世界では鉄は魔法の阻害影響が大きすぎて、ごみ鉱石扱いになっている。

 僕としては、この鉄の多さは有りがたいが、これは強兵政策に使用したいところなのでやっぱり商品価値としては低い。


 鉱物は産出次第と言うところもあるから、一旦様子見かな。


 ……ほんとうに無い無い尽くしだ。


 うーん、よく父さんはこんな環境で領土経営をやっているもんだと感心する。

 そして細かい収支報告書を確認して、なるほどなと思う。


 この封領の対外的資源は、モンスターを討伐した際に出てくる魔石や外殻や牙といったモンスターの体の一部が主な収入源になっている。


 モンスターの体の一部は、武器や防具の部品として使用されることが多く、モンスター被害の少ない中央には魅力的な商品となる。


 でも、モンスターの出没は散発的なので安定した収入にならないので、万が一に備えて領内にはいくつかの倉庫がありそこに蓄積しているらしい。


 ゲームをする際には、まず内政強化から富国強兵を行っていた僕としては、まず内政改革をしないと、と思う。


 とはいえ、二毛作とか輪作とか品種改良とか知識はあるけど、技術的な部分がかけているからなぁ。


 次の『ギフト』はそういった専門書を片っ端からお願いしないと。


 その情報を『ギフト』でお願いした優秀な人材に伝えて領内に流布することで全体的なレベルアップがまずは最初の目標だな。

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