第21話:爆焔の生誕③

【sideめぐみん】


バカな事だと知りながらも、ずっと求め続けたこの魔法。

「姉ちゃんが、ピリピリしてる!パリパリいってる!」

「めめめ、めぐみん!?何これ、何なの!?一体どんな上級魔法を使うつもり!?ていうか、里の人達が魔法を使う時でも、こんな事にはならなかったんだけど!ねえ、これ何の魔法なの!?」

「族長の娘がうろたえてんじゃねーよ。ライバルなんだろ?その晴れ舞台を目に焼き付けておくのが、オメーの義務ってもんだ」

遠い昔に丸暗記して以来、毎日欠かさず唱えてきたこの詠唱。練り上げられる魔力、紡ぎ出される魔法の言葉に応じる様に、辺りの空気に変化が見られた。

私を取り巻く様に静電気が走り、周辺の景色がおぼろげに歪みだす。なにせ魔法を行使するのが初めてな上に、今から使用するものは、最上級の難易度を誇る爆裂魔法だ。全魔力を上手く魔法に練り込めず、辺りに微量の魔力が漏れ出し、おかしな干渉をしているのだろう。


「黒より黒く、闇より暗き漆黒に……」


……私は爆裂魔法の詠唱を唱えながら、色々と思い出していた。爆裂魔法習得に必要な残りポイントは、後1ポイントだったこと。

そしてさっきゆんゆんと公園で喧嘩した原因の一つが、ひょっこり現れたカモネギを締めたからだということを。

あの時にレベルが上がり、スキルポイントが貯まったのだろう。


「わが真紅の混交こんこうを望みたもう……!」


只ならぬ雰囲気を感じてか、邪神の下僕達がギャーギャーと奇怪な鳴き声を上げて騒ぎ立てる。魔法を発動させる祈りの言葉を一つ一つ紡ぐ度、魔力が失われていくのが分かる。

魔力量には自信があったはずなのにと、一抹の不安にかられてジンワリと汗が滲んだ。


「覚醒の時来たれり、無謬むびゅうの境界に堕ちしことわり……」


爆裂魔法は最大の魔力消費を誇るため、生まれつきの魔力が足りず、習得しても使えない者が多い。教科書に書かれていた文章が頭をよぎるが、紅魔族随一の天才である自分が使えないはずがないと、頭を振って詠唱を続ける。


「……無形むぎょうの歪みと成りて、現出せよ!」


やがて魔法の詠唱が終わると……

私の手の平の中には、小さな光が輝いていた。


 ……できた。


この小さな光を生み出すために、子供の頃からひたすらに努力を重ね、とうとう習得した私の魔法。私にはまだ魔法の威力を増幅させるための杖がない。このまま爆裂魔法を放っても、その威力は本来の力の半分程度に落ちてしまう事だろう。……だがそれでも、

「みんちゃす。二人を守りながら、頭を低くして伏せていなさい」

「りょーかい。しくじったらグーパンな」 

「フッ……誰にものを言ってるのですか?」

空ににひしめくモンスターの群れを、一撃で仕留める自信があった。

みんちゃすはゆんゆんを下ろしつつ、二人を抱き抱えてその場にしゃがみこんだ。ようやくゆんゆんも、私が何をしようとしているのかが分かった様だ。

手の平の間に輝く光は燃える様に熱く、それでいて膨大な力をギュッと濃縮した様な、心地の良い圧迫感がある。

大丈夫。私なら、ちゃんとコレを制御できる。

心の中で自分に言い聞かせ、空を見上げた。


ずっとずっと待ち望んだ爆裂魔法。

憧れだった爆裂魔法。

人生を賭けてもいいとまで思わせた爆裂魔法。

まともに食らわせられれば、ドラゴンや悪魔、神や魔王でさえも滅ぼしかねない、人類の持てる切り札にして最終手段。

子供の頃、目に焼き付いたあの光景を、今度は自らの手で……


「我が名はめぐみん!紅魔族一の天才にして、爆裂魔法を操りし者!ひたすらに!ただひたすらに追い求め続け、やっと手にしたこの魔法!私は、今日という日を忘れません!これこそが我が覇道の第一歩……食らうがいいっ!!」


カッと目を見開くと、手の中の光を空に突き出し私は唱えた!


