第7話:奇行は赤の他人が撮ってツイッターに乗せたがすぐ消えた

 二日目の昼間には富士山の頂上にたどり着いた。

 その登山の途中、妹は例によって謎の行動をしてきたが彼女がすべて引き受けて、ぶつかり合った。

 おかげで俺は何も被害にあわなかったが、悔しかった。

 本来は俺が引き受けるべきだった。妹の行動は家族の俺が責任をもって止めるべきだ。でも、俺には止めれるほどの力が無かった。彼女に頼るしかなかった。

 でも、そのぶつかり合いに乗ったり付き合ったりする彼女を見て、怒りが積もった。彼女が妹に付きっ切りなのを見て怒りが積もった。

 彼女は俺の恋人のはずだ。なんで俺じゃなくて妹の方に色々と手を出すんだよ。

 理不尽だし、自分勝手で、醜い。そんな嫉妬が噴出しそうになる。

 彼女が俺のために妹の相手をしているのに。俺への好意による行動だと分かっているのに、どうしてもそんな嫉妬が――。

 富士山の山頂碑。それに登っている妹を見て、その妹を止めようと足を引っ張る彼女を見て、ため息が出る。

 俺にはどうすることも出来ない。ただ嫉妬を生み出す以外何もしてない、出来なかった。


 @


 富士山の山頂には富士山本宮浅間大社という名の神社がある。

 富士山には、その美しい山容から女神と見る信仰が古くからあり、平安時代には都良香の「富士山記」(『本朝文粋』所収)に「浅間大神」として、『竹取物語』には「かぐや姫」の名でその表現がある[8]。しかしながら、これに『古事記』『日本書紀』に見えるコノハナノサクヤヒメが当てられたのは近世に入ってからと見られ、それまでは一般に「浅間神」の名で信仰されていた。(Wikipediaより)

「それがどうしたのよ?」

「……え? いや、なんか、気になるかなぁって……」

 どうして彼女に対してそんな説明をしたのだろうか? と俺自身に問いかけていると「……ふふふ」っと彼女が笑った。

「そんなに私と話したいの?」

「あ、いや……そうだよ」

 なんか恥ずかしくなって彼女の顔が見れなくなる。彼女の意見はきっと真実だろうからだ。

 俺は、正面にある富士山本宮浅間大社を見る。

 建物は早大ではない。地元に建っていればオンボロ小屋だと、お化けが出そうな小屋として小学生の度胸試しに使われそうな感じだ。

 まぁこんな高い場所で壮大なものは作れないだろうが、すこし拍子抜けしたのは言い訳できない心情であった。

 そんな神社の建物。その屋根で妹がバク転している。相変わらず何考えているのか分からない行動をしている。

 そんな妹を彼女が止めないのは、今の妹の行動が俺に関係しないなのでどうでもよいという判断かららしい。

 こうして俺は彼女と話す時間が確保できたという嬉しさ。俺は愛されているという自覚が見に感じれて嬉しい反面、問題児を解き放ったままで良いのか? という疑問が出てきた。

 彼女に直接頼めば止めてもらえるだろうが、彼女が妹を止めようとすれば俺は嫉妬する。だからと言って俺が止めようとしても無理だ。放置するしかない。ごめんなさい。

 拝殿へ進む。

「神社のお参りって、二礼二拍手一礼だっけ?」

「あってるわ。何をお願いするのよ?」

「……」

 言葉に詰まる。願いの内容を決めてないわけではない。もう決めてある。

 恋人と幸せに付き合えますように。

 だけど正直に言うのは何だか恥ずかしく、言い出しずらい。

「ふふふ。当ててあげようか?」

 こまごましている俺がそんなにおかしかったのか彼女は笑う。

「当てるってなんだよ……」

「多分、一緒の内容だから」

「一緒の内容……?」

 彼女が同じ内容、恋人と幸せに付き合えますようにならば非常に嬉しい。そんな感情が芽生えるが、それがバレると何だか恥ずかしいので表情を硬くする。

「凄く嬉しそうな顔してるわよ」

「え、そう?」

「そうよ。一緒の内容って言ったら嬉しくなるって、もう答えを言ってるもどうぜんよね? 恋人関係――私に関係することでしょう? それが反転して私の願いになれば、貴方の事を願う内容になるって事でしょう」

 つまり、っと彼女は声を出して

「恋人と幸せになれますように? どう? あってる? 私もそうなのよ」

「……大当たりだよ。凄いや、当て方がホームズめいていたよ」

「ふふふ、ありがとう」

 彼女と一緒に、二礼二拍手一礼をした。

 その後、外に出ようとして――首をいきなり絞められた。

「ぐぇっ!」

「ブラザーよ。ワシのスイィトサァッドと一緒にハッピーになりたいとかノーですよ!」

 声で首絞め犯が分かった。妹だ。

 俺の隣に居た彼女が目を開いて、叫びながら首の拘束を解こうとしてくれる。

「このっ離せ!」

「ノーですよ! ブラザーはワシら2人のラブには不要なんですよ!」

「私にそっちの趣味は無いって言ってるでしょ!」

「いいでしょ! というかもっとかまってくださいよ!! さっきソロでオンザルーフでバク転してたの寂しかったんですよぉ!!」

 首が揺さぶられる感覚。段々と意識が遠のいていく感覚がする。

 あ、俺いまから気絶するんだなと分かる。

 ……気絶を何度もして、ついに気絶する感覚を掴んでしまったか。

 そんなよく分からない感情のまま俺は気絶した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る