第2話:夏の朝は明るくて好き
朝6時。夏の日光が目に刺さり起床した。
学校が始まるのは9時だが、俺の家は学校からそこそこ離れており早く起きなければ間に合わない。
時間も手短に支度をすませる。朝ごはんなんぞインスタント味噌汁一杯で十分。ただ見た目には少し気を入れる。変な格好をして彼女に笑われたくない。
うちの学校には制服は無い。からこそ、ファッションには気を使わなければ。まあユニクロのマネキンを真似ただけだけど。下手なオリジナルよりもプロの真似だ。
んで、外に出る。
「おはよう」
当たり前のように彼女が玄関で待っていた。
「また待っていてくれたのか」
「当たり前でしょ。……まさか嬉しくないの? 迷惑?」
「いや嬉しい。嬉しいけどさ、ふつう逆だろう?」
「なぁんだ、貴方は男が女の家に待つべきだと考えているのね」
「距離の問題だよ、距離」
彼女の家は学校から徒歩十分の所にある。しかも俺の通学路の最中にある。それすなわち俺が彼女の家に待っていた方が効率が良いのだ。わざわざ彼女が俺の家に出向くなんてそんな効率の悪い事をする意味は全くない。
そんな事を伝えるが彼女からの返答は「私が出向いた方が良い」の一点張りであった。
自転車の車輪を転がし、学校に向かいながらその理由を聞いてみる。
「なんでそんなに拘るんだ? お前が早く来る意味ないだろ」
「……貴方が誰かと一緒に通学するなんて嫌だから……」
「誰かと? 誰かって誰だよ」
「誰かは誰かよ! その誰かに折角の通学時間を奪われるのは嫌なのっ」
そこまで熱弁する程に嫌なのか。
試しに彼女が俺以外の誰かと通学している姿を想像してみる。……あれなんかモヤモヤしてくるぞ。男は当たり前だとしても女相手にもモヤっとくるぞ。
「……確かに嫌だなぁ」
「でしょっ」
あれ、そういえば彼女は俺の家に来るまでは一人でココに来ているんだよな? でも一人じゃなく誰かと来ていたら? ……モヤっときたぞ。
「気持ちは分かったけど頼むから家に待っててくれないか? お前が誰かと俺の家に来るのは嫌だ」
「誰かって、誰よ?」
「誰かは誰かだ!」
そんなこんなで学校に到着する。
現在時刻はまだ7時で来ているのは朝練している運動部くらいで来るのは早すぎたようだ。
じゃぁ家から出る時間を遅くすれば良いじゃないかと思うかもしれない。確かにそうだがそれだと周りからの視線が痛いのだ。完璧な彼女と中途半端な彼氏の組み合わせは良くバカにされる。俺は大丈夫だが、彼女にそんな目に合わせたくない。
だから早く出るようにしているのだが、
「だからお前が家で待つ方が良いだろ? 俺より早く起きて、俺の倍の距離を歩かないといけないだろ?」
「でもそれだと貴方が誰かと――」
話は平行線だ。お互いが相手を家に待機させたい意思があった。
「……もうこれ一緒に家に住んだ方が良い気がしてきた」
そんな声がため息と一緒に出てきた。
「確かにそうね。……いやそれが一番よい手じゃないかしら?」
「なんとなく言ってみたけどこれが最善かぁ」
「問題はただの高校生である私たちに家を持てるのかだけど……」
「……まぁ無理か」
「……そうね」
そういって俺たちは教室へ足を運んだ。
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