「『エクスプロージョン』ーーーーッッッッ!!!」


私の手から放たれた閃光が、モンスターの群れの真ん中に突き刺さる。光は一匹のモンスターの体内に吸い込まれるように掻き消えると…。


一拍置いて、輝ける光と共に夜空に大輪の華を咲かせた。


「あああああああ!きゃああああああああーっ!!」

「――ッッ!!」

「ほう……っ!最強魔法を名乗るだけのことはあるじゃねーか……!」

「わはははははは!これです、これが見たかったのです!なんという爆裂!なんという破壊力!なんと心地良い爽快感!まさに、全てを蹂躙する圧倒的な力!」

吹き荒れる爆風と轟音も気にせずに、私は最高の気分で笑い声を上げていた。

爆発の衝撃波でその地点の真下にあった木々が根こそぎ引き倒され、私も為す術なく地面に転がされる。図抜けた身体能力を持つみんちゃすですら余波を受けただけで、その場で踏ん張り切れずに大きく後退する。

膨大な魔力を伴った突風が吹き荒れ、何者も抗えない圧倒的な力と理不尽な暴力に、空を覆っていたモンスター達が消し飛ばされた。

地面に転がされ仰向けの体勢のまま、私は空を見上げていた。魔力を使い果たした気怠い体で、煙が晴れるまでそこから目を離さない。

やがて煙が晴れた頃、そこには、あれだけひしめいていたモンスターの姿は影も形もなくなっていた。

「……ななな、何これ……。これが爆裂魔法……?凄いとか、強いとか、そんな言葉は全て通り越しちゃってるわね……」

「この広範囲殲滅力、以前母ちゃんに見せてもらった必殺奥義に匹敵するレベルだぞ……?しかも杖無しでこれとか、とんでもねーな……」

「いや、剣士なのに最強魔法に匹敵するような技持っている方がとんでもないからね?アステリアさんってホントに人間なの?……でもちょっとだけ、めぐみんが爆裂魔法に取り憑かれた気持ちが分かったかも」

ゆんゆんとみんちゃすが、爆裂魔法のあまりの破壊力に呆れた様な声を上げる中、私は返事を返す気にもなれず、寝転がっていた。

たった一発の魔法なのに、全魔力だけでは足りなかったらしく、体力までゴッソリ持っていかれた。

この魔法を使った後は無防備になる。それはつまり、今後冒険者としてやっていくつもりなら、魔力と体力を使い果たした自分を守ってくれる仲間が必要だという事。

天才と呼ばれてきた私は、ずっと一人でやっていけると思っていたのだが、ゆんゆんに助けられた事といい、これからの事といい、私にはどうやら仲間が必要らしい。

ずっと一人でも大丈夫だと思っていた。

でも一人では出来ない事もある。

今日あった事を忘れずに、私は絶対に仲間を大事にしよう。

遠くから聞こえてくる、慌てた様子の里の大人達の声を聞きながら、まだ見ぬ未来の仲間達の姿を思い浮かべ……


私は、気怠さに身を任せて目を閉じた。


「あーっ!!姉ちゃんが、とりにく全部けしとばしたあああ!」

「いや、流石にそれぐらい大目に見てやれよこめっこ司令……」













あれから数日が経過した。

爆裂魔法を見た大人達が私達の下に駆けつけた後、大変な騒ぎになったらしい。

眠りこける私は家に運び込まれ、翌朝みんちゃす、ゆんゆんと共に事情を聞かれ、担任にこってりと絞られた(その際の担任の迂闊なひと言が原因で、またみんちゃすにボコられていたが……)。大人達には家に帰ると我が家の玄関が破壊され、こめっこの行方が分からなくなっていたので、ゆんゆんと共に慌てて捜索に飛び出したとだけ伝えた。みんちゃすは里のニート達を苛めて遊んでいたら緊急警報がなったため、戦闘不能になったニート達の代わりにモンスターを狩っていたら私達と合流したと説明していた。


