第9話:紅魔ラプソディー
【sideゆんゆん】
アクセルの街中をブラブラしながら、私とみんちゃすはあの日紅魔の里で別れてからお互い何があったかを話し合っていた……のだけど、
「-とまあそんな訳で、共闘して魔王軍幹部を撃退した縁で月代組に入り、その後六鬼衆『修羅』にまで登りつめたって訳よ」
「み、みんちゃすあんた……里の頃からヤクザ魔法使いとか色々言われてたけど、本当にそっちの道に進んじゃったのね……」
この危険を一切省みない無鉄砲者が波瀾万丈な冒険者生活を送っているのは用意に予想できた。だが、小さい頃からの幼馴染みがちょっと会わない内に、反社会勢力の幹部になってるなんて誰が予想できるだろうか。……まあ月代組は仁義を欠いた所業を決して認めない組織だって聞くし、人様に顔向け出来ないことはしてないんだろうけど、それにしたって……。
「……あれ?月代組の拠点って、確か独立都市クリアカンだよね。なのになんであんたアクセルにいるのよ?」
「あー、それはだな……おっ、串焼きだってよ。美味そうだし買っとくか」
突然会話を切り上げたかと思えば、みんちゃすは私の手を引いて露店へと近づいていく。……まったく、相変わらず行き当たりばったりなんだから。
「というかなんで私まで連れてきたのよ?あっ、いや、決して嫌って訳じゃないんだけど、その、露店で買い物とかしたことないからちょっと不安で……」
「したことないんならなら尚更覚えといて損はねーだろ。何本にする?」
「相変わらず強引だし余計なお世話だし……ええと、じゃあせっかくだから3本で」
「はいよ。おっちゃーん、串焼き33本買うぞ-」
あんた30本も食べるの!?
と、露店のおじさんは私達を微笑ましそうに見ながら、
「おう、お二人さんデートかい?朝からお熱いねぇ。33本で3300万エリスのところを特別サービス、カップル料金で3000万エリスだよ」
「カッ…!?」
「……あ‘’?」
かっ、カカカカップルって……いや違うからみんちゃすとはまだそういう仲じゃないからいや今のまだは言葉の綾というかそりゃこの子とは長い付き合いだしドキッとさせられることも結構あるけどそんな「ヒッ…!?」いきなりこういうのはもっと段階を踏んで……
ひ?
「てめー俺からぼったくろうたぁ良い度胸してんじゃねーか。よほどこの世からサヨナラバイバイしたいみてーだなコラ」
「あ、あばばばばば………」
いつの間にかみんちゃすがおじさんの胸ぐらを掴みつつ、首筋に真っ白な剣を突きつけて……っていやいやいや!?
「いきなり何やってんのよみんちゃす!?」
「あー?見りゃわかんだろが。一本100万エリスなんて法外な値段ふっかけてくるようなバカはこの世から……消す」
「いやいやいや消しちゃダメだから!?それ多分おじさんなりの冗談だから!」
「人は限りある人生を常に真剣に生きなきゃなんねーんだよバカヤロー。軽はずみな気持ちでこの俺に舐め腐ったことほざいたのが運の尽きだ。……でもまあ?串焼きの料金まけてくれるってーなら特別に見逃してやっても-」
「無料で結構ですうううぅぅぅぅぅっ!」
「ん、そっかそっか♪長生きできるタイプだなおっさん♪」
思いっきり人様に顔向け出来ないことしてるよこの子!?あとなんでこんなえげつないことしといてそんなあどけない笑顔浮かべられるの!?
「……つーわけで、こういった露店での買い物の仕方はこんな感じだ。参考になったか?」
「なる訳ないでしょうが!?私もうあの近辺立ち寄れないじゃない!」
串焼きを頬張りながら私はみんちゃすを詰る。いやまあとても美味しいけど、手に入れる経緯が経緯なだけに素直に喜べない……。
「ああ大丈夫大丈夫、俺はともかくオメーのことなんざ印象に残らねーよ。だってオメーいまいちパッとしないからなーははは」
「あんたとめぐみんが悪目立ちし過ぎるのよ!?だいたいみんちゃすはいつもいつも-」
「おっ、この寒い中アイス売ってら珍しいなー。串焼きも食べ切ったことだし、珍しいからデザートタイムだ」
「話聞きなさいよおおおおお!?」
というか食べるの早っ!?
