マリーは部屋を飛び出して

青井音子

プロローグ

プロローグ

 目を開けると、そこには白黒の部屋が映っていました。

 いつも通り、部屋に異常が無いか確認します。もっとも、五年前に此処で目を覚まして以来、この場所が変化した事など、ただの一度も無いのですが。

 壁を埋め尽くす本と、窓を模した大きなモニター、チェス盤の様な模様の床。そして、エプロンドレスを身に付け、腰まである長い髪を身体の後ろで三つ編みにした、私。その全てが、色を失い、味気ないモノトーンに染まっていました。

 ふと、モニターに視線を移すと、そこに映ったデジタル時計が《2057/8/9/Thu/AM8:00》の文字を表示させ、それと同時に、部屋中にアラームが鳴り響きました。博士ドクターとの面会時間です。

 今日もまた、この部屋の様につまらない時間がやってくるのでしょう。


 ──私がこの部屋から出ることは、許されないのですから。

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