そして現在。里では、新たな問題が起こっていた。

「……ねえめぐみん。どうするの?」

「………………」

無表情のゆんゆんの問い掛けに、私は無言を答えとする。

魔法の習得が完了した私達は、週末に三人の卒業式をやるから、その時だけ学校に来いと担任に言い渡され、ここ数日特にやることもなく家の傍の公園で時間を持て余していた。みんちゃすはこめっことの約束を守るため、今まで戦闘を避けていたフェンリルを狩りにいっているらしい。

近接用魔法を覚えチートさに磨きがかかっているみんちゃすはともかく、今の私達では森の覇者とも呼ばれる超強力モンスター相手は荷が重い。……爆裂魔法を使えばフェンリルは葬れるが、その直後に騒音を聴きつけ襲ってくる他の強力なモンスター達の餌食になるだろう。

「…………ねえめぐみん」

再びの呼び掛けに、私はプイとそっぽを向く。

と、ゆんゆんがそっぽを向いた方に律儀に回り込み、これ以上は言い逃れはさせないとばかりに、超至近距離で……

「………………ねえめぐみん。

……どうするのよおおおおおおおーっ!」

ゆんゆんの言葉に目を閉じて、耳を押さえながらしゃがみ込んだ。

「聞こえないフリしてる場合じゃないでしょうー?どうするのよ!ぶっころりーさんが言っていた、名前も忘れ去られた傀儡と復讐の女神、だっけ!?それの封印が解かれたんだってさ!封印がされていた場所は、めぐみんが魔法を撃った場所で!封印が解かれた女神は行方知れず!どうするの!?ねえ、どうするのよおおお!」

頑なに聞こえないフリをする私の肩を、ゆんゆんがガクガクと揺さぶってくる。このままずっと現実逃避していたいところだが、訂正しなくてはいけない事がある。

「ゆんゆん、ちょっと待ってください。その言い方だと、まるで私が封印を解いたとの誤解が生まれそうではないですか」

「誤解じゃないでしょ!?ぶっころりーさんが、この地には色んなヤバイ物が眠ってるって言ってたじゃない!その真上で爆裂魔法なんて大魔法を使うから、強烈な魔力の余波で封印が解けちゃったのよ!」

食って掛かってくるゆんゆんに、

「でも里の大人達は、どうやら違う解釈をした様ですよ?封印を解かれた邪神が名も知れぬ女神を呼び起こし、戦いを挑んだ。そして、戦いには女神側が勝利し、邪神の下僕をあの爆発で一掃した後、どこへともなく去って行ったのだ、と……」

「全然違うじゃないの!?真相はめぐみんの魔法のせいなのに!」

里の人達は、まさかこめっこが邪神の封印を解いたとは思わず、私が爆裂魔法なんてものを習得した事も知りはしない。

私が爆裂魔法なんてものを習得したと知られたら……。そしてゆんゆんも、中級魔法なんて半端なものを習得したなんて知られたら、きっと里の大人達に落胆されてしまうだろう。……みんちゃすが習得した魔法は知れ渡っているが、全員が「ですよね」と納得顔だった。まあ彼の近接の強さは誰もが知っているので、上級魔法を習得しなかった程度では落胆しようがない。

なんでも魔法習得後そけっとと総力戦を行い、激戦の末に勝利を収めたそうだ。もはやこの里でみんちゃすに近接戦で勝てるのは、彼の母『白騎士』だけだろう。

学校の担任は私達がどの魔法を習得したのかを知っているが、そこら辺の事情をよく理解しているのか、担任は里の人達に内緒にしてくれている様だ。どうしようもない教師だと思ってたが、アレでなかなかに生徒想いなのかもしれない。というか、そんな事よりも…