「おっちゃーん、アイス2つ」
「おっ、君たち姉弟かい?仲良しだね~」
……あ、マズイ。
「へえ……一応聞いておくが、俺とこいつが……何だって?」
「こらこらボク、お姉ちゃんをこいつ呼ばわりしたらダメじゃない-があああああああ!?」
「なんでナチュラルに俺を下と見なした?俺とこいつ同い年なんだぞ?オメー今絶対俺の身長見て判断しただろコラ。しかもなんだその幼児を嗜めるような言い方は?殺されてーのか?んー?」
「みんちゃす落ち着いて!?露店のおじさんの頭蓋骨からしちゃいけない音鳴ってるから!」
やっぱりみんちゃす、めぐみんより背が低いことこと気にしてたんだ……。
「ったく、失礼な奴もいたもんだぜ。……けどまあ、さっきに続いてタダで手に入ったことだし、良しとするか」
「だから良くないわよ!?なんでもかんでも暴力に持ってくのやめなさいっていつも言ってるでしょ!」
確かに知り合った当初から既にやや脳筋気味だったけど、紅魔族にしてはどちらかと言えばおとなしい子だったのに……いったいどんな育て方したのよアステリアさん!?
「何甘っちょろいこと言ってんだよ、男らしくねーぞゆんゆん」
「いや私男じゃないからね!?」
「だいたいオメーのせいでもあるんだぜ?俺やめぐみんがこんな感じなのに、一人だけ背やら胸やら勝手にでかくなりやがって腹立つなコノヤロー」
「む、むむむ胸って……明らかに言いがかりだし、それってセクハラ-」
「おっ、射的だってよ。ちょっと良い感じに腹も膨れたし、ちょっと寄ってくか」
「だ・か・ら、せめて最後まで言わせなさいよ!?」
この子以前より傍若無人になってない?方向性は違うけど師匠にも匹敵するわ……。
それにしても、射的?
「あんた以前、弓なんてチマチマした武器は性に合わないって言ってなかった?」
「そりゃ戦闘に関してはそうだが、こういう余興は楽しんだもん勝ちだろうが。……そうだ、せっかくだから勝負といこうぜ。ルールは簡単、あの冬将軍をぶち抜いた方の勝ちだ」
そう言ってみんちゃすは店主にお金を払い私に弓を渡すと、自分も弓を構えて隅にある冬将軍のぬいぐるみに照準を合わせた。勝負……勝負か。
「上等じゃない、受けて立つわ!」
私も負けじと弓を構え、冬将軍目掛けて矢を放った。やがて族長を目指す身としては、めぐみんだけじゃなくみんちゃすにも負けてられないもの!
……それで、結果はというと-
「だぁぁぁあああああ!全っ然当たんねーよクソが!壊れてんじゃねーかこの弓!?」
「うぅ……もう20回目なのにかすりもしない……」
「お、お客さん達、悪いこと言わねぇから諦めた方がいいんじゃないか?俺もこの商売始めて結構経つが、ここまで当たる気がまるでしないのは中々いないよ?」
どっちが勝ちかとか最早そういう話ではなく、強いて言うなら店主の一人勝ち。挙げ句の果てにその店主に、気まずそうな表情でそう嗜められる始末だ。
と、そろそろ諦めようかみんちゃすに提案しようとしたら、突然後ろから声をかけられた。
「よう、ゆんゆんにみんちゃす」
「あー?……なんだカズマか」
「……?あっ!あの、カズマさん、こんにちは……!」
振り返ると昨日知り合った、めぐみんのパーティーでリーダーをしているという、カズマさんがいた。反応からして、みんちゃすとも知り合いなんだろうか。
カズマさんは私やみんちゃすに目を向けず、そのまま射的の店主に金を渡し、
「狙撃!」
「あ」
私達が掠りもしなかった、冬将軍のぬいぐるみを一撃で撃ち抜いた。す、凄い……!