「ゆんゆん。今日もダメなのでしょうか……」

「ダメ!ダメに決まってるでしょ!?せっかく騒ぎが収まったばかりなのに、また問題を引き起こすつもりなの!?ていうか、今まではずっと爆裂魔法を使えなかったんだし、我慢ぐらいできるでしょう!?……そ、そんな悲しそうな目をしても、絶対にダメだからね?こればっかりは、めぐみんのために言ってるんだから!」

「うぅ…みんちゃすは『バレなきゃ良いんじゃね?』と言ってくれたのに……」

「あの暢気者!」

爆裂魔法の感動を味わって数日が経った今……私はゆんゆんから爆裂魔法禁止令を出されていた。

せっかく担任が里の皆に内緒にしてくれているのに、里の近くで魔法を放てば大変な騒ぎになる、と。

まあ、その言い分は良く分かる。分かるのだが……。

「ゆんゆん。私がどれだけ爆裂魔法を愛しているか、あなたはもう知っていますよね?」「ま、まあね。めぐみんは、よその人が見たらちょっと引くレベルで爆裂魔法が好きだって事は、もう理解したわよ?」

そこまで理解してくれているのなら話は早い。

「いいですかゆんゆん。私の爆裂魔法への愛は、一日一食しか食べられない代わりに毎日爆裂魔法を撃つか、爆裂魔法を我慢する代わりに一日三食おやつ付きのどちらかを選べと言われたならば、喜んで一日一食で我慢します。我慢して爆裂魔法を放った後で、ちゃんと残り二食とおやつを食べる。そのぐらいに爆裂魔法が好きなのです」

「へえー……。食い意地張ってるめぐみんに、そこまで言わせるだなんて……。……?あ、あれっ!?ねえ、今のもう一度言ってみて!?なんかおかしな事言ってなかった!?」

ゆんゆんが慌てて言ってくる中、確かに、今爆裂魔法を試し撃ちに行くのはマズいという事は分かるので、足下にまとわりついてくる毛玉の頭をうりうりとかいぐると。

「まあ、しばらくは我慢しますよ。いよいよ我慢ができなくなったなら、即刻旅に出て、里の外の世界を爆焔で覆い尽くしてやりますから」

「や、止めてよね!冗談でもそんな事言うのは止めてよね!」

話を変える様に私はその場に立ち上がると、

「まあ、今回は怪我人もなく丸く収まって良かったですね。真相は違ったとしても、里の人が納得しているのならこれでよいのではないでしょうか」

そう言って、足下にいた毛玉を抱き上げた。ゆんゆんは、私が抱き上げたクロを見て、複雑そうな表情で首を傾げる。

「……ねえ。クロちゃんってば、結局何なのかな?どうしてあの時、クロちゃんは狙われ続けたんだろう?ひょっとして、邪神の関係者とか?そもそも、邪神の封印ってどうして解けちゃったんだろうね。里の人が言う様に、通りすがりの旅の人が、イタズラでもしていったのかな……?」

ゆんゆんは最後の核心部分にまでは踏み込めていないらしい。まあ子供の好奇心で封印が解けてしまうだなどと、普通は思いもよらない事だ。私だって、過去に自分が同じ事をやらかしていなければ、こめっこを疑いもしなかっただろう。……みんちゃすは大方勘づいてるだろうが、彼は基本暢気なのでいちいち詮索してこないだろう。

家で尋ねてみたところ、やはり封印を解いたのはこめっこだったらしい。叱るべきなのかとも思ったが、私も過去に同じ事をやらかしている上に、無邪気な顔で私に欠片を差し出し、『遊ぶ?』と尋ねてきた妹に何も言えなかった。