「ほら、これ欲しかったんだろ?」
カズマさんはそれを手に取ると、ちょっと気取ったように私に手渡してきた。
「あ……ありがとうございま-」
「ちょっとちょっと、困りますよお客さんー。狙撃スキル持ちお断りって、ちゃんと看板に書いてるじゃないですかー。景品はあげますから料金は倍払ってくださいよ……?」
「オメーってほんと肝心な所で詰めが甘いよな……」
呆れたようなみんちゃすの視線を受けながら、店主に追加料金を渡すカズマさんの顔は、リンゴのように真っ赤になっていた。
「……それはそうとみんちゃす、一つだけ言っていいか?」
「あー?何をだよ、言ってみな」
「リア充爆発しろ」
「言ってる意味はいまいちわかんねーが喧嘩売ってるのだけはわかった。上等だコノヤロー速攻でぶちのめして-」
「すみませんでした土下座するので許してください」
「いや折れんの早過ぎだろ!?もっと粘れや!」
「嫌に決まってんだろ!下手に粘ったら確実に串焼き屋のおっさんみたいな目に遭うだろうが!」
「なんでそのこと知ってんだよ?……もしやストーカーか?俺の」
「ストーカーじゃねぇし、しかもなんでお前のだよ!?一万歩譲ってストーキングするにしても対象はゆんゆんだろ!」
私!?
「ストーカーのストーカーか、なんか新しいな」
「いや私ストーカーじゃないからね!?」
そりゃあ休日に意味もなく路地裏を歩き回ったり、徘徊する登校中偶然会うためにめぐみんの家周辺ウロウロしたりしたこともあるけど……決してストーカーじゃないから!違うからね!
【sideみんちゃす】
「……まあつまりだ。どこのパーティーも入れなかっためぐみんのバカが、カズマのパーティーに入りたいがために、無断で俺を抱き合わせにしやがったんだよ」
「……」
「いやー、流石の俺もあんときはブチ切れたなー。まったくあの使い捨て爆発物め、なーにが紅魔族随一の天才だってんだ……あ?ゆんゆん?」
カズマと別れた後また街を散歩しながら、何故俺がクリアカンではなくアクセルにいるか……つまりカズマのパーティーに入った経緯を話してやったが、いつの間にかゆんゆんは無言で顔を俯かせていた。妙だな……四六時中仲間や友達といった関係に飢えているこいつは人の話を聞き流すなんて、天地がひっくり返っても有り得ない筈なんだが。
「もしもーし、急にどうしたんだ?」
「…………ずるい」
「あー?……は?」
ようやく顔を上げたゆんゆんは、何故か目にいっぱい涙を溜めていた。……いや、何故に!?
「私達三人はそれぞれがライバル関係、馴れ合いはご法度の筈でしょ!?なのになんであんた達同じパーティーなのよ!?おかしくない!?二人ともそこまでして私をぼっちキャラに仕立て上げたいの!?」
「いやそんなつもりは微塵もねーけど……あー……なんかごめん……」
思わず気圧されちまった俺を誰が責められようか。……まあ里でゆんゆんと仲良かったのって俺かめぐみんくらいだし、その二人が自分の知らない間に同じパーティーに所属してたら、のけ者にされたと思っても仕方ないか。
「何だよオメー、俺らのパーティーに入りたいのか?しゃーねーな、じゃあ俺がカズマに頼んで-」
「けけけ結構よ!そもそも私はめぐみんに勝負で勝つためにこの街へ来たのよ!馴れ合いに来たんじゃないわ!」
「相変わらず面倒な性格だな、だから友達できねーんだよ」
「ええっ!?」
「……ん?何かあっちの方賑やかだな。ちょっと言ってみようぜ」
「ねえみんちゃす、さっきの本当なの!?私面倒な性格なの!?だから友達ができないの!?ねえ!?」
何やらゆんゆんが喚いているが、相手するのも面倒なので無視して賑わっている方へと歩みを進める。
何だか冒険者の人だかりができているが……ふむ、不自然なほど前衛職に偏ってんな。
「だあああああああ!」
人だかりの中心では、やたらムキムキの大男がアダマンタイトらしき鉱物にハンマーを叩きつけていた。それを裏付けるように露天の看板にデカデカと書き殴られた、『アダマンタイト砕き』の文字。
「クソッ、これでもダメか……」