我が家の玄関が壊された程度の被害で済んだ事だし、このまま押し通してしまおう。

……問題は、コイツの扱いだ。

「しかしこの子は、ふてぶてしい顔をしていますね。小猫なら、もっと可愛げがあってもいいと思うのですが」

邪神の下僕が探し求め、そして大事そうに抱きかかえられていたクロ。

もしかしたら、その正体は……。

「ねえめぐみん。その子、これからもめぐみんの家で飼うの?そ、その……。こめっこちゃんの視線が凄く……」

ゆんゆんが、何かを言い掛け途中で止める。

うん、言いたい事は分かる。

「どうしたものですかね。確かに、我が家に置いておくといつこめっこの餌食になるのか分からないのですが。しかし、今更誰かにあげるのも、かといって放り出すのも……」

目線の高さまで両手で抱え上げられた状態ながら、暴れる事もなく無抵抗のクロ。そんなクロを見て、ゆんゆんがぽんと手を打った。

「そうだ!それならいっそ、本当に使い魔として契約しちゃえばいいんじゃないかな。大切な使い魔ともなれば、いくらこめっこちゃんでも……」

言ってる内に、どんどん言葉が尻すぼみになっていくゆんゆん。

何が言いたいのかは分かる。

本能のままに生きみんちゃすすら従えるウチの妹に、そんな道理は通用しないだろう。

でも。使い魔かあ……。

「……邪神を使い魔にする魔法使いというのも、悪くなさそうですね」

「?めぐみん、今何か言った?」

私の小さな呟きは、ゆんゆんには聞き取れなかった様だ。

「ええ、私の使い魔にするのも悪くなさそうですねと言ったのです」

ゆんゆんに適当に返しながら。もしかしたら、とんでもない大物かもしれない毛玉に笑い掛けた。ゆんゆんが安心した様に息を吐く中、ふとある事に気がついた。

「そうです。我が使い魔となるのなら、いつまでも仮名のままでは決まりが悪いですね」

「えっ!?クロちゃんが正式名称じゃダメなの!?」

「ダメに決まってるだろうが」

私達が声のした方を振り向くと、全身生傷だらけになりながらも五体満足なみんちゃすが、森の覇者フェンリルを引きずりながらこたらへ歩いてきた。

「み、みんちゃす……随分痛そうだけど、大丈夫なの?」

「あー?……まあ無傷とはいかなかったな。森の覇者だとか粋がってるだけのことはある」

ベテラン上級職のパーティーすら全滅しかねない程の大物だと言うのに、相変わらずこの男は規格外だ。近接戦は勿論、上級魔法が使える程度では勝ち目が無い。……いずれみんちゃすを越えるためには、やはり彼の間合いの外から攻撃できる爆裂魔法が不可欠となるだろう。

「ほれめぐみん、こめっこに頼まれてたフェンリルだ、持って帰れ」

「こんなデカい狼、私一人で持って帰れるわけないでしょう……後で運ぶの手伝ってください」

「姉妹揃って人使い荒いなー……それよりもだ、俺耳良いから聞こえちまったけどよ……流石にクロはねーよ」

「!?」

「そうですよ。いつまでもそんなセンスの無い変わった名前のままでは、この子がかわいそうではないですか」

「センスのない変わった名前!?」深くショックを受けているらしいゆんゆんは放っておき、私は渾身の名前を考える。

と、クロが急に身をよじりだした。まるでこのままでいいからとでも言いたげに。

「ほらほら、クロちゃんも今の名前が気に入ってるんじゃないかな?それにほら、この子はまだ小猫だし、コロコロ呼び名が変わったら混乱するんじゃない?」

「関係ねーよ。この世は弱肉強食なんだ、この黒猫がどれだけ嫌がったところで、決定権は飼い主のめぐみんにある」

「世知辛過ぎない!?」

ゆんゆんが自分の付けた名前のままがいいと主張をする中、良い名が思い浮かんだ。

「決まりました!」

自信たっぷりな私の言葉に、不安そうな表情のゆんゆんが…

「ね、ねえめぐみん。クロちゃんってメスだからね?その辺もちゃんと考えた、可愛い名前に……」

と、何かを言い掛けるのを遮って、私は目の前に掲げた使い魔に宣言した。


「……お前の名前はちょむすけ。そう、ちょむすけです!」


常にマイペースだった、もしかすると大変な存在かもしれない使い魔は。これ以上にないぐらいビクリと身を震わせた。

「ちょむすけ……メスなのに、ちょむすけ……」

「おー、流石紅魔族随一の天才。ネーミングもバッチリだな」

「………やっぱりこの里では、私がおかしいんだね……」

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