悔しそうに呟く男の言葉通り、アダマンタイトはまったくの無傷だった。……母ちゃんやサリーちゃんじゃあるまいし、魔法も闘気も使わず腕力だけで砕けるわけねーだろ。
「今回のお兄さんも無理でした!さあ、次の賞金は十二万五千エリス!参加費は五千エリスだよ!お客さん一人が失敗するごとに五千エリスが賞金に上乗せされます!腕力で砕くのもよし、魔法に頼るのもオーケー!さあ、我こそはとい方はいらっしゃいますか!?」
露店商が声を張り上げる。砕こうと思えば砕けるが、今さらそんな端金のために人の商売ぶっ潰すのもなー……ゆんゆんがなんか楽しそうに見てるし、しばらくここて時間潰すとするか……おっ、あの冴えない面構えは、
「ようカズマ、また会ったな」
「ん?ああお前らか」
「あっ!さっきはどうもですカズマさん!見てください、アレ!アダマンタイト砕きですって!」
ゆんゆんは目を輝かせながら嬉しそうに言う。そういやこいつも箱入り娘だったし、こういうのがすごく物珍しいのだろう。
「ゆんゆんはアレだろ?上級魔法とか使えるんだろ?アレに挑戦してみないのか?魔法使っても良いらしいぞ」
「アダマンタイトの固さ舐めてるだろオメー。オリハルコンやヒヒイロカネにゃ流石に及ばねーが、ゆんゆんレベルの上級魔法程度じゃ全然威力不足だっつの」
「そうですよ……爆裂魔法なんて無茶は言いませんが、せめて炸裂魔法ぐらいは使わないと」
俺達が駄弁っている間も、次々と挑戦しては散っていく無鉄砲な冒険者達。人だかりもドンドンまして、調子に乗った露店商がさらに声を張る。
「この街の冒険者には、アダマンタイトは荷が重かったのでしょうか!デストロイヤー討伐の知らせを聞き、遥々ここまでやって来たのですが?さあさあさあ、挑戦者はいないのかっ!?」
露店商の口上な絶好調になる中、冒険者達は互いにつつき合い挑戦を促している。
「……まあ何にしても、この街が舐められっぱなしっても癪だわな。ちょっと行ってくるわ」
「おっ、挑戦するのかみんちゃす?」
「えっ、大丈夫なの?」
「笑わせるな、新たな進化を遂げた『ちゅーれんぽーと』の前じゃアダマンタイトなんざ豆腐同然……あ?めぐみん?」
相棒を鞘から引き抜き炎を灯しながら歩いていく俺よりも先に、人混みの中から私服のめぐみんが前に出た。
「――真打ち、登場」
いやオメーだけはやっちゃ駄目だろ。
カズマも同意見だったようで、最弱職とは思えない機敏さでめぐみんを羽交い締めし、さらにめぐみんのイカれ具合を熟知しているのか、二人の冒険者が鬼気迫る表情でめぐみんの腕をしっかりと掴む。
「おい、いたいけな女の子相手にこの仕打ちはあんまりじゃないか」
「世界中のいたいけな女の子に謝れ!おいおっちゃん、その商売はもう止めとけ!そいつはこの悪名高き爆裂狂の琴線を刺激し過ぎる!」
カズマの言葉に顔を青くした露店商は店仕舞いを始めようとするが、俺はそれを無言で制しつつアダマンタイトを引ったくった。ざんねんながら俺が得物を抜いた以上、もう逃がしゃしねーよ。
「ちょっ……少年、いったい何を-」
「朱雀灼炎刃」
狼狽える店主を無視し、アダマンタイトを放り投げて『ちゅーれんぽーと』を振るった。じゅう…と金属が溶ける音と共に切っ先がアダマンタイトを通過し、アダマンタイトは二つに別れて地に落ちた。すっかり黒ずんだ断面からは高熱を発しており、軽く触れただけで大火傷間違いなしであろう。これぞ親分の手で『ちゅーれんぽーと』へ新たに付与された力、付与された炎のエレメントを切っ先のみに集中させ、あらゆる物を焼き斬る……名付けて朱雀灼炎刃。
「一丁上がり、っと。賞金は別にいらねーから、さっさと荷物まとめて田舎帰れ」
「えっ、嘘……あ、アダマンタイトを、刃物で?」
「あーーーーっ!?よくもこの私の獲物を横取りしてくれましたねみんちゃす!爆裂できたのに!爆裂できたのに!」
「知るかバーカ、早い物勝ちだノロマ」
「ぐぬぬぬぬぬおのれー!」
無理に押さえつけてもめぐみんの場合、無理矢理強行する可能性があるからな。さっさと獲物をかっさらってやるのが賢い対処法だ。
その語俺達四人は成り行きで一緒にあちらこちら見て回ることに。めぐみん曰く、デストロイヤー退治の報酬による経済効果を期待して、この街にあちこちから人が集まってるのだとか。なるほど、道理でやたら物珍しい出店を見かけるわけだ。
「ゆんゆんは紅魔族でも変わり者で有名でなー、学校では大体一人でご飯食べてたっけ」
「そうですね。その寂しそうに食べてるゆんゆんの前をこれ見よがしにウロウロしてやると、それはもう嬉しそうに私に何度も挑戦してきて……」
「待ちなさいよ!そ、そこまで酷くは……なかったと……思……。ま、まあ、毎日勝負を挑んだ気はするけど、別にぼっちではなかったわ。友達だっていたもの」
ゆんゆんの聞き捨てならない発言に、俺とめぐみんは足を止めて固まる。
「「ゆんゆんに……友達……!?」」
「なんでそんな反応なの!?いるわよ私にだって友達ぐらい!ふにふらさんとか、どどんこさんとかが、私達友達よねって言って、私の奢りで一緒にご飯食べに行ったり……」
「オイ止めろ、それ以上は聞きたくない」
いたたまれなくなったカズマが、目尻に浮かんだ涙を拭き取りながら手で制す。それ多分アイツらにとっても無かったことにしたい過去なんだから、第三者にペラペラと話すのは止めてやれや……。
「というかみんちゃすとは一緒に食べてなかったのか?お前ら見た感じ仲良さそうじゃないか」
「知っての通り俺は食うの早いからなー、大抵の日は速攻で平らげて昼寝か散歩に行ってたな」
「アクアやダクネスのような問題児を抱えたこのパーティーに入ってからはフォローに回ることが多いですが、本来みんちゃすは超マイペースな自由人ですよ?」
問題児度では似たり寄ったりどころか筆頭でさえあるかもしれないってのに、さらっと自分を除外しやがったなこいつ。
「……それでゆんゆん。性懲りもなく私に勝負を挑んできたのは良いですが、内容はどうするのですか?爆裂魔法しか使えない私としては、魔法勝負は避けたいところなのですが」
魔法使いの提案じゃないよなこれ。……いやまあ俺もあんまり人のこと言えんが。
「……そうね。ていうか、いい加減他の魔法も覚えなさいよね。あれから少しはスキルポイントだって貯まった筈でしょう?」
「貯まりましたよ。もれなく全て《爆裂魔法威力上昇》や《高速詠唱》につぎ込み……」
「バカッ!どうしてそんなに爆裂魔法に拘るのよ!」
あ、カズマの奴「いいぞもっと言え」と言わんばかりに頷いてら。
「でも困ったわね……いったい何で勝負を決めようか……」
「別に何でもいいですよ?私はもう、勝負事に拘るほど子供でもないですから」
こないだ俺にボードゲームで負けてから、しつこいくらい勝負を挑んでくるお子さまはどこのどなたでしょうね?
「子供じゃないって……そう言えば昔、私と発育勝負をした事があったわね。子供じゃないって言うなら、またあの勝負をしてもいいわよ?」
こいつ今かなり痛々しい提案してるってわかってるのか?発育で決着つけるとかどんなライバル関係だよ。
「いや、子供じゃないというのはそう意味じゃありませんよ。……私はもう、ここにいるカズマと一緒にお風呂に入るような仲でして」
「!?」
突然の爆弾発言に固まるゆんゆん。ああ、カズマがロリニートの称号をアクアに贈呈される羽目になったあの事件か。
「ちょっ!?お前やめろよ、それを人に言うのは!」
「!?」
カズマの遠回しな肯定に顔を赤くするゆんゆん。
「…………きょ、今日のところは私の負けにしといてあげるからあああああああっ!」
清々しいほどやられ役の捨て台詞を吐き、泣きながらどこかへ去っていった。
やがてめぐみんはメモ帳を取り出し、今日の日付と白い○を書き込む。
「今日も勝ち」
「お、お前、本当にそれで良いのか……?」
「しかもやっぱがっつり拘ってんじゃねーかバカヤロー」
ゆんゆんを見送った後、今日はそのまま屋敷へと帰った。しかし結局この日も、ララティーナは帰って来なかった。
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